アラザン小話4.血族
じっと、ザクロは改めてガナッシュの顔を見て。
「霊たちが引き寄せられる理由、ちょっと分かったかも」
ゴク、とザクロが唾を飲むのが分かった。
「だって、この子すごく美味しそうなんだもん」
一瞬、その意味が分からなかった。
ガナッシュのマナは私の十分の一以下。質は悪くないが、別段練度が高いわけでもない。肉質も、正直硬いだろう。グリセラウスの末裔が、生半可な刃を許すとは思えない。それこそ、耐久力で国一番を取れるほどだ。
「これはあくまでオレの直感だけどね。たぶん、この子は生命力とか精力とかが底無しなんだと思う。霊に吸い尽くされてもなお潤う血……正直、オレの眷属に引き入れたいくらいだよ」
吸血鬼は、他者に血を分け与えることで自らの血族とする。ザクロがガナッシュを一族に引き込むとなれば、それはおそらく結婚の形であり……。
「だ、ダメです、そんなの」
思わず、ザクロの手を掴んでいた。手が震えているのに気がついたのは、一拍遅れてのことだった。
すると、ザクロはくすりと笑った。
「冗談だから安心しなよ。氷の君のフィアンセを奪おうなんて、命がけのことできるわけないし」
「フィア、ンセ……」
また、声が出なかった。否定の言葉が喉の奥に引っかかって、出てこなかった。
「まあ、せいぜい頑張ることだね。あの子、たぶん無自覚にものすごく憑かれるタイプだから。変なのに好かれないように、よく見張っておくことだよ」
何を頑張れと言うんだ、と言い返すより早く。旧友はそのまま転移して帰ってしまった。
そして翌朝。食卓にて。
「肩こりは治ったけど、なんか夢見が悪いわ……なんかすげえ泣き叫んでいた気がする……」
そう言いつつご飯をおかわりしている。心配した私は何だったのだろう。
「風邪引くと夢見悪くなるっていうよな」
「馬鹿は風邪を引かないそうですが」
「遠回しに喧嘩売ってんのかお前」
そんな、いつも通りの口喧嘩ができるのが楽しかった。
昨日のザクロとのやりとりで、自身の淡い何かに気づいたのは。きっとこいつにはまだ言わなくていい話。




