アラザン小話3.寝言
食卓で、夜中にひっそりと。男二人でプリンを食べている。
「そういえば、どうしてオレに依頼したんだい?君の顔の広さなら、他にも腕の立つ祓い屋は雇えただろう?」
「貴方が一番頼みやすかったので。同居人に気づかれないように、なんて注文をこなしてくれるのも貴方くらいでしょう」
するとまた、ザクロは首をかしげた。
「別に気づかれてもいいんじゃない?バレると困るものでもないだろう?」
「……下手に相談して、不安にさせたくなかったので。暗示にでもかかったら大変ですし。それに……」
こう言ってしまうと、笑われてしまいそうだが。
「私がただの同僚相手に、こんな心配するなんて……知られたくないんですよ」
それを聞いたザクロは一瞬呆けて。どこか満足したように微笑んだ。
「式には呼んでくれよ?」
「……」
「え、待ってなんで無言なの?否定しないの?ねえちょっとアラザン?」
自分でも否定の言葉が咄嗟に出てこなかったことが、信じられなかった。
いやいや、ガナッシュはただの同居人で食事係でお菓子の味見係で……あれ、役職多い……?
まあ、あと一つ理由があるとすれば。
「ちょっと、見てもらいたいのですよ」
こっそりと忍び込んだのは、ガナッシュの寝室。
安らかな寝息。無防備にさらした脇。シャツの隙間から見え隠れする肌。
「んぅ……うっ……メイド服やめて……開発しないでえ……」
寝苦しいようなので、何度か夜中に様子を見に来ていたわけだが。見るたびに寝言がこんな調子なのである。
「ガナッシュが何にうなされているのか、貴方なら分かるかもしれないと思いまして」
「あー、うん、そういうことね。夢魔法とか使えるわけなじゃないけど、原因だいたい分かった気がする……」
眉間に手を当て、ため息をつくザクロ。
「ねえ、アラザン。もしかして、この子に女装姿見せたことある?」
「ありますよ。仕事で、月一くらいでデートしてます」
「やっぱり……可哀想に。この子、絶対性癖ひん曲がっちゃってるよ」
憐れむような眼差し。私が悪役のように聞こえるのは気のせいだろうか。
「……私が原因、ということですか」
「たぶんそうだね。あれだけの霊に取り憑かれてもピンピンしてた子が、君のハニートラップに苦しめられてると思うとすごく不思議だけど」
……何度かからかいはしたが、ハニートラップまではまだやっていないはずなのだが。




