アラザン小話2.鎮魂
「てっきりあそこに集霊剤でも置いてるのかと……生身に憑いてるのがあの数だとしたら相当だよ?同居人さん、猟奇殺人でもしたの?」
「してませんよ……たぶん。なんか、見るたびに背後霊みたいなのが増えていたので、おそらく帰り道にくっつけてきたのかと」
「そんな引っ付き虫みたいなノリでこうなるの!?というかこれ急ぎかもしれないレベルじゃないよ緊急退治しないと死人が出るレベルだよ!?」
そこまで危険だったとは、知らなかった。
「普通にプリンとかアイス最中美味しく食べてたので。こんなに重症だとは思いませんでした」
「……そのプリンって、聖水とか使ってた?」
「そこらへんのスーパーで売っていた牛乳です」
ザクロは頭を抱えていた。
「つまり、もともとの耐久力が半端ないのか……流石、派遣員選抜耐久力部門優勝者だね」
攻撃魔法が専門である私としては、耐久力の偉大さなんて理解できないが。ザクロの様子からして、きっとものすごいものなのだろうと思う。
「じゃ、始めようか」
展開される魔法陣は、広く、淡く。一室のみならず、建物全体を包み込むように輝く。
「彷徨える魂よ、還りたまえ。悲しめる声よ、眠りたまえ。我、ここに冥福の祈りを捧げん」
厳粛な詠唱。夜の底に、静かに響く言葉。
「<昏き福音>」
陣から舞い出たのは、蝶の群れ。闇に灯り、眠れぬ暗がりを祓う。心なしか、空気も軽くなったように感じた。
「……よし、こんなものかな。あとは、霊脈をちょっと調節して……うん、これでもう安心」
魔法陣を解除し、にこやかに振り返るザクロ。一回の依頼で数十万円取るというのも納得の実力である。
「代金は……七〇万くらいでしょうか。思いの外、大掛かりになってしまいましたし……」
「いえいえ、お金はいいよ、友達だからね。君が頼ってくれるのもすごく珍しいし。あ、じゃあ代わりにお菓子もらおうかな。この世界のと、君の手作り両方!」
なるほど。そうきたか。
「このあいだネットで取り寄せたミルクプリンと……冷蔵中のカスタードプリンがあったはずです。この時間なら、おそらく固まっているかと」
「いいね、それでいこう」




