32.風呂場で凍りつくことある?
しばらく口をきいてもらえなかったが。夕食にはちゃんと出てきた。ペットか。
「いいですか。あのアイスは絶対私以外の前では食べちゃダメですよ。絶対ですからね」
何故か猛烈に釘を刺された。そんなに見苦しかったのか。
まあ、二度と食うなと言わないだけ寛大か。コイツも成長しているのかもしれないな。
そして、先にアラザンが風呂に入ったのだが。いつまで経っても出てこない。
また虫相手に魔法でも撃ったのか。流石に風呂場に時空の穴が開いたとは思いたくないのだが。
「おいアラザン、いい加減出て……」
がらり、と風呂場の戸を開くと。湯船に浸かったまま氷漬けになったアラザンがいた。
「……すみません。助けてもらっていいですか」
案の定、マナ漏れだったらしく。溶かすのにめちゃくちゃ苦労した。
「んだよ、また虫でも出たのか?仕留めた様子はなかったが……」
「いえ、その。色々と考えていたらキャパオーバーになったといいますか」
それを風呂場でやらかすとは、運のない奴。
「てか、今日お前ちょっと変じゃね?夏風邪でも引いてんじゃねーの?」
アラザンの額に手を触れさせてみるが。熱どころかひんやり感すらある。氷の妖精の体温事情分かんねー……。
改めて見るとやっぱりチビだなあ、なんて思いながら見ていると。急激に気温が下がり始めた。
「えっ、あっごめんって!お願い急に寒いのやめて!?ねえ!?」
コイツがこんなに情緒不安定なのも珍しい。やはり何か病気にでもかかっているんじゃと思ったが。下手に言ったらリビングごと冷凍庫にされかねないのでやめておく。
「あのー、アラザンさん。これだと俺、動けないんだけど」
「これ以上喋らないでください。フローズンアイスにしますよ」
何故か恐喝されつつ抱きつかれて十分経過。
俺の服の裾をぎゅっと握りしめており、放してくれそうにない。怒らせなければひんやり気持ちいいくらいだし、別段迷惑というわけではないが。不可解極まりなかった。
その後、ようやく放してくれたかと思えば。さっさと自室に行って寝てしまった。
最近ようやく仲良くなったと思っていたが。まだまだだったらしい。残念。
翌日。眠たそうながらも、いつもの調子に戻っており。ちょっと安心した。
それから数日後。ウインナーを買ってこいって言ったらフランクフルトを買ってきやがった。やっぱコイツとは分かり合えないかもしれない……なんて話は、ただの余談である。




