28.肩書きの差が悲しい
今日は良い天気ですねとか、当たり障りのない会話をしつつ建物の中に入る。エントランスには長机が置かれており、各々が名札を取って入るようであった。
「そういえば、まだ名乗っていなかったわね。わたくしはヴェノ。バイオハザード……地球侵略軍、一番隊副長官。異界というよりは、異星人に近いかしら?」
なんかすごそうな名前出てきたよどうしよう。肩書きからして怖いよ。ボスっていつもこんなのと一緒に会議してんの?助けて……。
「えっと、カルディナール帝国、派遣員……実行部隊?のガナッシュです」
これ以上肩書き無いの恥ずかしっ!
ああもう帰りたい。アラザンのケーキ食べたい……。
「ガナッシュちゃん、ね。覚えたわ。これからよろしく」
その微笑みにちょっぴり救われたような気がした。
……ドレスのスリットから一瞬、禍々しい虫の頭のようなものが見えたような気がするが。気にしないでおこう。
会議室はまた広かった。掃除はされているものの、なんとなく埃っぽい空気。例のごとく円卓。その上にはネームプレートがあり、その指示に従うらしかった。
「あら、席はここで分かれちゃうみたいね。残念だわ……では、またねガナッシュちゃん」
そして、お互い思ったより離れた位置に座ることになった。
ざっくり十人以上いるな……そんなに戦ってんのかよこの町……。
指定席に着くと、もう右隣には既にひとが座っていた。
ゆるく束ねられた髪を両肩から垂らし。黒い着物を着こなした女性。少し眠たそうにティーカップの紅茶を飲む横顔は、なんとも可愛らしく。代理プレートを出していないことから、たぶん頭なのだろうと思うと。やはり世界は広いと思った。
「……どうしたの。そんなにじっと見て」
ゆっくりとこちらに向いた。まずい、見てたのバレた。
「いや、あはははは……その、可愛いひとだなと思って……」
思わずそうこぼし、慌てて口を塞いだ。
俺の馬鹿!初対面の他組織の頭に可愛いは失礼だろ!?
どうしよう。どう謝ろうとあたふたしていると。
「……素直なのは良いこと。ここでは、すごく珍しいけど」
そう言って、笑って流してくれた。助かった……。
「……吾輩、ナンパされたの初めて」
何だかちょっと嬉しそう。一人称吾輩なのか。元の言語も分からないが。自動翻訳式を適用するとこうなるのか?




