19.闇堕ちさせようか
街の中心地から少し離れた、細道の奥。そこにひっそりと建つ、可愛らしい一軒家。クリーム色の壁に、アンティークな装飾のそれが、こちらの世界での俺たちの新しい拠点であるらしい。
「見てくださいよガナッシュ!バットが横並びで入る冷蔵庫ですよ!」
本部がなんとか借りた物件。元・菓子工房ということで、居住には向いていないが、厨房施設がかなり充実している。アラザンがここまではしゃいでいるのを見るのも初めてだ。よほど気に入ったらしい。
「ウチ、お菓子屋さんしてみたかったんよ〜」
「ワシはおはぎくらいしか作れんのじゃがの」
資金調達、情報収集を目的としてここで店を開くことにしたそうだ。まあ、店といっても開いているのはおそらく週一、二だが。アラザンがいれば味は保証できる。
いや俺だってクッキーとかマドレーヌとか、簡単な焼き菓子なら作れるんだが。お菓子作りに関しては姉貴たちの方が才能があったため、俺は料理当番を押し付けられがちで。俺自身もそれでよかったため、あまり練習しなかったというか。
一回が売り場、厨房。二階が休憩スペースであり、そこで作戦会議を行うことになった。
「こちらから迂闊に手を出せん。だが、このままではあまりにも計画が進まん……みなの意見を聞かせてくれ」
テーブルを囲んでの話し合い。円卓でもなく、部屋も殺風景で。なんとも締まりの無い雰囲気である。
「はいはーい、ウチ、闇堕ちさせたらええと思うんやけど、どうやろ?」
ザラメが言うことには、キラピュアーズをこちらに寝返らせると。
「あの子らの衣装、ウチらとおそろいの黒系にしてみたいんよー」
絶対そっちが本音だよな。ザラメだし。
「力づくで契約を結ぶのは難しそうですが。こちらが向こうより良い条件を出せれば……」
「相手はドリームランドじゃぞ?そう上手くいくとは思えんがの」
「そうかなぁ。アラザンちゃんのお菓子なら、たいていの女の子は釣れると思うんやけどなぁ」




