18.痴話喧嘩だと……?
「じゃ、今日のお前の晩飯抜きな」
『えっ』
「安心しろ。全部俺が食っとくからな」
『いやそれは困ります。ハンバーグって言ってたじゃないですか』
慌ててる慌ててる。晩飯抜きの脅しはやはり強い。
『……では、遊ばずに帰りますから。迎えに来て下さい』
「果てしなく図々しいなお前……」
どうしてゲームに迎えが来ると思ってるんだ。坊っちゃんにもほどがあるだろ。
「てか、今どこだよ?亜空間だと俺も無理なんだけど」
『怪しげな洋館ですね』
館の主の目的は『可愛い子の本性を暴くこと』。
そこで、十数人が洋館に閉じ込められ。夜明けまでに隠された鍵を探せと。鍵を見つけた一人だけ残し、他はみんな殺してやると。
可愛い子の判定にアラザンが入っているあたり、相当ずさんだな。
『空間断絶の結界魔法がかかっていましたが、破壊しておきました。電波が圏外というのも不便でしたので』
マジで相手を選ぶべきだったと思う。
いや、ちょっと待てよ。可愛い子っていうと……。
「なあ、そこにキラピュアーズのメンバーいる?」
『ええ、いますよ。一番星きらり……キラ・スターライト。よく真ん中にいる、ピンク色の奴です』
リーダー格、一番しぶとい奴だな。
『そういえば、結界を破壊してすぐ、メッセージアプリを起動していましたね』
終わったな、この茶番。
ドゴォッ!!!と。案の定破壊音がスマホ越しに聞こえた。
『仲間が助けに来たようです。これで鍵を探す必要もなくなりましたね』
通話の合間に必殺技名が聞こえたのは気にしないでおく。
卵は傷みやすいんだから早く帰って来い、と思ったが。コイツ自身が足の生えた冷蔵庫であったことを思い出した。
「ただいまです」
ようやく本気を出したらしく、瞬間移動魔法まで使って帰ってきた。そんなにハンバーグ食いたいんなら、寄り道せず帰って来いっての。
「おかえり、だな。よし、そこに正座しろ」
それから、懇々と説教することになったのだった。
「それでさー、アラザンが電話で痴話喧嘩してたの!ねえガナッシュ、アラザンの奥さんってほんとどんなひとなの!?」
翌日。耳ざとい思春期共に絡まれて面倒になったのは、言うまでもない話。