15/224
14.もはやデートでは
「では帰りますよ、ダーリン」
にま、と悪戯っぽく笑うアラザン。
完璧な容姿とロマンチックな夕焼け空も相まって、一瞬何かが揺れかけた。
「おまっ……!絶対面白がってやってるだろ!?」
「ええ、もちろん。ドギマギしている貴方は見ていて滑稽ですよ」
ケラケラと笑ってやがる。ほんとに性格悪いわコイツ。
「ま、私、声も高い方ですし。多少喋ってもバレないんですよ」
良いことを思いついた、とでも言うように。
「もうしばらくは、デート偽装も悪くないかもしれません」
カップル限定品も手に入る、ということで完全に味をしめやがったこの野郎。
「……それとも、嫌だったりします?」
俺に全部食わせた後でそれを言うのかよ。
ダメ男のくせに、悪知恵だけ回りやがって。
「ああもういいっての!勝手にしろバーカ!」
翌日、このデートが雑誌でスキャンダルにされたのは、もはや言う必要もない話だ。