11.貴方のカノジョ
朝。仕事の内容から、制服ではなく人間界になじむ私服に袖を通す。黒いシャツにジーンズと、だいぶ雑だが。別にいいだろう。
「ったく、どんだけ時間かかってんだよ……」
しかし、今日は特別任務でありアラザンと同行することになったわけだが。いかんせん着替えが遅すぎる。
俺、二分で終わったのに。何でそんな三〇分とかかかるんだよ。おかしいだろ。
「お待たせしました」
痺れを切らしてアラザンの自室に行こうかとしていたところ、ようやく姿を現した。
どうせお前は何着ても似合うんだからどうでもいいだろ、と文句を言ってやろうと思ったが。今日はいつもと少し雰囲気が違った。
白のブラウスに、黒の薄手の羽織り。末広がりな青いスカートはふわりと広がり、ゆるく三つ編みに結った髪には雪を象ったピン。
「今日一日だけは、私が貴方のカノジョですよ」
予想すらしていなかったガチ女装。私以上に可愛いカノジョがいますか?と言わんがばかりのドヤ顔。
色々とキャパオーバーになり、頭を抱えてしまった。
「えっ、どうして頭抱えるんです?え?」
胸の控えめなサイズ感好みだよチクショウ……。
曰く、この国では男二人でスイーツは気味悪がられるらしい。偏食なお国柄だとは思うが、否定はできない。俺たちの常識が時々意味をなさない世界なのだから。
「女装への抵抗感とかねーのかよ?」
「あまりないですね。私、可愛いので」
自覚ありかよ腹立つな。
「その格好であんま胸張るな。おっぱいが気になっちまう」
「フローズンアイスにされたいんですか?」
速攻で白旗をあげた。命が惜しい。
「あー、可愛いと思うぜ。黙ってたら」
「一言余計ですね」
悪態をつきながら腕を組むアラザン。いつもの癖だが、今日はおっぱいがあるせいでドキドキしてしまう。
いや落ち着け俺。コイツと一緒にトイレ行ったことあるだろ。