表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
100/224

90.彼の意思

「困惑。緊張。混乱。興奮?演算不可。放心。安堵。落胆。好奇心……」

 どうやら逆セクハラを分析しているらしかった。

 どうしよう。初めて色仕掛けされた相手がこんなだったら、学習データとしてかなりよろしくない気が。

「あのなラムネ。今のは全部忘れたほうが……」

 俺の制止も振り切って、ラムネはシノの手を取って跪き。


「弟子にしろ。ください。師匠」

 まさかの斜め上の要求が出てきた。もう帰りたい。

「オレ。できる。なりたい。えっちな誘い」

「そんなこと言われるの初めてだなあ。んー、カゲノ、どうしよう?」

 足元の影と話し合っている。傍から見たら床と喋る成人男性。正直シュールである。頼むカゲノさん、止めてくれ。俺じゃどうにもならない。


 そして数分後。

「よしラムネ君、街へ繰り出そうか」

 結論。カゲノさん止めてくれなかった。

「おいシノ。ちょっと交代してカゲノさん出せ」

 数秒後、カゲノさんに交代したことを確認し。

「絶っ対危ないこと教えんなよ!?酒も煙草も賭場もダメ!本部から預かってる大事な子なんだ、怪我とかさせんなよ!?」

「うん、大丈夫、分かってるよ。悪いようにはしないから……たぶん」

 俺もついて行った方がいいのか、いやでもあまり関わりたくないなこれ。ツッコミが追いつかなくなる。俺の身がもたない。

「じゃあ、夕方には送り届けるから」

 大いに不安は残る中。釘は刺せるだけ刺した後、二人は出かけていった。


 そして夕方になって、ラムネはやけにすっきりした表情で意気揚々と帰ってきた。

「満足」

「そうか……大丈夫か?怪我はないか?」

「平気。本番してない」

 言い方に語弊があるのは直らないのだろうか。言葉足らずなのは知っているが。恥ずかしいからあまりあれこれ聞きたくないなこういうの……。

「えーっと……あー、痛いことはされてないか?」

「痛かった。ちょっとだけ」

 何がどう痛かったのか聞くべきなのだろうかこれ。やだもう恥ずかしい。変な勘ぐりばかりしてしまう。こいつのもともとの趣味のせいか……?


 こんな調子でラムネはシノのもとに通うようになって。十日ほどして、本国へと帰ることになったのだが。

「開発部。出禁。なった」

 本国に戻って一週間くらいで送り返されてきた。曰く、開発部の職員を老若男女問わず片っ端から口説いて骨抜きにしたらしい。で、実地運用という名目で追い出されたのだと。

「部屋。借りた。師匠の。反対隣。これで。毎日会える。パパと」

 ツッコミ疲れが抜けなくなりそうだなあと思いつつも。やはり無邪気な笑顔に何も言えなくなってしまった。


 これが彼の意思か、彼女の思惑か、あるいは他の誰かたちか。分からないのは仕方のない話。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ