水芸
暑い暑い〜。
ペットボトル5本くらい平気で買っちゃうもんねー。
ガブガブ浴びるように飲んで、お腹たぷんたぷん。
「ふいー」
冷房の効いた部屋でごろごろする。
気づくと寝落ちしていた。
拍手?
ここどこ?
ライトが眩しい。前方の薄暗がりに人影が無数にいるのが見えた。
ここ、何かの舞台だ。
「はい、これ持って」
誰か黒子の衣装で扇子を持ってくる。
どないせっちゅーんじゃ!
試しに扇子を前にかざすと、じゃー、と水が出た。
嘘だ!
昔見た水芸は扇子にチューブをそわせてあって、そのチューブから水を出していたんだよ。なんで、何もないのに水が出るの?
たしか、お正月の賑やかし、だった。今では知ってる人少ないと思うけど、これどーなってんの?
黒子がさらに閉じた扇子をもう一本手渡す。
じゃじゃー。
左右に水が出た。
さらに一本。
口に一本咥えて、左右に持って、はい、水芸でござい。
って、やってられっか!
全部投げ出して舞台の袖に向かって歩くと、黒子が大慌てで私をとめにきた。
「どこ行くんですか?」
「どこ、って、……トイレ」
お腹がギュルギュル。慌てて起きるとトイレに駆け込む。
間一髪間に合った。
それからしばらくトイレの住人と化した。