4:愚かな兄だが、助けたかった。
アルエット。
他者が御しやすい性質を持つ兄の子。
因果の呪いは母を狂わせた後、私も狂気へと引きずり込もうとした。
だけど、生憎と図太い性質の私はヤツラを跳ね返してしまった。
因果の呪いは私を乗っ取れない代わりに、兄を操作した。
子孫は残さないと誓った兄は、彼の記憶のない時に妻をこしらえ、女児を成した。
兄は、血の粛清前の傲慢な姿は見る影もなく、生前の私に首を垂れて懇願した。
――助けてくれ。怖い。自分が自分で無くなる時間が増えているんだ。
――妻は悪くない。アルエットも悪くない。俺の心が弱いから呪いに勝てない。彼女らを守れない。
泣きながら妻子だけは助けてと願う兄の願いは、叶えてあげられなかった。
私はアルエットを奪われてしまった。
そしてアルエットの身体を器として、あの人は再び戻ってきた。
足搔いてもあがいても、何もできずに彼女を死なせてしまった。
そんな私が、時を経て再び機会を得た。
今度は間違えない……!
「キリウス……」
でももし、私の力が及ばなかったならば……。どうか逃げて生き抜いて欲しい。
……それすら許さないのであれば……その時はヤツラもろとも因果の果てまで共に落ちてやる。




