ミシュナ視点3:この感情に名前を付けるのは、彼女のことを助けた後で
これが、僕のどうしようもない馬鹿な話。
僕は、世間知らずで、賢くなくて。
ほんの少しだけ出会ったあの人をどうにか助けられないか、ずっと考えている。
彼女を生と死の狭間から助け出すことが、できないかと。
オルビドとの対話で、一つだけはっきりしたことがある。
(鬼と魔が呪いに対抗できる存在なのは間違いない)
魔…魔人族に関しては、異常なほどに悪感情が撒かれている。これも何かの悪意だろうか?
(あの子を知るには、ハンク家を知ればいいと思ったけれど)
忌まわしき2族についても情報が欲しい。
僕はどうしたって情報をかき集めるしかないんだ。
(あと、気になる事がある。オルビドはキリウスらって言った。……他にも憑依先がある?)
生家にいる妹の周辺で起きた怪異現象。
幼子だけで切り抜けられるものじゃなかった。
(妹に……サトラにも憑依した?そして、守った?もしもそうなら、僕は彼女に何も出来ていない……)
オルビドが話す事実の全てを、僕は信じていいのか?
(彼女に会えたら、ちゃんと伝えたい)
妹を守ったのはあなたですか?って。
ありがとう、とも。
(情報が足りない)
僕が知りえる情報は限られている。
今、僕はどうしようもないことを理解してしまった。
(情報の……極限はどこだろう)
今までだって、勝手に限界を決めていた。僕は限界までやっていないじゃないか。僕の足搔きでそれが叶うなら構わないから。
とにかく知らなければならない。シルヴィアという女性のことを。
馬鹿な僕は知ってしまったから。
キラキラした笑顔に心躍らせる感覚、あまりにも美しい戦い方。
光のような彼女が、闇よりも暗い場所で戦い続ける現実に耐えられそうにない。
僕はまだ、何もできちゃあいない。
だから、僕は僕で足掻くしかないんだ。
(シルヴィア・ハンク……)
あの綺麗な笑顔の女性を知るためなら、何だってやるさ。
…………。
「ん?……まてまてまて」
僕は自分に言い聞かせる。
「いや……違うだろ!?」
持ってはいけない感情が生まれた気がする。
もしも、彼女がキリウスやサトラに再び憑依していたとしても、こんな想いを表に出しちゃあダメだ!!
色々と終わる……!!
僕は「はぁ……」と深いため息をついた。
∻∻∻∻∻∻∻∻
その夜、夢を見た。
夢は、眠りは、死に近いとされている。そのせいだろうか。
途方もない闇と戦うシルヴィアを見た。
あの時見た、不敵な笑みを浮かべて。
その手には闇を切り裂く光の刃を携え、因果の呪いへ告げるのだ。
「死ぬまで何度でも殺してあげる」
その一閃は淀みが一つもなく、美しかった。




