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旅立ち

 翌週になって、ストラウドは城を出て行った。周りは驚いていたが、「他国の王族であるのと同時に、もともと成人の儀まで手伝ってもらう契約だった」と言ったら、宰相はじめ貴族達は納得していた。


「リリア様は、てっきりストラウド様と結婚されるのかと思っていました。城に来た時に、そう仰っていたではありませんか」


 執務室へ書類を届けに来ていたボルティモア公爵にそう言われて、私は溢れてくる涙を堪えることが出来なかった。私は彼のことが本当に好きだったのだ。


 前世でも、伝わらない想いがあって辛かった‥‥‥。生まれ変わって、小説の中に出てくる聖女だって気がついて、今度こそは幸せになれると思っていた‥‥‥。けれど、それは思い違いだった。最近になって、そう思い始めていた。


「陛下はお疲れのようですな‥‥‥。何か困った事があれば仰ってください。力になりますから‥‥‥」


 ボルティモア公爵は、それだけ言うとハンカチをポケットから取り出し、そっと差し出した。私がハンカチを受け取り礼を言うと、公爵は執務室を出て行った。


 私が国王になる前、大規模な粛清があり反国王派‥‥‥。つまり、私が率いる派閥は、ほとんど瓦解(がかい)していた。城に残ったほとんどの貴族が王太子派である中、(まつりごと)を行うのは、やりづらかったに違いない。


 今回のお見合い相手も、私が追い詰められる様な立場にならないように、ストラウドが前国王派の中から選んだのかもしれなかった‥‥‥。平和になった今の世の中、暗殺なんて起こらないとは思うが、城内で政治の均衡を保つ事は、国を動かしていく上で必要不可欠だ。


 私はサクフォン伯爵と結婚するべきか否か‥‥‥。城を捨ててストラウドを追いかけていくには、私は色々なモノを背負いすぎていた。自分の幸せだけを考えて、側にいる人達を捨ててはいけない‥‥‥。私は(ぬる)くなった紅茶を飲みながら、そう考えていた。




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