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休暇

 数日後。今日は休みの日‥‥‥。と思っていたら、急にスザンヌが尋ねてきた。彼女は、転移魔法が使えるので、こういった事も珍しく無く、知らせの伝書鳩が着いた後すぐにやってくるのだ。スザンヌは今となっては、三児の母である。


「リリア~久しぶり。元気だった? これ、魔王様から成人祝いのワイン。デザートワインだから、ちょっと甘めになってるわ。魔王領で採れたブドウを使って作ってるのよ」


 さり気なく産地アピールして、テーブルの上に置かれたワインには、かわいいブドウの絵が描いてあった。


「ありがとう。スザンヌは吞気そうでいいわね」


「何っ‥‥‥。どうしたの、めっちゃ荒れてるね?!」


「それがね‥‥‥」


 私はストラウドが釣書を決めた話から、スウェン王子のお見合い話までを簡潔にスザンヌに話して聞かせた。


「んんっ‥‥‥。お見合いしてみれば? だって、優良物件なんでしょ?」


「優良物件って‥‥‥。まあ、()王子様だしね‥‥‥。って、そうじゃなくて、スザンヌに酷いことしといて、よくノコノコと王城に再び来れたわよねって感じ」


「何で‥‥‥。罪は償ったのでしょう? 恋愛をしてはいけない理由なんて無いと思うんだけど‥‥‥」


「何で‥‥‥」


 スザンヌは、私の考えに同意してくれると思っていた。だけど、「恋愛してもいい」と言う。


「昔‥‥‥。ほら、貴方が言ったじゃないの。『未来は変えられる』って‥‥‥。スウェン王子の女グセが治ったのかは分からないけれど、もともと操られていただけみたいだったし、みんなに評価されるほど頑張ったのでしょう? きっと、死ぬほど努力したと思うわよ」


「‥‥‥」


「私のことを考えてくれるのは、嬉しいけど‥‥‥。ストラウドの事はいいの?」


「だって、はじめから相手にされてないし‥‥‥」


「リリアが本当に好きなのは誰なの? 後悔しないように生きてよね。昔、助けてもらったし‥‥‥。私も出来るだけ手助けしたいと思ってる」


「‥‥‥ありがと」


「ねぇ、やっぱりお見合い受けてみたら? 自分の気持ちにケリをつけるのか、そのまま思い続けるのか、決断するのには良い機会かもしれないわよ」


「うん‥‥‥。考えとく。チビ達は元気? 最近、話でしか聞かないけど」


 私は、一昨年遊びに来てくれた双子の兄弟を思い出していた。やんちゃで‥‥‥。城にある壺やら何やら片っ端から壊していたっけ。


「あー、うん‥‥‥。あの2人は、魔王様からソンソムニア城への立ち入り禁止を言いつけられているから‥‥‥」


「まさか、出禁になってるの?」


「それに、もうチビって大きさでもないのよ。5才だけど、魔族は成長が早くて、もう大人とたいして変わらない大きさなのよ」


「え‥‥‥。えええ?!」


「でも、中身がまだ5才だから手に負えないの」


「それは‥‥‥。大変ねぇ」


「えっ‥‥‥。もう、こんな時間。帰らないと」


 スザンヌがそう言った瞬間、黒い渦が現れ、魔王ステファンが中から出てきた。


「スザンヌ、何をしている? 昼飯の時間だぞ」


「ごめん。今、帰るところ」


「そうか‥‥‥。では、行くぞ」


 魔王ステファンは、スザンヌの手を引くと黒い渦の中へ戻っていった。


「ちょっと、待ってよ‥‥‥。リリア、何かあったら遠慮なく言うのよ。私は貴方の味方だから」


「ありがとう、スザンヌ。元気そうで良かったわ」


「リリアも、体調には気をつけて‥‥‥。またね!!」


「うん‥‥‥。また」


 私が手を振ると、スザンヌは黒い渦に飲み込まれた。魔王ステファンの過保護っぷりは、まだまだ健在だった事に少し笑ってしまったが、正直うらやましかった。


「私も素敵な旦那様が欲しいなぁ」


 無意味だったが、1人呟いてしまっていた。




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