釣書
成人の儀が終わると、私には国内外の適齢期の男性からの釣書が机の上に乗りきらないほど届いていた。
幼い頃、ストラウドと仲が良かったことから『年上好き』だと一部の重臣からは誤解され、おじいちゃんからの釣書も、かなりの数が届いていた。
(いや、それは流石にちがうだろ!!)
私は脳内でツッコミを入れると、ストラウドを呼んだ。彼には私の後見人という他に、宰相補佐を任せていた。今の宰相は、ボルティモア公爵なので色々なところで融通を利かせてもらっていて助かっている。
「ストラウド、この釣書を全て処分しておいてください」
「え‥‥‥。全てですか?」
「私は、おじいちゃんとお見合いをする気はありません。確かに、年上好きかもしれないけれど」
私がストラウドを上目遣いで見ると、彼は苦笑していた。
「かしこまりました。こちらで選別しても?」
「問題ないわ‥‥‥。1人でいいのよ」
「この中から、1人選ぶのですか? 難しいですね」
ストラウドは顎に手を当てると考え込んでいた‥‥‥。そうでは無いのよ!! 私はあなたがいいの。
私は何かを言おうとして、半開きにしてしまった口を閉じていた。もう分別のつく大人だし、わがままを言ってはいけない立場だというのは分かっているつもりだ。
「‥‥‥」
「分かりました。私が、この中から1人お選び致しましょう。それで、構いませんか?」
「結構よ」
「来週には、ソンソムニア王国の建国100年の祝賀会があります。いきなりお見合いといいうよりは、そちらで顔合わせという形で‥‥‥。それからお見合いする、という流れではどうでしょう? はじめから、お見合いにしてしまうと、お互い断りづらいかもしれませんし‥‥‥」
「それで、構わないわ」
私はストラウドの何とも思っていなさそうな態度に腹が立ち、投げやりに答えると他国からの使者を迎えるために『謁見の間』へ向かったのだった。




