自分の気持ち
「ステファン様、今日は助けていただいてありがとうございました」
私が部屋の前で挨拶をして自分の部屋へ戻って寝ようとすると、ステファン様に腕を掴まれた。
「待て‥‥‥。お前は、良かったのか? この城に帰って来ることになって‥‥‥」
「え? だって、帰り際に妖精王から『千日草』を貰いましたし‥‥‥。申し訳ありませんが暫くは、この城にいさせてください。契約は1年でしたでしょう?」
「いや、そうだが‥‥‥。そういう事ではない。お前は‥‥‥。やはり、この城を出て行くのか」
「‥‥‥‥‥‥そうですね」
「そうか」
ステファン様は、肩を落とすと部屋へ戻ろうとした。
「あの‥‥‥」
「なんだ?」
「いえ‥‥‥。おやすみなさい」
「ああ‥‥‥。おやすみ、スザンヌ」
私は自分の部屋へ戻って考えていた。何故、婚約破棄したかったのだろうかと‥‥‥。魔王だったから? 聖女リリアに倒される運命にあったから? どれも違う気がした。ステファン様の事は好きだけれど、結婚となったら何かが違う気がする───何かが。
「うーん‥‥‥」
眠れなくなってしまった私は、部屋にあった本を手に取ると読み始めてしまった‥‥‥。もう寝ようかと思う頃、外が明るくなっていて寝る時間には、少し遅過ぎた。
「スザンヌ様? 起きていらっしゃったのですか?」
私がサイドテーブルの上に本を置くと、コリアンナさんが、ちょうど私を起こしに部屋へ入って来るところだった。
「ちょっと、眠れなくて‥‥‥」
「あらあら、いけませんね。お肌が荒れてしまいますわ」
「少しだけ眠らせて」
「かしこまりました。それでは1時間後に起こしに参ります」
「お願いします」
私は布団に潜り込むと、目を閉じて眠りについたのだった。




