表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

49/72

その後

 崩壊した謁見の間に現れたのは、ストラウドとアースと聖女リリア、それから妖精王だった。


「あれっ、スザンヌ生きてる?」


 さっき別れたばかりのリリアが、素っ頓狂な声を出してこちらへやって来た。


「何とか、生きてるわよ」


「ごめん‥‥‥。間に合わなかったよな」


「ううん。ストラウド、ありがとう。リリア、それに妖精王までも‥‥‥。駆けつけてくださって、ありがとうございます」


 今までの人生で味方らしき味方はいなかったのに、私の窮地にクレオさんやステファン様、それ以外に3人も駆けつけてくれたことに、心の中で感謝した。友に心配されてこんなに嬉しかったのは、生まれてはじめてかもしれない。


「自国へ戻ったら門前払いをくらってね‥‥‥。母上や父上の墓の場所も教えてもらえずに、ウロついていたのをアースが呼びに来たんだ」


「久しぶりに仕事した気分にゃ」


 アースは、ストラウドの肩に乗っていたが私が手を出すと、頬ずりしながら、私の肩の上に移ってきた。


「‥‥‥ありがとう、アース」


「やっぱり、助けは必要なかったな」


「そんなことないわ‥‥‥。何というか、これから必要になると思うの」


『「「「これから?!」」」』


 私は半壊してしまった謁見の間を眺めながら言った。


「まず、魔の力に取り憑かれた国王陛下を倒したのは、聖女リリアだということにして欲しいの」


『「「「‥‥‥」」」』



*****



 私は消えてしまった宰相や、書記官を呼びつけると、これからどうするべきかを話し合った。


「倒したのは、スザンヌと魔王ステファンでしょ? スザンヌではダメなの?」


「私は、この国の王子に婚約破棄されている上に、魔王ステファンの婚約者なのよ? 外聞が悪すぎるわ。何か企みがあってやったとか、根も葉もない噂をされてしまうかもしれないし‥‥‥。私はいいけど、魔族の国の人を悪く言われてしまうのは、ちょっとね」


「‥‥‥すっかり、魔王の妃ね」


「いや、そうじゃないってば」


「またまた~」


『ごちそうさまです』


 違うのに‥‥‥。と思いながらステファン様を見ると、顔を赤くしながら視線を逸らしていた。


(いや、そういう態度は余計に誤解を招くから!!)


 私がステファン様に目線で伝えようとしたが、逆に微笑まれてしまっていた。


「私も、しばらくの間は城に滞在してお父様と一緒にサポートするつもりだし、出来ればストラウドにも協力して欲しいの」


「俺?!」


「‥‥‥無理かな?」


「いや、いいけど‥‥‥」


「待て、スザンヌ。この城に寝泊まりするなんて話、聞いてないんだが‥‥‥」


 ステファン様は、かなり怒っているのか赤い目を光らせて、威嚇するように近くへ来て睨みつけていた。


「今、決めました‥‥‥。というか、転移できるんだから、日帰りでもいいんだけどね」


「‥‥‥俺の婚約者だという自覚はあるのか?? 許さん!!」


(いや、昭和のお父さんが言うような、「結婚は許さん」みたいな調子で言われてもね‥‥‥)


「分かりました‥‥‥。日帰りにするから、そんなに睨まないで」


「‥‥‥いや。分かれば、いいんだ」


「もし寂しいんだったら、兄上がこっちの城に泊まりに来ればいいんじゃないか?」


「なっ‥‥‥。俺は別に、魔王城のことがあるからにして‥‥‥」


「ステファン様、私はちゃんと帰りますから」


「‥‥‥うむ」


 家に帰るみたいな言い方になってしまって、私も微妙に恥ずかしかった。


「それで、何だったか‥‥‥。この国を立て直すのを手伝って欲しい‥‥‥。だったか? それで、どうするんだ?」


「えっと、その‥‥‥。出来れば、聖女リリアには、この国の国王になって欲しいと思っています」


「はぁ?」


「何だって?」


「嘘だろ。5才児だぞ?」


「だから、しばらくの間は、ストラウドに後見人になって欲しいのよ」


「‥‥‥私は、婿でもいいけどね」


 リリアは何に納得したのか、頷くと両手を組んでふんぞり返っていた。嫌がられると思ったけど、国王になるのは構わないらしい。


『私は、落ち着いたら森に帰らせてもらいます。森の管理がありますから‥‥‥』


 妖精王ルテラは、何故か聖女リリアのお守り役みたいになってしまっているが、聖女リリアの中身は前世の記憶と合わせて40才だ。問題ないだろう。


「もちろんです、妖精王ルテラ様」


 私が妖精王と話していると、ストラウドとリリアは「婿にはならない」とか何とか、2人で言い争っていた。私は話を進めるために手を叩き、騒ぎが収まったところで言った。


「いい? 国王陛下は闇の力に囚われていたことにするの‥‥‥。実際、そうだったしね。それで、闇の力が復活する前に聖女リリアが400年の眠りから目覚め、闇の力に取り憑かれた前国王を退治した‥‥‥。そういうことにしましょう」


「闇の力か‥‥‥。上手いこというな、スザンヌ」


「だって、魔の力が‥‥‥。とかいうと、魔族の事を知らない人達は、きっと魔族の仕業だって思うでしょう?」


 実際に使われたのは魔力だったかもしれない。ただ、人族のほとんどの人達は魔力を使えないし、恐れていると思う。魔力に対する恐怖や不安を、不用意に煽ってはいけないと思った。


「倒すところ以外は、だいたい合ってると思うし、それでいいんじゃないのか?」


「でも、国民は納得するのか‥‥‥。悪政を敷いていた訳ではないのだろう?」


 ストラウドとステファン様の指摘に、私は前もって考えていたことを話した。小説の内容とは違うが、以前、チート系の小説で読んだことのあるストーリーに、こんな話があったのを、思い出していたのだ。


「そこで‥‥‥。ちょっと汚いかもしれないんだけど、救済院や孤児院で聖女リリアの『聖なる力』を使って、病のある人をリリアに治してもらうんです。『聖なる力』は本物だと民に信じてもらい、噂を広めてもらえれば、わりと上手くいくんじゃないかな───と思うんです」


 救済院は、前世でいう病院だ。主に薬を取り扱う薬局みたいな場所なので、治癒師みたいなチートな存在が現れたら、救済院の人達は驚くだろう。


「そんなに上手く行くのか?」


「やってみないと、分かりません‥‥‥。だから、臣下や国民で前国王を慕っていた人達が、もし反対運動や反逆を起こそうとしたら、その時はストラウド‥‥‥。あなたに盾になってもらいたいの」


「盾? まあ、それくらいなら‥‥‥。10年くらいだろう? 大人になるまでだったら、ついててやるよ」


「ストラウド、大好き」


「うわっ‥‥‥。やめろ、抱きつくなよ」


「それで、救済院に行く日はいつにする?」


「戴冠式は‥‥‥」


 その後、話し合いは続き‥‥‥。私達が魔王城へ帰ったのは真夜中を過ぎた頃だった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ