洞窟の先に
妖精王に促されて入った先は、ジメジメとした洞窟が続いていた。聖女リリアは疲れてしまったのか、妖精王に負んぶされながら眠っている。
「少し暗いから、足下に気をつけて」
ストラウドが前の方から注意を促してくれていたが、妖精王が薄く緑色に光っていたため、歩くのには困らなかった。
(‥‥‥かなりの距離を歩いている様な気がするけれど、どれくらいの距離を歩いているのか分からないわ)
そう思っていると目の前の視界が開けて、急に出口らしき明かりが見えてきた。
「やっと‥‥‥。出口なの?」
「ああ‥‥‥」
私達4人が洞窟を出ると、そこは魔王城の裏庭だった。後ろを振り返ると、そこに洞窟らしきものは影も形も無かった。
「驚いた? あの洞窟自体に魔王城へ転移する、転移魔法がかけられているんだ」
「もしかして、本当に魔王城?!」
「スザンヌ、何慌ててんの?」
「いやっ、だってこんなに早く着くとは思ってなかったから‥‥‥」
今から会いに行くなんて、一体どんな顔をすればいいのだろう。
「スザンヌさまー!!」
城のある方角からもの凄い勢いでアーデルハイドさんが駆けてくるのが見えた。私の前まで来ると、息を切らしながらアーデルハイドさんは言った。
「まっ、魔王様が先ほどお倒れになって‥‥‥。どうか、様子を見に行ってもらえないでしょうか?」
「えっ‥‥‥」
「スザンヌさまは婚約者ですよね?!」
「‥‥‥そうね。そうだった。ごめんなさい‥‥‥。驚きすぎて固まってしまったわ」
「大丈夫ですか? お気を確かに‥‥‥。探したんですよ」
アーデルハイドさんの視線が、私とストラウドの間を行ったり来たりしていたが‥‥‥。色々と、それどころじゃなかった。
「捜してくれてありがとう。ステファン様が心配だわ。急ぎましょう」
「お連れの方達も、どうぞご一緒に」
『ありがとう』
妖精王の言葉に、アーデルハイドさんは怪訝な顔をしながらも、すぐに私達を城まで案内してくれたのだった。




