魔王城へ
「泣きたいときは泣いた方が良い‥‥‥。じゃないと、心がおかしくなってしまうだろ?」
「‥‥‥うん」
私は愛する人がいなくなってしまったらツラいと思い、自分と彼女の気持ちを重ね合わせて考えてしまっていた。魔王ステファンが倒されてしまったら、私は二度と立ち上がれない気がする‥‥‥。そう思って泣いた。後戻り出来ないくらない、私は彼には好意を抱いている‥‥‥。その事実を突きつけられた気がして、自分でも泣いてしまった自分に驚いていた。
「ウォッホォン!!」
『聖女リリア、咳の仕方がオッサンみたいですよ』
「うるさいわね‥‥‥。ラブシーンは後でやってくれる?」
「ラ、ラブシーン?! 違うから!!」
「2人とも、私を魔王城へ案内してくれる?魔王から聖剣を返して貰いたいの」
私は困惑しながらもストラウドと顔を見合わせた。ストラウドの焦っている様子から、どうやらストラウドも、この少女への対応をどうするべきか、迷っているみたいだ。
「‥‥‥魔王は倒さないから大丈夫よ。助けてもらってるんだし、返して貰ったら後は自分で国に帰るわ」
「分かった‥‥‥。ひとまず、案内しよう」
ストラウドは迷いつつも、聖女リリアを魔王城へ連れて行くことにしたみたいだ。その方が良いだろう‥‥‥。いくら妖精王がいるからって、5才児を魔の森に放置したままにして帰る訳にはいかない。
『ご迷惑でなければ、私もご一緒しましょう。その方がいいでしょうから』
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
かくして妖精王、ストラウドと聖女リリア、そして私は魔王城へ徒歩で向かったのだった。
*****
「ストラウド、本当にこっちで合ってるの? だんだん薄暗くなってきたんだけど‥‥‥」
ジメジメした雰囲気に、私は恐ろしくなっていた‥‥‥。さっきから、木が枯れている場所を歩いている‥‥‥。枯れ木と落ち葉しかない場所をぐるぐると回っている気がして、落ち着かない気分になり、気持ちが悪くなっていた。
「いや、確かここに‥‥‥」
ストラウドが山肌に面している枯れ草をかき分けると岩肌が見え、そこには洞窟みたいな入り口があった。
「遺跡への入り口だ‥‥‥。ここを通るのが、魔王城への近道なんだ」
「えっ、本当にここで合ってる?」
私は枯れ草だらけの山の麓みたいな場所にある入り口を見つめた。
「ああ‥‥‥。昔のまんまなら、たぶん行けると思う」
そう言うとストラウドは、洞窟の中へと入っていった。
『私達も行きましょうか』
「‥‥‥そうですね」
妖精王に続き、私も中へと入っていった。




