表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

29/72

ファミリア国への地図

「‥‥‥へ?」


 パイプ椅子に座って足を組みながら、名簿を見ていた彼は、私の登場に驚くと振り向きざまに、ひっくり返ってしまっていた。


「‥‥‥いってぇ」


「大丈夫? ストラウド?」


「大丈夫じゃない‥‥‥。よく兄上のところから、ここまで来れたね」


「普通に来たけれど?」


「そう‥‥‥。何かご用ですか?」


 ストラウドは両手を広げると、今は仕事中だということをアピールしていた。


「分かってるわよ‥‥‥。仕事中に申し訳なかったわ。少し、ストラウドに聞きたいことがあったの」


「聞きたいこと?」


「リリアって人、知らないかしら?」


「リリア? 誰なんだ?」


「私も分からないの。たぶん、ファミリア国の第三王女だと思うのだけれど‥‥‥」


「ファミリア国? さぁ。どっかで名前くらいは聞いたかもしれないけど」


「‥‥‥どっかで?」


「分からない。俺が王族として城で暮らしていた時は、外交が盛んで‥‥‥。いろんな人と挨拶したし、リリアなんて名前、珍しくもなかったからな」


「そう‥‥‥」


「その、リリアが何かあるのか?」


「いいえ、何も‥‥‥。あっ、そうだわ。ファミリア国が載っている地図ってストラウドは持ってるかしら?」


「持ってるが‥‥‥。まさか、行くつもりなのか?」


「地図を見るだけよ‥‥‥。ありがとうストラウド」


 私はストラウドが持っていた地図を借りると、部屋を出て行こうとした。


「スザンヌ」


「何?」


「いや、スザンヌの()婚約者、スウェン殿下だが‥‥‥」


 そこまで言うと、ストラウドは黙ってしまった。何か言いづらそうにしている。


「何? 私は大丈夫だから、正直に言って」


「今度、別の場所に移送されるんだ‥‥‥。こちらで裁判にかけられることになって‥‥‥。会えなくなる前に、会っておくか?」


「‥‥‥」


 私はストラウドの言葉に絶句してしまった。気を遣われのにも驚いたが、王族であるストラウドがそんなことを言っても、いいのだろうか‥‥‥。そう思った。


「私は会わなくても大丈夫よ‥‥‥。そんな関係じゃなかったもの。政治的な理由で婚約しただけだったし‥‥‥。彼は他の女性といることの方が多かったもの。むしろ、婚約解消することが出来て、せいせいしているくらい。周りは、そう思っていなかったみたいなんだけれど」


「そうか‥‥‥。それを聞いて安心したよ。実は、スウェン王子は誰かに操られていた事が判明してね‥‥‥。誰かは分からないが、本当は『毒を盛ろう』何てことは、考えていなかったと思われている。不確かなことは言えないが、たぶん極刑にはならないだろう」


「そう‥‥‥。殺されずに済んでよかったわ。あっ、そうだ。やっぱりスウェン殿下に会えないかしら?」


「え?」


「リリアの事を聞いてみたいのよ」


 確か小説では、リリアはスウェン王子と恋に落ちていた。既に出会っている可能性は高い。


「リリア‥‥‥。なんで? 知り合いじゃないんだろ?」


「急に思い出したのよ‥‥‥。スウェン殿下が、ファミリア国の話をしている時に、留学生の話をしていたことを」


「それがリリア?」


「分からないわ‥‥‥。でも聞いてみたいの」


「分かった。今度、話せるか聞いてみるよ」


「ステファン様に? 分かったわ。今度でいいわよ、また今度ね」


「?」


「いろいろ、ありがとうストラウド」


「ああ‥‥‥。また何かあったら、聞いてくれ」


 私はションリさんに挨拶を済ませると、自分の部屋へ戻ったのだった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ