秘宝
レコルトの討伐が成功して、そのまま宴が始まり‥‥‥。騒がしくなってくると、夜中になる前に、私達は転移魔法で魔王城へ戻ってきていた。
「ステファン様‥‥‥。今日は危ないところを助けていただき、ありがとうございます」
私が礼を言って、魔王ステファンから距離を取ろうとすると、手を掴まれ引き寄せられた。
「少しは俺を見直したか?」
「はい‥‥‥。あの、ぶしつけな質問ですが、あの剣は一体??」
「王家の秘宝か?」
「秘宝?」
「ああ‥‥‥。何でも先代魔王が『厄災』を倒す際に、神から賜った物だそうだ。本当かどうか、眉唾ものだがな」
「でも、あの光は‥‥‥」
「光がどうしたって?」
「いえ、何でもありません。失礼致しました。お休みなさい」
あの剣が聖剣で、光魔法を操っていたなんて、言えるわけないじゃない‥‥‥。だって、それは前世の知識なんだし、余計に怪しまれてしまう。
私は小説がアニメ化されて、特殊な形をした聖剣と、光を操る聖女リリアの様子を懸命に思い出していた。
「待って‥‥‥。俺に惚れ直したとかって話じゃないの?」
「え?」
私は他の考えに囚われて、魔王ステファンに助けられた事を、深く考えずにいたことを思い出した。
「あの‥‥‥。嬉しかったです。さすが魔王ステファン様」
「一筋縄じゃいかないって話ね」
「何を‥‥‥」
私が反論しようと思って口を開くと、唇を唇で塞がれ、舌を吸われるようなキスをされた。
「んっ‥‥‥」
私が胸を押して、離れるように口を離すと再び口づけをして唾液を吸われ続けた。
「魔力の補充はもう必要無かったんじゃないんですかっ?!」
長いキスに頭がクラクラする思いで言い返すと、顔が近づき瞳の瞳孔の細部まで見えそうな距離で魔王ステファンは言った。
「俺に補充が必要だったんだ」
「は? それに、私が捕まったのなんか気にせずに、一気にやっつければよかったのよ」
最後の一言は余計だったなと思いつつも、魔王ステファンを見れば、私を急にお姫様抱っこして、ベッドの上に放り投げた。上にのし掛かる様にして覆い被ると、怒ったように言った。
「スザンヌ‥‥‥。お前は婚約者としての自覚はあるのか? お前には俺の魔力が半分あるし、寿命だって800年延びたんだ。婚約中なんだし‥‥‥。今までと、同じだとは思わないように」
魔王ステファンはそれだけ言うと、自分の私室へと戻っていった。怒っているのか、隣室へ繋がるドアが乱暴に閉められた。




