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欲しいもの

 次の日の朝。朝早くに目が覚めると、昨日何であんなことをしてしまったのだろうと、羞恥でベッドの中で起きれずに身悶えていた。


 魔王ステファン‥‥‥。を好きになってしまったのだろうか? いや、まさか。そんなことはあるまい。だって彼は‥‥‥。


 そこまで考えて私は青ざめた。そうだ‥‥‥。小説の中では、魔王ステファンは聖女リリアの聖なる力よって倒されたのだった。


 そういえば、王国軍が攻めてきて、それに対抗して迎え撃ったみたいな内容だったけど‥‥‥。今の魔王領は、多少問題があったりしても、どこの国とも友好的に国交が行われていると思うし‥‥‥。そんな事態に陥るとは思えない。


 私がベッドの中でグルグル考えているとベッドのカーテンの向こうからコリアンナさんの声が聞こえた。


「スザンヌ様、起きていらっしゃいますか?」


「ええ、起きてるわ」


「お召し替えをお願い致します」


「‥‥‥」



*****



 私がダイニングへ行くと、ステファン様はコーヒーを飲みながら本を読んでいた。私がダイニングの席に着くと、彼は目を瞠った。


「‥‥‥元気そうだな」


 ステファン様は、声を絞り出すようにそう言うと再び視線を本に戻していた‥‥‥。今日は恥ずかしくて赤いドレスを着れなかったのだ。その代わりに、コリアンナさんに勧められて青いドレスと赤いピアスを身につけていた。


「お前‥‥‥」


「何ですか?」


「いや、ストラウドと仲良かったよな」


(ステファン様、なぜ探りを入れてるの?)


 私が可笑しくて笑いをこらえていると、ステファン様はいつの間にか私の隣に来ていた。


「そう言えば、お仕置きがまだだったな」


「えっ‥‥‥」


「お前が欲しいもの、何でも言え‥‥‥。1つだけ買ってやる‥‥‥。靴でもバックでもアクセサリーでも‥‥‥。何でもいいぞ」


「では、お言葉に甘えまして‥‥‥。欲しいもの‥‥‥。というより、お願いが1つあります」


「ん?」


「私の心を勝手に読まないでいただきたいのです。ちゃんと『心の鍵』が出来るまで、プライバシーは守っていただきたいのです」


「それは構わないが‥‥‥」


「お願いします」


(私の考えていることがバレると困るっていうのもあるけど、いくら魔王でも、魔王が聖女に倒される未来なんて、見せる訳にはいかないし)


「分かった‥‥‥。緊急時以外は使うのはなしにしてやる。他には無いのか? 欲しいもの」


「ステファン様、それはお仕置きですの?」


「‥‥‥そうだ、お仕置きだ。私が君に欲しいものを買ってやる‥‥‥。お前にとっては屈辱的ではないのか?」


「‥‥‥何を仰ってるのです? 嬉しいだけじゃありませんか。血税を使うのかと思うと、少し心が痛みますが」


「税金は使わない‥‥‥。俺の給料から払う」


「そう言えば、魔族も『給料制』なんですよね。ここへ来て、驚きました」


 魔族領全体では、まだまだ通貨が流通しているとは言い難い‥‥‥。けれど、ステファン様はなるべく通貨が流通するように、いろいろと策を講じているみたいだった。


「これでも人族を見習って、いいところは取り入れようと努力しているんだ」


「ふふっ‥‥‥。じゃあ、今度何か買ってくださいませ。何でも構いませんわ」


「ああ‥‥‥。約束だ」


 私達は朝食を摂ると、ステファン様の執務室へ一緒に向かったのだった。




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