第八話 【突然サバイバルが始まった件について-2】
「んんー気持ち良いなー!」
「にゅー!」
昨日の夜は少し補強された家の効果と、このイモムシのお陰で全然寒くなかった!
むしろ暖かかったんだけど!
因みにこの子の名前はイモモにしてみた。
イモムシのイモモ。
可愛くない?
「昨日のドラゴンはね、なんて言うか……そう! 僕はあのドラゴンの配下なんだってー。よく分からないよね」
「にゅー!」
「うんうん、そうだよね!」
イモモも何言ってるか分かんないけど全然オッケー!
だって可愛いから!
「よし、やってみよー!」
「にゅー!」
僕の掛け声と共に盛大に糸を吐き始めたイモモ。
それをクルクルと受け取り、糸の塊を作っていく。
「ありがとー! よし、じゃあこれを……」
次はその太めの糸から、編み物を始める。
実は編み物は得意だったりするんだよねー。
うんしょ、うんしょ、出来た!
「じゃーん、布団!!」
「にゅー!」
簡単に編み合わせた長方形状の網目の荒い布を作り、それを重ねて四重くらいまでいくと、フカフカで案外と悪くない敷布団が完成する。
早くも枯草脱出!
後はもう少し目の細かい羽織り布団を一枚作って、それは袋状に仕上げていく。
その中に枯草を詰め込んで、と。
「じゃーん、枯草の羽織り布団!」
「にゅー!」
布団が完成!
後は丸めた糸を少し形を整えて、枕にする。
枕も完成。
これで寝床はかなりマシになった気がする!
「じゃあ時間もある事だし、食べ物を取りに行きまーす」
「にゅ!」
イモモを連れた僕は森に入って、ひとまず果物や野菜を探す事に。
けどさ、ある程度の種類を集めようと思うと時間がかかり過ぎるんだよね。
今日の分はひとまず集まったから良いとして、この先もずっとこの調子とはいかないだろうなぁ。
近場から取ってるから、その内無くなっちゃうだろうしね。
昔の癖で、一応食べた野菜や果物の種は残してあるんだけど、この辺りの地面は結構ヌメヌメしていたり固かったりで種を植えるには向いていなさそうなんだ。
とは言え、パトちゃんの拠点から離れ過ぎるのもどうかと思うし……。
あれ? 雨かな?
軽く雨が降ったけど、割とすぐに止んでくれた。
うーん、雲の感じみてるともう一雨きてもおかしく無い雰囲気してるなぁ。何だか空が怒ってるみたいだ。
今のうちに取れてる収穫物をアジトに移動させておこう。
と、そんな感じでいそいそ動いていると。
「……」
「ヌー」
えぇ……。
何か今度はウネウネした蛇みたいなのが出てきたんだけど。
「何? 僕に何か用があるの?」
「ヌー」
何なのさーもう!
僕も暇じゃないんだからね!
何か首をフリフリしてて意思表示をしてきてる。
ちょっと可愛いかも。
「何かあったの?」
「ヌー!」
首を特定の方角へ向けてフンフンしてる。
向こうには……さっきみた雨雲くらいしかないよ?
「雨?」
「ヌー!」
雨なんだ。
それがどうしたんだろう。
滅茶苦茶激しく首をフリフリしてる!
何だあれ!?
「雨が……凄いの?」
「ヌー!」
合ってるみたい!
雨が酷くなりそうなのかぁ。
「それを教えに?」
「ヌー……」
地面を見ながら、何か寂しそうな感じだ。
あ、そうか。
雨が激し過ぎて地面が危ない……のかな?
パトちゃんのアジトは、流石パトちゃんだけあって、硬く踏みしめられるか補強されるか、或いは元々強い場所を選んでいたかで、少し高さがあって地盤も強そう。
だから、ここに避難しに来たとか?
「こっちに上がりたいの?」
「ヌー……」
弱々しく頷いてる。
うーん、何か可愛そうだなぁ。
雨の事教えてくれたし、入れてあげようかな。
「良いよ、おいで」
「ヌー!」
地面から飛び出して来て、その顔や姿をよく観察してみるに。
あー、この子ミミズか何かの魔物かな?
蛇じゃ無さそうだ。
雨の話を聞いた事だし、ちょっとイモモの糸でマイハウスも補強しておこう。
イモモの糸、全然切れないから頼りになるんだよなぁ。
そんなこんなでイモモを抱っこしつつ、ミミズっぽい子を家に招き入れて、僕は雨の到着を待った。
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あれから少しして、信じ難い程の大雨があった。
周囲の殆どが流されて、また地面は殆ど雨水による泥で覆われてしまい、あっちもこっちもヌメヌメ。
僕の居る場所は少し高くなっていたから被害は免れたけど、これ下に居たら危なかったんじゃない?
もう!
こういう事があるなら教えておいてよね!
パトちゃんは説明しなさすぎ!
因みにさっきのミミズみたいな子は一緒に過ごした後で一緒に外に出て、そのまま何処かへ行ってしまった。
雨宿りに成功したみたいで何よりだね。
と、思っていたら。
「ヌー」
「ん? どうしたの?」
何か堅そうな木の実を幾つも口に咥えて運んで来てくれた。
これ食べるには堅そうだよ?
一応切るけどさ。
元々持ってた採取用のナイフを使って切ろうとしてみたけど、全然歯が立たない。
何なら折れそうまである。
どうしよう……あ、そう言えばパトちゃんのアジトに、物が
ゴチャゴチャしてる所あったなー。
あそこに何か斬れそうな物ないかな?
えーと、何処だったかな。
あったあった、ここだここだ。
このゴチャゴチャの中に何か無いかなー……おっ!
剣を見つけた!
けどめちゃくちゃ装飾されてる高そうなヤツだ!
怖っ!!
「か、借りまーす……すぐ返しましゅ」
その剣を鞘から引き抜き、スッと斜めに切れ目を入れてみる。
すると中から水が出てきた。
へー木の実の中に水が入ってるんだ、変なの。
多分果汁って事だよね?
ちょっと飲んでみようかな。
……え!?
あまっ!!
美味しー!!
何これ凄い。
この木の実、美味しい飲み物だ!
「お礼なのかな、ありがとねー!」
「ヌー……」
「ん?」
何だろう、どうかしたのかな?
ウネウネしてる。
帰っていく気配もないしなぁ。
……もしかして?
「友達になりたいの?」
「ヌー」
「来る?」
「ヌー!!」
こうして、ミミズさんが仲間に加わった。
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【テイムされました】
・エンチュトリエドワーム
スキル【土壌生成】
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