第六話 【ドラゴンに拉致された件について-ED】
【パトリ】
「それは眷属化した影響かもしれんのぉ」
「え、そうなんですか?」
ピロートークでわっぱが妾に妙な事を質問してきた故、答えを与えてやった。出会った当初のコヤツの膂力で猪が狩れるものか、あり得ん話じゃて。
「妾の支配下に入った事で、それに見合った姿に変異したというか、妾の力が流れ込んでしまったというか。どうあれ妾の影響で身体能力が向上したのじゃろう」
「そ、そうなんですね。そんな事あるんですか」
「妾とて知らぬ事。眷属を持った事など数百年ぶりで、しかもその時の眷属は強かったからのぉ」
実際、何かしら大いなる野望を持って眷属化する事はあっても、娯楽に特化した眷属など未だかつて無い事。故に初めての事象と遭遇したとて不思議は無い。それに、考えてみれば既にその片鱗は見えておった。
「そも、身体的な強度も上がっておる。少々の事では壊れぬじゃろうて」
「そうなんですか?」
尚疑問を呈するわっぱの貧相な背中を指でなぞりながら、欲した答えを与えてやる。この様なタイミングで焦らす必要もあるまいて。
「考えれば当然じゃな。そうでなければオヌシが如きわっぱ、初夜に妾が壊しておるじゃろうて」
「ヒィッ」
何を今更怯える事があろか。久方ぶりの夜の営みに盛大に盛った妾に貪り尽くされたコヤツが生きておる時点で、凡ゆる意味で身の安全は確保されておるじゃろが。
「それに、わっぱのわっぱは、わっぱというより大人か、或いはオーガと遜色ない猛りを見せておるしのぉ」
「うぅ、やっぱりこれもそのせいだったんだ……」
それも相まって妾が乱れたのじゃがな。コヤツ、顔や背丈に反して中々に凶悪な下半身をしておるからな。わっぱと侮るのも憚られるナニをしておるわ。これも妾のお気に入りじゃ。
オーガの様な下等生物、妾からみれば人よりも更に低き位置にのさばる有象無象。まぐわる価値も無い故遠目に見た事しか無いが、人の身にしてその凶悪なイチモツを有するコヤツは本に拾い物よ。
じゃが、それが故に懸念も残る。
「他にも何かしら、影響があるやもしれんのぉ」
「うーん、成る程」
あぁ、可愛い尻をしておる。背中をさすりながら下半身に思いを馳せておったからか、何だかむずむずしてきたな。うーむ、よし。
食おう。
「オヌシを見ていたら昂ってきてしもうたわ。眠る前におかわりを頂くとするかのぉ」
「うぅ、お、お手柔らかに、ィィィヤァァァァァァ!!」
うむ、今宵も楽しくなりそうじゃ。
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「突然じゃが、妾は所用で暫く席を外す事となる」
「え?」
朝の日差しが心地よい、寝起きから暫くしたタイミングで。妾は下僕へと決定事項を通達した。不本意ではあるが、これもまたドラゴンに生まれた者の使命。元より予定は決まっておったが、妾の腹が決まらんかった故、今日まで引き伸ばしてしまった。じゃが今の気分なら行けそうな気がするのじゃ、色んな意味で。妾としても今暫くコヤツを楽しみたいところではあるのじゃが、まぁ良い。帰ってきた後に搾り上げてやろうて。
「ど、何処に行くんですか?」
「言えん」
「えぇ……」
こればかりは下僕とは言えまだ言えぬ事。まぁ諦めてくれとしかな。にしても、今日の朝飯も良い匂いじゃて。
「これは何なのじゃ?」
「お肉だけだと寂しいので、この辺りで取れた野菜や果実を使って料理みたいな感じにしてみました」
ふむ。果実ならまだしも、野菜など軟弱者や羽虫が食べる雑物と切って捨てて来たが、成る程成る程。
「んまいのぉ」
「良かったー。野菜は嫌いって言われるかもって思ってました」
「いや、嫌いじゃな。嫌悪しておった」
「えぇ……そこまで?」
野菜がある事で肉の役割が変わり、ただメインとして変化なく鎮座する肉のみの食事に比べ、格段に物足らん。が、しかしてそれが故に肉の存在感が単体の時よりも際立っており、肉の新たな一面に気付かされたかの様な印象じゃ。
「素材は同じでも、やり方次第……か」
思えば、このわっぱに対しても似た様な印象を抱いている気がする。人間など何処にでも寄生しては増殖する忌避すべき対象くらいにしか思っておらんかったが。
暇が故に興が乗ったとは言え、わっぱを連れ帰り、今は何処と無く心地良い思いさえ感じる。
うーむ。
妾も狭量であったやもせんな。
これからは万物との向き合い方を少しずつ改善していかねば。その方がより楽しめるという事は、このわっぱを見ていれば明白じゃ。
「ぐぅ、何ですか!?」
「良い、為されるがままにしておれ」
「あぅぅ……くすぐったい」
隣で飯を食うわっぱの頭をワシャワシャと撫で回してみた。幾ら強化されたとは言え、少し力を込めれば呆気なく折れるであろうか弱きその存在。斯様な童にこの妾が愛着を持って接しておるのだから面白い。
分からないものじゃ。
「さて、飯も食った事じゃし。行くかのぉ」
「僕はどうすれば良いですか?」
「ここに居れば良い。その内戻るじゃろうて」
「そんな滅茶苦茶な……」
主人に滅茶苦茶を言われ、それを何とかするのが下僕の務めであり喜びであろうが。まったくコヤツはまだまだじゃの。下僕根性がなっとらん。
「では、留守中頼んだぞ」
「何を?」
「【畏まりました、行ってらっしゃいませ】くらい言えんのか阿呆たれが」
「えぇ……。い、行ってらっしゃい」
「うむ、では行ってくるぞ」
妾の背中を名残惜しそうに眺めるわっぱ。
ふむ。
見送られて出立するも中々に良いものじゃ。
さて、やる事を済ませてくるとするかのぉ。
ぶつかり稽古じゃ!!




