第二十五話 【迫り来る暴力-4】
「もうすぐなのら!」
「とららはどうなってると思う?」
「臭いはするけどまだアジトの外の様に思えるのら!」
「そっか……」
間も無くアジトだ。
とららの鼻に寄ると、どうやらオークは近くに居るらしい。
間に合って、お願いだから……。
「見えてきたのら!」
「……あれは!?」
「にゅ!」
オークだ!
オークの群れが僕らのアジトを襲っている。
襲っているけれど……!
「木の、バリケード?」
「壁があるのら!」
「にゅ!」
どうやらオーク達はアジトにはまだ入れていないらしい。
それ所か、見事に足止めされている。
けれど、長くは保たなさそうだ。
もうかなり壊されている。
「イモモ!」
「にゅ!!」
「ブモッ!?」
「ブモオオォォ!!」
木のバリケードの手前から、オークの背後を突く形でイモモの糸による拘束を試みる。
全員は無理でもある程度これで抑えられた筈。
「今の内に! とらら!!」
「まかせるのら!」
川をも飛び越えるとららの跳躍により、木のバリケードの上を悠々と越えて内部へと入る事に成功する。
流石だよとらら!
「みんな! 無事!?」
「お前様……来てくれたのか」
「当たり前じゃん! 他の二人は?」
「向こうでバリケードの補修を担当している。ここを明け渡してなるものかとな」
「もう! みんなの方が大切なんだから逃げてよ!」
「ここを失って、またオークに怯えながら生きるのもな」
「みんなを失う方が辛いの! ローヌが好きなの!」
「お前様……」
バリケードはもう保たない。
どちらにせよここはもうオークに堕とされる。
それなら、せめて誰も失いたくない。
と、そんな事を考えていた側からーー
「あ! バリケードが!」
「クッ、遂に破られたか。ラァァァァアアアアアア!!」
棍棒を手に、先頭で侵入してきたオークを殴り飛ばしたローヌ。
あれ、ローヌってこんなに強かったっけ?
確かオーガの落ちこぼれって言ったなかった?
「私は良い! ミミ達の所へ!」
「わかった!」
僕らは慌ててミミちゃん達がいると聞いた方へ走った。
ほんの数秒後、そこにはミミちゃんとフェリスが!
「二人ともー!」
「ヌー主人サマー。大変なのー」
「アラン、来てくれたのね! どうすれば良い?」
流石フェリス。すぐに対応を尋ねられた。
それに良かった、ミミちゃんも無事だった。
みんなが無事なら……あ!!
「ダメ、バリケードが!」
「ブモォォォォォォォォォ!!!」
更に壊れるバリケード。
そして、遂に本格的にオークがアジトへとなだれ込んできてしまった。
「対処しながら退がるよ! ミミちゃんは先に行って!」
「ヌー分かったのー」
「フェリス! 僕から離れないで!」
「分かったわ!」
どうする?
敵は多い。
僕とイモモだけでは捌き切れない。
だからってとららまで行かせたら僕が逃げる余地が危うくなってしまう。
……いや、それでも。
望みが薄くても、みんなで助かる可能性を!
「とらら」
「はいなのら!」
「ローヌを頼む、逃してやってくれ」
「え? ご、ご(しゅじん)さまはどうするのら?」
「イモモと二人で退路を作る! フェリスとミミちゃんがローヌ達と合流出来たら東の方角へ逃げるよ!」
「わかったのら!」
勢い良く飛び出したとららはローヌの元へと駆けていった。
とららとローヌが居て遅れを取る事は余り考えられない。
問題はこっちだ。
「生命線は君だよ、イモモ」
「にゅ!」
大丈夫、僕にはイモモが付いている。
「今だっ!」
「にゅ!」
「よし、走るよ!」
「分かったわ!」
上手く凌げれば、ここさえ越えられれば。
みんなで逃げ切れる筈なんだ。
「先に行ってフェリス」
「貴方も早く来るのよ!」
「分かってる!」
「ブモオオオォォォォォォォォォ!!!」
バリケードはもう機能していない。
正面からはオークの群れが雪崩れ込んで来ている。
早く、逃げないと……!?
「キャァァァァァァ!!」
「何!? どこ?」
「にゅー!」
イモモがグッとこっちだと教えてくれる。
その先で、オークが2体。
そしてそこに居るのはミミちゃんとフェリス。
先に行かせた事が仇になった。
拙い、ここからだとイモモの糸も届かない。
どうする?
何とかしないと、何とかしないと……!
「フェリス!? ミミちゃん!? フェリィィス!!」
ドボンと、大きな音が聞こえたかと思うと、そのには貯水槽際に仁王立ちするオークの姿だけが。
「ミミちゃぁぁぁん!!」
返事は……無い。
嘘だろ、僕が先に行かせたせいで囮みたいな役回りになっちゃったの?
嫌だよ、嫌だよ。
助けて、無理だ。
どうすれば?
フェリスとミミちゃんを失った事で気が動転して頭が回らない。
ただでさえ判断が難しい場面なのに、こんな……!!
拙い、オークが!!
僕もここまでか……!?
「させん!!」
強烈な打撃を二閃走らせるローヌ。
その攻撃はオークを容易に吹き飛ばし、何とか難を逃れる形に。
た、助かった。
けどーー
「二人ともまだこんな所に居たの? 早く逃げなきゃ!」
「お前様を残して行けるか!」
「そうなのら!」
とららも爪を振るいながら、援護してくれている。
「後の二人はどうした!?」
「返事が……無くなっちゃったんだ」
「死体がそこに無いならば諦めるな! 我らだけでも脱する、でなければ希望のカケラすら残らんぞ!」
「うっ……そ、そうだよね」
ローヌの言う通りだ。
「たくさん来るのら!」
「しまった!」
僕がウジウジしていたせいで、オークが集まってきちゃってる。
どうしよう、どうすれば……!
「私がここに残る、お前様は皆を連れてーー」
ローヌがそう言った瞬間、
複数のオークが同時に仕掛けてきた。
「くっ」
ローヌは1体目を弾き、2体目を殴り、3体目に捕まって、4体目が、4体目のオークが槍を構えている!
ダメだローヌ、ここままじゃ!
僕は無我夢中で、ローヌを庇おうと前に出てしまった。
「バカ! お前様!!?」
「ご主人さま!!」
あぁ、きっとこれは当たるなぁ。
走馬灯を見る様に、スローでオークの攻撃を見ていた。
流石に死ぬのかなぁ。
痛いだろうなぁ。
そんな事を考えて、身体から力を抜いた、その瞬間。
「にゅっ!!」
「なっ!?」
イモモが、僕を押し出す様に……!?
ダメだよ!!
そ、そんな事をしたら……!!
やはり、スローで景色が見えるそんな状態で、
僕はオークの槍がイモモを貫通するのを、
「イモモォォォォォォ!!!!!」
ただ見ている事しか出来なかった。




