第二十四話 【迫り来る暴力-3】
拙い拙い拙い。
何で気が付かなかったんだ。
とららが言ってくれなかったら本当に危なかった。
仮にオークの全員が【あのサイズ】なのだとして、その中の逸れたほんの一部のオークがさっきの奴らなのだとしたら。
本隊の攻撃力は計り知れないよ。
僕らはとららの提案に従って痕跡を遡ったけど、どうやら南に続いているみたいで、オーガの里の方角を垣間見るに、納得の道筋だった。
そのまま暫く南下して行くと、やがて再び川辺へと辿り着いてしまう。
これは恐らく僕らのアジトから南に行った所にある川で、下流へ向かえば海へと辿り着く川だ。
その川の始まりの様な地点を以って。
「こ、これは……」
「ここで別れてるのら。臭いが二つになってるのら」
「くっ、だとしたら……」
オークの群れは二つに別れたいた。
その上で、一つは僕らが何とか出来た。
先手を取れたのと、地の利が活きた事が大きい。
けれど、次の相手は恐らく……。
「森の削れ方が全然違う」
「食い散らかされてるのら」
「にゅ」
3匹で侵攻していたルートとは比較にならない程の荒れ方をしており、ここで軽く見積もっても3倍から5倍の数は居そうな雰囲気だ。
下手をするともっと居るのかもしれない。
「待って、このルートってさ」
「川のこっち側なのら」
「だとしたら、このまま行ったら……!!」
さっきの3匹のオーク達は川に行き当たったら川沿いに曲がっていたから、このオーク達も?
だとしたら、その先には……!!
「拙い、アジトに向かってる!」
「まずいのら! 早くローヌやフェリスやミミに伝えないと、逃げないとダメなのら!」
「にゅ!」
「ゴメンとらら、走りっぱなしで悪いんだけど、まだいける?」
「がんばるのら! みんな大好きなのら!」
「ありがとう、頼むよ」
軽くとららの頭を撫でると、グルグルと喉笛を鳴らして喜んだ後、彼女はこのまでの疲労を感じさせない勢いで再び走り始めた。
頼む、間に合ってくれ……。
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道中、色々考えていた。
とららの背中に居る間、イモモが僕の身体を固定してくれているから、僕は比較的余裕があったからね。
先に出会った3匹のオークの雰囲気からして、侵攻速度はそれ程早くは無いと思う。
何故ならとららの足で簡単に追い越せて、尚且つ罠を仕掛ける余裕があったから。
その辺りから考えるに、僕らが戻っていた時間と、そこからアジトへ一直線に向かう時間。
これと、オークが真っ直ぐ西へ進み、突き当たってから北へ移動する時間を比べると、かなり際どいと思う。
間に合う可能性も十分考えられるけど、場合に寄っては間に合って居ない事も考えられる。
今の内に考えられる限り考えておくんだ。
今僕に出来る事はそれだけなんだから。
一番助かるのは僕らが先回り出来た上で、罠を以って迎え撃てる場合。
これだとオークの数が多かったとしても、それを減らしたり、或いは逃げる猶予を作れたりと、かなり余裕を持って進められる。
それに、これは既に一度やっている。
最高角度は低くない。
一番最悪の場合は、辿り着いた時点を以って既に滅ぼされた後の場合。
何も出来無い上に、みんなの安否を確認する為に飛び込むんだから、そこで僕らが無事に済むかどうかも怪しい。
そのまま全員が食べられちゃうってのが最悪なケースかな。
後は、それ以外の場面では臨機応変にいくしかない。
ローヌやフェリスは戦えるかもだけど、ミミちゃんに戦闘は無理だ。
彼女は土の中に逃して、他のみんなと上手く撤退戦が出来ると良いんだけど……。
やだよ。
誰も犠牲にならないで欲しい。
死なないで欲しい。
みんながみんな僕を慕ってくれてて、そんなみんなに僕はまだ全然お返しが出来ていない。
もっとみんなが幸せを感じる時間をプレゼントしてあげたい。
人数が増えてきたからこそ出来る事もあるはずなんだ。
それなのに、それなのに。
こんなタイミングで、こんな事。
そんなのって無いよ。
幾ら何でも酷すぎる。
ずっと何もない人生だったけど、やっと色々な物を手に入れられたんだ。
最初は半ば強引に始まった生活だけど、考えてみたらさ。
この生活の全ては、僕が今まで望んできた事が詰まっているんだよ。
だからさ、奪わないでよ。
何も盗らないでよ。
お願い、何も起こって居ないで……。




