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第二十三話 【迫り来る暴力-2】

 くっ、良く言えばラッキーだった。

 タイミングに寄っては鉢合わせもあり得た場面。

 それを後ろから追跡出来るのだから、状況としてはかなりアドを取れて居ると思う。


「だいぶ近付いてきたのら」

「よし、少し膨らんで先回りしよう」

「分かったのら!」


 コイツらはそれなりの人数で川沿いをひたすら西へと進んでいる。

 この単純な動きを継続してくれるというのであれば、やれる事にも多少心当たりが出てくる。


「頼むよイモモ」

「にゅ」


 足元に粘着性の糸を張り巡らせ、草葉の陰にて敵を待つ。


 怖い。


 心臓が張り裂けそうだ。


 あのオーガを全滅させる程の奴らが間も無くここに来る。


 怖い。


 口から色々出てきそうになるけど、気合いで押しとどめる。


 やるしか無いんだ。


 上手くいかなくても撤退すれば良い。

 敵の進行速度を考えればらとららの足で逃げきれない道理はない。

 大丈夫、上手くいくさ。 

 怖いけどやるしかないんだ。

 ここで食い止められなければ。


 アジトのみんながやられちゃう……来た!!


「きたのら」

「にゅ」


 ズシン、ズシンと草木を踏み締め、目につく全ての食べられそうな物を口へと運びながら行軍を続けるオークの一団。


 やはり、あの時のみたオークの骨は隊長とかそういう存在でも無かったみたいで。


 ズシン、ズシンと、その全てのオークが地響きと共に進行している。


 一体一体がデカい。

 3メートルか、というレベル。


 僕の知っているオークは精々1.5メートルくらいだった。

 こいつらはその倍はあるかという体躯をしており、その見た目もオークのそれとは微妙に違っている様にも思えた。


 ズシン、ズシンと、その太い手足は。

 ただ大きいだけでなく、岩の様な印象を受ける程の屈強さを誇り、全員がアーマーを着込んでいる。

 その上で、顔は凶暴そのもので。

 とんでもなく大きな牙をチラつかせている。

 あんなので噛みつかれたら冒険者の鎧も貫通しそうだ。


 あれはもう、オークの領域に収まって良いレベルではない。

 それが、この場だけで三体も居る。


 倒せる?

 いや、流石にそれは無理だ。

 ならやはり作戦通りにやるしかない。


 僕はとららにライドオンしたまま、オークの進行方向の先にて姿を現した。

 突然の物音、こちらに注意を向けるオーク。


「こっちだ!」

「ブモォォォォォォォォォ!!!!」


 僕の存在を確認したオーク達は一斉に興奮を露わにし、僕へ向かって歩みを進めた。

 そしてその後すぐに、


「ブモオオ!!?!?」

「よし! 掛かった!」


 足元に仕掛けた罠にハマる。


「遠距離攻撃注意!」

「わかったのら!」


 敵の出方が分からない以上、考えられるだけ想定はするべきだ。

 その上で。


「イモモ!」

「にゅー!」

「ブモォォォォォォォォォ!!!」


 イモモの糸がオーク全員の頭上から降り掛かる。

 足元からの糸と頭上からの糸。

 この二つの粘性の糸により、著しく動きが制限されたオーク。


「狙うよイモモ!」

「にゅ!」


 今度は動きの鈍ったオークへ、個別の拘束糸を放出する。

 これにより手足の自由さえ利かなくなったオーク。


「被せて! とらら」

「任せるのら!」


 僕の足元から素早く抜け出すと、とららは事前に集めていた木の葉や木屑を盛大にオークへとぶち撒ける。


「ブモッ、ブ、ブモオオ!!!」


 粘性の糸がその木の葉を吸着し、大きな団子を作り出した所で、仕上げだ!


「いっけぇぇぇぇぇぇ!!!」

「ブビョッ!?」


 これまた事前に仕込んでおいたイモモの糸。

 これの内。粘性ではく伸縮性に富んだ糸を木とき木へ結び、大きく引っ張っておく。


 そう、パチンコだ。

 パチンコを事前にセットしておいた。

 そして、その玉はオーク。

 打ち出す先は【川】。


「ブモォォォォォォォォォ!!!!」


 全身を拘束された状態で表面的な粘性を失ったイモモの糸ダルマにされたオークの一団。

 彼らは全員仲良くバチンと弾き出され、10メートル程高低差のある川へ落ちるとドボンと沈んでいった。


 お願いだからこのまま上がって来ないでね……。


 ふぅーよしよし。

 ひとまずこれで大丈夫かな。

 うーん、いつの間にか度胸がついちゃったなぁ。

 空から運ばれたり、何も無い所をアジトって言われたり。

 猪を殴り倒したり。

 いろんなみんなに身体を求められたり。


 そうなんだよね。

 今の僕には守らないといけないみんなが居るから。

 だからきっと頑張れるんだ。


 兎にも角にもここはこれで大丈夫だ。

 よし、引き続き探索を……


「ご主人(しゅじん)さま」

「ん? どうしたの?」

「とららは気になるのら」

「何が?」


 ん?

 どうしたんだろ、何だか不安そうだけど。


「オーガの里を滅ぼしたオークが3匹だけって、おかしくないのら?」

「ん?」


 んん?

 まぁあの時の1匹は死んでたから、4匹かな?

 それって変かな?


「徐々に減ってるんじゃ無い?」

「今戦ったオークは確かに強そうだったのら。けど、そのたった4匹でオーガの里の全員に勝てるのら?」

「……勝てないだろうね」


 そう言われると、何だか違和感を覚えるな。

 確かに僕が何とか出来ちゃったんだからね。オーガさん達が全員為す術もなくやられた、はちょっと無理があるかな。


「だ、だとしたら?」

「とららは他にもいると思うのら」

「どこに?」

「何処かで別れたとしたら、このオークが食べあらした跡を辿れば分かるんじゃないのら?」

「た、確かに……」


 今目の前の事が上手くいって浮かれてたけど、とららの的確な指摘は本当にその通りで。

 聞けば聞くほどに血の気が引いていくのが分かった。

 もしこれが少数側だとしたら?

 あんなサイズのオークと、川沿いみたいな地形有利を取らない場所で戦う羽目になったら?


 それはもう怖い所の話じゃない。


「行こう、すぐに」

「もちろんなのら!」

「にゅ!」


 僕らはすぐさまその場を後にし、オークが食べ散らかしてきた道を遡り始めた。

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