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第二十二話 【迫り来る暴力-1】

 それからというもの、フェリスの活躍は目を見張るものがあった。


「成る程ね。でもバリエーションを考えるなら、もう少し調味料が欲しいわね」

「また見つけたら取ってくるよ」

「あと塩はどうするの?」

「海水を蒸発させてから、不純物を取れば出来るよ?」

「それも今度教えなさい!」

「わ、分かったから凄まないでよ……」


 一度教えた事はどんどん飲み込んでいって、上手くなされていない整理整頓や数の管理、必要な建物の提案などなど。

 とにかくこの子は管理者としてめちゃくちゃ優秀だ。

 その上でー


「こうやれば布に色が付けられるのよ」

「凄い! イモモの糸がカラフルだ!」

「にゅー!!」


 染色する事で、イモモの布製品のバリエーションも益々拡大していった。

 遂にはイモモに特定の葉や実を食べて貰う事で、最初から色付きの糸を出して貰う事すら可能にしてしまう。

 何なのこの子。


「今夜は私が行くから、それまで起きているのよ!」

「来なくて良いよ!!」

「ダメよ、これも私の務めなのだから!」

「そんな務めないから!!」

「オーガ一族の仲間として捨ておけないよの!」

「僕はオーガじゃないってぇぇぇ!!」


 まだ幼い雰囲気をしており、身長も僕より少しだけ高いくらいのフェリス。

 ローヌとよく似た赤茶色の髪は、ややピンクがかっていてローヌより柔らかい印象。

 オーガがらしい牙やツノの印象をそのままに人の姿によく似た雰囲気に変貌したフェリスは、それはもう美形も美形で。

 胸が小さい事を本人は気にしているが、その恥じらいもあって可愛さに拍車が掛かっている。

 小ぶりで、それでも存在を大いに主張するお尻に、引き締まった太もも。

 そんな彼女が、最近夜になると僕の寝室に侵入してくるのだから本当に勘弁して欲しい。


「まだまだ何だから、もっと練習させなさいよね!」

「何の練習だよ!!」

「口技よ!」

「うぉぃ!? 何の練習だよ!?!?」


 熱心なのも程々にして頂きたい程には熱心過ぎるフェリス。

 彼女が寝室にくると、精も悍も尽き果てるまで練習に付き合わされる。

 それこそ摩擦で火傷するかと思ったレベル。

 僕を火起こしの薪とでも勘違いしてるのかなって、普段無抵抗の僕ですら止めたからね。発火するからやめてって。


 それにミミちゃんやとららとも積極的にコミュニケーションを取っており、何だかすっかりこの場の空気を取り仕切っている。


「ミミー、香辛料もここで栽培したいのだけれども、場所貰っても大丈夫?」

「ヌー、平気なのー。何でも言って欲しいのー」

「ありがとね! 大好きよミミ!」

「任せてなのー」


 心なしかミミちゃんも嬉しそう。

 やり甲斐が増えてる? みたいに見える。


「とららー、こんな服にしてみたの。ライガーになって良い感じに機能する筈よ?」

「うわー! とららの服がおしゃれなのら!」

「可愛いい! ねぇアラン見て、可愛い過ぎない!?」

「め、めちゃくちゃ可愛いです」

「嬉しいのらー!」

「ギャァァァァァァァァァ!!!」


 とららもローヌも、凄くおしゃれになってしまい、僕は更に目のやり場に困る感じになってしまった。

 みんな布面積少な過ぎない?


「ローヌ、少し良いかしら?」

「む、フェリスか。どうした?」

「あのね、提案なんだけど」

「ふむ」


 ローヌとフェリスは互いに【ガ】というファミリーネームは無しで呼び合う仲になっていた。心なしかギスギスした感じも全く無くなっている様に思う。

 二人とも優しいし、凄く良い事だよね。


 それに二人とも優秀だからさ。

 時々話についていけなくて困るよね、うん。


 ハァー、何というか、凄いねフェリス。

 僕はどうすれば良いんだろうか。


 パトちゃんが居ても居なくてもしおしおになるまで搾られるからなぁ……はっ!?

 これでパトちゃんが帰ってきたらどうなるの!?


 ……流石に死ぬか。

 多分死ぬのは確定だね、確実に耐えられない。

 誰か助けて。

 僕のオーガを。




 ━━━━━




 今日はいよいよ東側の探索を再開しようと思うんだ。

 今わかっている範囲で【北東に行き過ぎると鳥に襲われる】事くらいしか分かっていないから、もう少し情報が欲しい。


 フェリスが言ってた、オーガの里の北には危険な生き物が居るって話も、もう少し調査してみたい所だし、何よりオークの一団の痕跡を探しておきたい。


 出会い頭でやられるのだけは御免だからね。

 ちゃんと対応出来る状態を作っておいて、遭遇しても上手く躱せると良いんだけれど。


 少なくとも今のうちの戦力で当たってどうにかなる相手じゃないもんね。


 前回の探索で、オーガの里を見れたのは大きかった。

 敵は恐らくオークで、しかも三メートルに匹敵するかという化け物が、集団で襲い掛かってくると。


 もうこれだけで怖い。

 普通に僕が暮らしてた街にこんなの来たら、ちゃんと崩壊すると思うんだよね。

 どれくらいの戦力があれば対抗出来るんだろ?

 ちょっと無理な気がするなぁ。

 ちゃんと国を挙げて対策しないと、みたいな災害レベルに思えるから本当にヤバい。

 特に今は僕だけ助かれば良い訳じゃなくて、みんなが居るからね。


「ちょっと情報を掴むまで粘るかも。いつもより長めの探索になると思うからよろしくね?」

「ヌー、気をつけてー」

「私が居るんだから、大丈夫よ。任せなさい」

「頼もし過ぎ」

「ふん、私がみんなを守るから、私の事はアランが守りなさいよね」

「ふふ、頑張るよ! ありがとねフェリス」

「む、ならばフェリスは私が守ろう」

「いらないってば! 空気読んでよね!」

「むぅ、難しいな。ならば私もここを守る為に尽力しよう」

「ローヌもありがと!」


 よーし、僕は僕でやれる事をやらなきゃね!


「今回もよろしくね、イモモにとらら!」

「にゅ!」

「まかせるのら!」


 まずはこの問題を、どうにかしなきゃね!



 ━━━━━



 良し、やるぞ。

 今回はかなり重要なミッションになる。


 南東を中心に開拓を調査を進めつつ、行く先々にてオークの痕跡を探す。

 ここで何かミスをしたら命に関わりかねない。


「イモモもとららも、よろしく頼むよ」

「任せるのら!」

「にゅ!」


 大きな胸を揺らして「えへん」と言うとららはとても頼もしく、僕だけなら不安だけど今は頼もしい仲間がいる事を再確認する。

 うん、僕らならきっと大丈夫!

 とは言え油断は禁物だから、かなり気を遣いながら先ずは東へと進路を取った。


 東へ向かうと、その先には川があって行く手を阻まれる。

 けど、恐らくこの川は何処かで終わる筈。

 まずは上流を目指して、この先がどうなっているのかを確かめておこう。




 というのが、当初の目的だった。

 けれど。

 この予定は川について間も無く瓦解する事となる。


「な、なんだこれ?」

「嫌な感じがするのら」


 踏み荒らされた草木、そして何かと争いがあったかの様な痕跡。

 その上で、何よりも拙いのは。


「こ、これさ」

「臭いもそっちに続いてるのら」


 その争いがあったと思われる場所から、踏み荒らされた草木が続いているその状態が、川沿いに西へ向かっている事。


「多分、まだ新しいのら」

「……追うよ!!」

「なのら!」

「にゅ!」


 そして西に行けば、


 そこには僕らのアジトがある。

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