第二十話 【突然サバイバルが始まった件について-14】
一通り調べ終わり、僕らは思案していた。
僕の中でもある程度答えはあるけれど、擦り合わせはしてみたい。
「とららはどう思う?」
「……多分、で良いのら?」
「良いよ」
「オーク、に見えるのら」
「うーむ、オークかぁ」
残された足跡、執拗なまでの食欲。
そして時折見つかる頭部の骨。
オーガが滅茶苦茶に食べられているのはここがオーガの里だからにしても、この骨はオーガではない。
そうなると、この時にこれがここにあるのはおかしい。
その上で、僕にはこれがオークの様に見えていた。
先に述べた足跡や食欲の件からしても、これはもうほぼオークで間違いは無さそうなんだけど。
「唯一腑に落ちないのは、オーガの里がオークに落とされているっていう点だよね」
「考えられないのら」
「だよね。僕もそうだよ」
死んだ仲間まで食べなが進んでる所なんてまんまオークって感じなんだけど、オークは正直言ってそこまで強い部類には入らない筈なんだ。
そりゃ勿論僕が一人で遭遇したら、あっという間に食べられちゃうだろうけど、オーガならどうだろうか。
あっという間に食べられるかな?
いや、ないない。
だとしたら、次の違和感はこの骨だ。
「大きい、よね?」
「多分かなり大きそうなのら」
「オークって本来どれくらいの身長だっけ?」
「1メートルとちょっとくらいなのら。ライガーにとってオークは餌だったのら」
「そうだよねぇ」
この骨から推察するに、下手をすると3メートルを超えかねないサイズ感をしている。
ヤバ過ぎない?
どういう事だろう。
「ねぇアナタ!!」
「ヒィッ!?」
「何よ、今更怯えないでよね」
「え、い、いや、その……」
いきなり後ろから声がしたら怖いに決まってるじゃん!!
「アナタは私を殺さないの?」
「殺す訳ないじゃん」
「そう。なら何て名前なの?」
「え、名前? アランだけど」
「アランね。さっきはごめんなさい。ご飯を貰って落ち着いたら、自分のやった事が馬鹿らしくなってきたわ」
「ううん、あんな状態で急に出てきた人を信じろなんて無理だよ。むしろお願いを聞いてくれてありがと」
「ふん、礼は言ったわよ!」
「受け取ったよ」
水浴びを済ませ、イモモから渡された上から下まで続くワンピースに着替えてきたオーガ娘ちゃんは、漸くひと心地ついた様で。
里がこんな状態なんだから、なかなか穏やかにとか、元気にとはいかないだろうけど、活力は取り戻せたみたいで何よりだった。
「……ねぇ」
「ん? 何かな?」
「聞き返しなさいよ!」
「えっ!?」
「名前よ! 私の名前!」
「あ、えっと、ごめんね。何て名前なの?」
「ふん、ガフェリスよ」
「成る程、ガが一族の名前だから、フェリスで良いのかな?」
「!? 何でそれを知ってるのよ」
「ローヌと知り合いだからね」
「ローヌ……ガローヌ叔母さんと?」
「ガローヌ、叔母さん?」
んん? ローヌが……叔母さん?
「私にとって彼女は叔母に当たるのよ。母の妹。で、あの人は無事なの?」
「偶然崖から落ちて、海岸沿いで死にかけていた所を、僕が助けた感じかな」
「……オーガの恥晒しと言いたい所だけど、私とまんま同じという訳ね」
「そういう事になるかもね」
うーん、この子も頭の回転が早いから話やすいなぁ。
というかローヌ、あの雰囲気で叔母さんはダメじゃない?
美人のお姉さんにしか見えないのに。
なんか変な背徳感を覚えそうだよ。
「何処に居るの?」
「僕たちのアジトだけど」
「アジト? 何処にあるの?」
「ここから北に行った所」
「えっ!? あんな所に!?」
「どういう事!?」
怖い言い方しないでよ!!
あんな所って何さ!!
「だって貴方、あそこって凶悪な魔物の王が根城にしてる場所があるんじゃないの?」
「え!? そうなの!?」
凶悪な魔物の王って何!!?!?!?
怖すぎる単語が!
過去一怖いんだけど!!
「あ、アジトから近いのかな?」
「知らないわよ。あんな所を根城にするなんて、アラン貴方なかなか恐れ知らずね」
「いや、僕がと言うか……」
パトちゃんだよ!!
良い所じゃろ、とか言いながら何て所にアジト作ってんのさ!!
ただでさえ怖いオークが……!?
「あれ、まさかその凶悪な魔物ってオーク?」
「オークではないらしいわよ。近付いたら死ぬから、みんな見た事も無いらしいけど」
「オークじゃないんだ……」
ならオーガを滅ぼすオークと、凶悪な魔物がいる島に住む事になったって事?
ヤバ過ぎ。
っとは言っても、みんな待ってるし帰るけどね。
周囲の探索が甘かったのかなぁ。
「さて、フェリスも元気になった事だし、僕らはもう行くね?」
「え、えぇ!? 何処に行くのよ!」
「何処って、アジト?」
「そんな、じゃあ私は……」
うーん、フェリスってローヌの知り合いでオーガの里の子なんだよね。
ここで見捨てて行くのも忍びないなぁ。
ローヌに合わせる顔が無くなっちゃうかも。
……よし、誘ってみるか。
「フェリスも一緒においでよ」
「!?」
「向こうの方が食材も整ってるから、もう暫く栄養を取って身体を治すべきじゃない?」
「……成る程、確かにそうね。も、もう暫く厄介になろうかしら」
「よーし、じゃ行こっかとらら!」
「いくのらー」
「え、ライガー……だったの?」
「なのら!」
そりゃそうだよね。
幾ら犬っぽい顔してるからって、ライガーだとは思わないよ流石に。
「ほら、僕の前に座って?」
「こ、こうかしら」
「僕も乗るからちょっと詰めてよ」
「なっ! 変な所触らないでよね!!」
「触ってないから!!」
「触ったわ! いやらしい!」
「もー、置いて行くよ?」
「えっ……、置いて、行くの?」
「行かないよ!!」
そんな目で見ないでよ!
見捨てたりしないってば!
「とららの背中でケンカしちゃダメなのらー!」
「にゅ!」
「ご、ごめん」
何だかんだで、オーガの里への視察の結果。
フェリスを連れて帰る事になった。
何でこうなるんだろ。
ライガーは空想上の生物で、狼とライオンの中間くらいの見た目をしていると思い込んでいたのですが、実在するライオンとトラのハーフでした。どうしよ。。。




