第十六話 【突然サバイバルが始まった件について-10】
「あの、その、お元気そうですね?」
「あぁ、お陰様でな」
手首とか首とかの骨までポキポキし始めて、僕の2倍はありそうな身体をふんだんに使って退路を塞いでいる。
逃げ道は……無さそう?
「とらら?」
「……なのら」
ゆっくりと首を左右に振っている。
逃げるのは無理そうだ。
どどどどうしよう!!
「ふん、この際貴様でも良いだろう」
「……へ?」
ななな何の話?
どう言う事!?
「我が夫となるなら殺さないでいてやらんでもない」
「……は?」
何でそうなるの!?
「ダメなのら! ご主人さまはとららのなのら!!」
「なんだと?」
何でそうなるの!?
「にゅ!」
「なんだと?」
イモモは本当に何て言ってるのォォォォォォ!!
「ふん、確かに貴様は命の恩人だ。恩人たる貴様の言であれば尊重せねばな」
「そうなのら! とららを困らせちゃダメなのら!」
「うむ、すまなかった」
よく分かんないけどとららが主導権を握ってる!
ナイス過ぎる!!
よし、このままソロリとここを去ろう。
そうしよう。
「じゃ、僕らはこれで」
「待て」
どうして!?
待ちたくないよ!
「私は二番目で構わない」
いやァァァァ僕が構うからァァァァァァ!!
オーガさんがギラギラ過ぎて怖い怖ィィィ!!
「ダメなのら!」
と、とらら!
やっぱり頼れるのはとららだけだよ!
嬉しくて涙が出てくるよ、ほろり。
「二番目はミミなのら!」
「むっ、他にも居たのか。ならば私は三番目か」
そういう問題じゃないってぇぇぇ!!
変な涙出てきたよ!!
「三番目はとららなのら!」
「なんだと?」
本当に何言ってんのこの子ォォォォォォ!!
頼れるのはとららだけだって信じさせてよォォォォォ!!
「ならば一番目は誰だ?」
「イモモなのら」
「にゅ!」
「む、成る程」
いやいや成る程じゃないから!?
何が【む、成る程】だよ!?
イモモが一番ってどう言う事?
というか何の序列!?
「ならば私は四番目か」
「それなら良いのら。よろしくなのら」
「ー!?」
良くないからァァァァァァ!!!
何の会話だこれぇぇぇぇぃ!!!
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【テイムされました】
・レッサーオーガ
スキル【クラフトマン】
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ハァ、まぁ良いか。
頼もしい仲間が増えたと現実逃避しておこう。
「君は、名前はなんて言うの?」
「私の名か、ガローヌと呼ばれていた」
「おぉ、かっこいい名前」
「ガ、は一族の名で、ローヌが私を表している」
「へぇ、じゃあローヌなの?」
「一族の元へはもう戻れない。それで構わない」
成る程。そんな簡単に一族の名前を捨てちゃって大丈夫なのかな。。
「む、何かあるのか?」
「あっ」
心配が顔に出てたかな?
「ご主人さまは家族がいるローヌを心配してるのら」
「ふむ、そう言う事か」
とららちゃん、察せるならさっきもよろしく頼まれてよ。
何でこれが読み取れてアレが読み取れないの?
「私はそもそも一族の中では身体も弱く足手纏いだった。故に居なくなる事が彼らの損失とはならないだろう。だが私自身、雌の身に産まれた以上、それを享受出来ぬままに逝くのは悔やまれる。子を産ませてくれ」
「へ、へぇ。ローヌみたいな強そうなオーガでも足手纏い扱いなんだ。オーガって屈強な一族なんだねぇ」
「うむ、誇り高き一族だ」
何言ってんのこの子。
話をちゃんと聞いてくれるから話題は逸らせるけど、なんかとんでもない事言ってなかった?
怖すぎ。
「そういえば、とららの家族はどんな感じなの?」
「とららはお父とお母と兄弟が八匹いたのら」
「へー大家族だね。凄い」
うわー、ライガーって凄いなぁ。
そういう感じなんだ。
「で、お父が死んで、兄弟が五匹死んで」
「……へー、凄いね」
そ、そういう感じなんだ。
経歴が凄すぎ。
コメントしずらいって。
「お母が族長の子供を産んで、兄弟が増えて」
「へ、へぇ、そういう感じなんだ」
「その後お母も死んで、兄弟が五匹死んで」
「……た、大変だね」
「兄弟が族長の子供を産んで、また家族が増えて」
「……んん? な、成る程ねー」
経歴が凄すぎるって!!
どうコメントすればいいのさ!!
「とららは子供が出来なくて、縄張りの見張り役になって」
「……んん?」
とららは子供が出来なくて?
その言い方だと、とららも……?!
んん?!
コメントむず過ぎだって!!
「とららは一族の為に頑張って見張りをしてて」
「うんうん」
「気付いたら、みんな居なくなってて……」
「とらら? あれ、とらら?」
とららが涙目になってきた!
どうしよう!!
「とらら要らない子だから、みんなに置いて行かれて……」
「とらら!」
とららが泣いちゃった!!
エピソードが壮絶過ぎるって!!
「ひとりぼっちになっちゃって、大雨のせいでご飯を上手く見つけられなくて、おなかぺこぺこで、泥に足を取られて、怪我もして……」
とららァァァァァァ!!!
「もう死んじゃうんだろなって、倒れちゃって……」
「とらら?」
「ごご、ご主人さまが、と、とららを助けてくれて、ご飯までくれたのら……うぅ……」
「とららァァァァァァ!!」
「うぇーんご主人さまー寂しいのらーとららはがんばったのらーひとりぼっちだったのらー」
「とららァァァァァァ!!」
僕は無意識の内にとららに抱きついていて、頭を撫でまわしていた。
獣人型のまま、大粒の涙を溢すとららは、余りにも寂しそうで、それでいて愛おしくて。
大丈夫だよ、大丈夫だから。
今度は暖かい仲間との思い出を作ろうね、とらら。
「……むぅ」
あと会話置いてけぼりにしてゴメンね、ローヌ。
あれ?
おかしいなー、ローヌの話だった筈なんだけど……。




