第十話 【突然サバイバルが始まった件について-4】
次の日の朝、事件が起こった。
「ねーねー、ここも耕すの?」
「えっと、そ、そうだね……」
急にミミちゃんが話しかけてきたんだよね。
え、元々そんな感じだったっけ?
くらいの勢いで自然に話しかけて来たから、最初なんて驚き過ぎて普通に転けちゃったよね。
おでこが痛い。
「君も話しかけて来たりするのかい?」
「にゅ?」
今の所、イモモはイモモのままだ。
何となく可愛くなった気もするけど、イモモはイモモだ。
ふぅ、良かった。
「ミミちゃんってさ、ずっとこの辺りに住んでるの?」
「そうだよー。僕はここで地面を食べてモリモリ出して、元気な土を沢山作ってきたんだよー」
ミミちゃんと話が出来るようになった事で、少し情報を得られる事が出来た。
どうやらこの間、僕とミミちゃんが出会ったあの日。
ミミちゃんは割と天気の変化に敏感らしくて、雨が降るなーってのが分かるらしいんだけど、どうやら凄く拙い感じがしたらしくてさ。
誰か助けてーって感じでやり過ごせる場所を探してたんだって。
こんな事初めてだったよーって言ってた。
何だったんだろうね?
「それでさミミちゃん。この辺りの事って何か分かる?」
「僕は目が無いから、よく分からないんだー」
「うーん、まぁそうだよね」
ミミちゃんは口しかなくて、目はついていない。
でもどっちが光っているかは分かるらしくて、何だか不思議な感じだ。
「今まではずっと同じ毎日だったからー。見えなくても良かったんだー」
「そっか、見えるともっと楽しいのにねー」
「ヌー、僕も見えたら良いのになー」
何だか少し寂しそうなミミちゃん。
そうだよね、ちょっと悪い事言っちゃったかな?
見えたら楽しいだなんて、酷いかな?
というか、なら何で聞こえてるの?
「ミミちゃんは見えないんだよね?」
「見えないー」
「でも聞こえる?」
「聞こえなーい」
「んん? 聞こえてるじゃん」
「主人サマの声は特別みたいー」
「ふーん、変なの」
僕の声だけは聞こえるんだ。
うーん、どういう事か分からないけど、まぁ良いよね!
━━━━━
そんなスタンスでパトちゃんを待つ生活を続けていて、何だかんだと一週間が経過した。
依然としてパトちゃんは戻る気配なし。
どういう事?
なんでやねーん。
生活に必要そうな布系の物を色々と製作しつつ、野菜や果実を探しに行き、ついでに魚をゲットしてアジトに帰るという感じで生活は安定してきている。
最近ではついでに薬草も集め始めていて、万が一の怪我や病気に備えて備蓄している。
薬剤師の才能はなかったから、原料を塗ったり食べたりするしかないんだけど、無いより良いよね。
運ぶのも嵩張って大変だから、ツタを編んで籠も作っておいた。
大きいのと小さいのと。
殆ど大きい方しか使わない気もするけど念の為ね。
それにしても、案外と何とかなるものなんだなぁ。
野菜探索中に遭遇した猪さんも、襲い掛かってきたからバコっと叩いてそのままお持ち帰りさせて貰った。
パトちゃんが居ないから食べきれない量なんだけどさ。
燻製にでもしておこうかなぁ。
早く帰ってきてよー。
あ、そうそう。
そういえば、ビックリな事件が二つ起こってしまった。
一つは植えた種から出てきた芽が、信じられない速度で成長している事。
もう僕より大きいんだけど。
この子たち、どんな成長速度をしているの?
ミミちゃんの土の影響なのかな?
「分からないけど、僕も成長してるのかもしれないー」
「そうだろうね」
「ヌー、主人サマー。構ってー」
「ちょ、ちょちょちょっと待って! お願い!」
そう、問題は二つ目の事件だ。
「主人サマー、ミミの事、嫌いー?」
「いや、寧ろ好きだよ?」
「やったーうれしいー」
「ギャァァァァァァ!!!」
何と、ミミちゃんが人っぽい姿へと変身していた。
しかも女の人。
何で?
どゆこと?
本人曰く、僕の顔が見たくて頑張ったらしい。
そしたら顔が出来て腕が生えてきたって。
だから今のミミちゃんは目も見えるし、耳もちゃんと聞こえるんだって。
それって頑張ったら出来るものなの?
可愛い顔で少しおっとりトロンとした表情をしていて、ピンクの長い髪の毛、そして腕が生えていて、上半身はまるで人間のそれ。
そして下半身がミミズのままって感じだ。
ミミズの時に出来ていた事は今も出来るらしい。
本当にびっくりしたよね。
ただでさえ女の子が急に枕元に現れて、その上で上半身は裸だったからさ。
普通に叫んだよね。
今は服を作ってそれを着てもらっているけど、土を耕すときは邪魔らしくて、直ぐにその辺りに脱ぎ散らかしていくミミちゃん。
まぁ長い髪の毛で前が隠れているからギリギリセーフとも言えなくもないけれど、そういう問題でも無い気もする。
因みに服を着ると、胸の部分がパツンパツンになるほどに胸が強調されている。
胸はかなり豊かなミミちゃん。
あと良い匂いがする。
うぅ、刺激が強すぎるって。
「主人サマー、すきー」
「ギャァァァァァァ待って待って、ちょっと待ってぇぇぇ」
ミミちゃんは上半身裸で巻き付いてくる上に抱き付いてきてベタベタ触ってくるからめちゃくちゃドキドキする。
いくら髪の毛で前が隠れてるって言ったって、見えそうなのがそもそも怖い。
あと色々と柔らかい。
「こ、ここは任せるよ!」
「ヌー、いってらっしゃーい。僕はもう少し土を耕してるねー」
「よろしくー!!」
「またあとでねー」
僕は逃げる様にアジトを飛び出した。
どゆことなのこれ。
助けて。
━━━━━
「さて、今日はお肉があるから少し奥地まで探索してみよー」
「にゅっ!」
無遠慮に上裸で絡みついてくるミミちゃんから逃げる様に森へと飛び出した僕は、ひとまず東の方角をもう少し開拓したいなと思い、頑張って進んでいた。
けれど、何処まで行っても森、森、森。
これは探索するにも骨が折れそうだ。
「ここに印をよろしく」
「にゅ」
イモモが居るから目印に困る事はなく、帰り道が分からなくなりそうな事態には陥らずに済んでいる。
けれど、慎重に探索しているから良いものの、時々ゴブリンやオークみたいな魔物や、ライガーの様な四足獣まで生息しているらしく、ライガーを見た時は本当に怖かった。
走って勝てる相手じゃないもんね。
どうも僕自身、目も良くなっているみたいでさ。
かなり遠くの時点でライガーの存在に気付く事が出来たからバレなかったけど、雰囲気的に匂いにも敏感そうだから気をつけないとね。
マジで怖いんだけど。
うぅ、このままだと探索がキツいなぁ。
探索がキツいとここから動けないんだけど、
パトちゃーん、へーるぷ。
ハァ、今日も特に収穫なし。
一旦アジトに戻ろうと引き換えしたのだけれど。
そろそろアジトにたどり着くかなってタイミングで。
「主人サマー。何か倒れてたー」
「え、どゆこと?」
「こっちにいるー。動かないー」
「オッケー、着いて行くよ」
ミミちゃんが出迎えてくれて、その上で異常を知らせてくれた。
意志が疎通出来ると助かるなぁ。
でも服は着て欲しい。
土が顔に付いてたから作業してたのは分かるんだけどさ。
えっとー、というか何だっけ。
確か何かが倒れてたって話だったかな?
ミミが立ち止まって手を振っている。
あそこみたいだ。
「この子だよー」
「ゲッ」
そこで見つけたグッタリと倒れている存在は、
よりにもよって先刻ビビり散らかしていた、
あの脅威の四足獣、【ライガー】の姿だった。




