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幕があけませんでした。


準備に追われ一カ月はあっという間に過ぎてしまった。


その間に私は、ゲームイラストにそっくりな最高に美しく最高に悪役が似合う自分に仕立て上げた。


どこに出ても恥ずかしく無い所作とマナーを復習し、侍女にはツンケンとした、それでいて反感を持つ事も許さないと言った様な態度で接する。前世の上司との関係を思い出し心が痛んだので給金を増やす事にした。


誕生会のドレスは濃い赤を基調に宝石を散りばめ、肩から胸にかけて思い切り露出度を高くし、腕から袖にかけては黒レースに金の糸で細かな刺繍を施してある。一カ月で仕上げる為に職人は寝ずに働き通しだった様で、前世のサービス残業まみれだった自分と重なり内心申し訳なさでいっぱいになった為報酬を弾んだ。


(皆さん、お金で解決しようとしてすみません。目的を達成する為…どうかお許し下さい)


紫色の艶やかな長い髪は豪華なアップヘアに。金色の蝶のヘアアクセサリーを付け更に華やかに。


金色に輝く瞳と紫髪に合う様、薄紫のアイシャドウと跳ね上げたアイラインに真っ赤な口紅をひけば完璧な令嬢が出来上がった。


「レイラお嬢様、完璧な仕上がりでございます」


侍女モアがうっとりとした顔で鏡越しにレイラを見つめながら薔薇の香りの香水を振りかければあとはパーティの開始時刻を待つのみだ。


「モア、あなたにわざわざ言われなくても分かりきった事よ。」

(モアさん、綺麗に仕上げてくれた上にお褒めの言葉ありがとう。あなたこそいつも私の態度に我慢して仕えてくれる事、感謝しています)


意地悪そうな返しは忘れずに。心と言動がバラバラな日々にも少しずつ慣れて来た。



私、レイラはこのゲームの舞台となるジュノトレド王国の中でも強い権力を誇るフラヴィニー公爵家の長女で、ゆくゆくは後継者となる兄が一人。父母や兄から大層愛され慈しまれて過保護に育った為、望むものは全て手に入ると信じて疑わないお嬢様へと成長してしまった。


そんな愛する娘の誕生会、快気祝いも兼ねてそれはそれは盛大に執り行われ、国内の様々な貴族達、領内の平民も集まり、王族からは同年代の王子二人が招かれた。


その内の一人が推しキャラの王太子 第一王子エリアス・ジュノトレド。ブロンドのサラサラヘアに深い青の瞳がいかにも王子らしく、半年毎に行われるキャラ投票では五期連続一位を獲得。

ちなみにキャラ投票一位の場合、専用の限定イベントが開催される。


そしてもう一人は第二王子エクトル・ジュノトレド。彼はゲーム内では名前しか登場していない為情報が無いに等しい。



王族、貴族は城内で。平民は庭園で。それぞれがこの盛大なパーティを楽しんでいた。

私はこの日、レイラ嬢の金色の瞳と目が合うと美し過ぎて石にされるのでは、と言う噂が流れる程には輝いていた。上出来だ。


王太子達からもお祝いの言葉を頂き、推しを直近で拝み誕生日を祝って貰えるという幸せを噛み締めつつ、第二王子は茶髪で緑色の瞳をしており兄とは余り似ていない事はしっかりと把握した。全く目が合わない事からも場慣れしていないのかしらと思う程度で気に留める事も無かった。


今日は推しとの初対面よりも何よりも気になるイベントが待っているのだ。そう。このゲームは今日からが始まり。



お待ちかね、このゲームのヒロイン ソフィ は平民としてこの会に参加する。迷子になり中庭を歩いていた所を城内からエリアスが見つけ、声をかけた事がキッカケで物語が始まる。

ヒロインらしく特徴のあるピンク色の髪を三つ編みに結び、瞳は空色。素直な性格で笑顔が可愛らしい所をエリアスは気に入る流れなのだが…


だが…


窓の向こうにソフィは現れない。

さりげなく外の様子が伺える位置に立ち貴族達と歓談をしていたが、全く現れる様子が無い。


誕生日会が一カ月後になってしまったから?

それとも別な場所で会う?

そつなく会話をこなしながらも頭の中はハテナで埋め尽くされていた。


とにかくゲームが始まらないと、私の目的が達成されないじゃない!!


物語が始まら、、ない?

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