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しあわせのための七つの条件  作者: あだちゆう
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僕、夢を描く

それでも、僕の中で、たしかに、自分の活動が、世界を形成して、そのことによって、僕はこの世界のなかに居場所を見出していくことができるのだという実感は、小さくともあった。


それは、ヒロミにとっても同じことだっただろう。


行き当たりばったりのこの物語も、一瞬一瞬を懸命に生きること。

今を感じ取ることで、その姿は整っていないかもしれないし、一見、前に進んでいないように見えるかもしれないが、たしかに、状況は進んでいく。


「塾」に帰ってきて、僕たちは、三人で遅い夕食を食べた。


マミ先生が、キッチンに立って、鍋を作ってくれた。

彼女は、三人の娘の母でもある。

台所に立つその姿がいちばん見て見たかった、と思った。


僕たちは、その日のことを大笑いしながら語り合った。

そのうちに、あのしんどかった時のことなどは、どこかに消え去っていった。


遅くまで語り合った後、帰路につき、また新しい一日が始まる。



確かに僕は、前に進んでいる・・・のかもしれない。



翌日は休みの日だったが、塾は「たまり場」として開いていた。


早朝に、日の出とともに、先生は、公園で太陽に向かって感謝をささげる。

僕もその儀式めいたものに、いっしょに参加した。


朝起きたら、自分の心臓、ハート、そして全身を抱きしめて感謝を伝えること。

一杯の水に感謝を伝え、飲み、

かがみの前の自分に向かって、褒め言葉を伝えること。


自分の最終的に達成したい大きな大きなゴールを、リアルに、五感で感じ取れるくらい思い描くこと。


そして、今月達成するべきこと、今日一日やることをイメージし、明確にしていくこと。


知恵の詰まった古典の一節を詠み、しばらくの間黙想すること。


それが、先生にとっての毎日欠かすことのないルーティンだった。


そして、僕もそのルーティンを共にすることにした。


その後、先生は、朝食をつくる。


玄米、みそ汁、漬物、納豆、魚、といったシンプルなものをよく噛んで食べる。


先生は、それらの食事に、感謝をささげ、その食卓を分かち合う。


それは、とても暖かく、自由な時間と空間だった。


ひょっとしたら、先生は、こんな場所を作りたくて、そして、ずっとこのことを続ける営みに喜びを感じているのではないか、と思うのだった。



マミ先生は、「なりたい自分」がイメージしずらいという私のために、

食事のあと、食器を洗って、さまざまなことを伝えてくれた。


「その時の感情が大切」なのだということ。

「何のために、誰のために」が一番大切なのだということ。


この小さな町の一角の部屋で、僕は、人生にとって、いかなる大成功よりも重要な真実に触れているという気がした。


今ここに、楽園はあり、ここが聖なる地であり、日々の瞬間が巡礼であるということ。


今こここそが、「聖なる場」なのだ。




「毎日、自分は成功できるんだと自分にい聞かせることで、それは本当になっていく。

人の心の中には、それだけ大きな力があるのだということを忘れないで。」


と彼女は言った。


彼女が、つくりあげた塾は、本当に何もないところから、彼女のイメージにぴったりのものが引き寄せられてきた、という。


彼女は、そのイメージを繰り返し持ち続けてきた。


そして、きっと僕も、どこかでそのイメージに、ひきつけられてきたのだろう。

本当の望み、に。



べつの生徒が、言った。

「私は、経営者として成功したい。いや、している。

年収何十億を稼いで、都内の一等地に住み、ベンツを二台所有している。

自社の大きなビルを持ち、日本、いや、世界のインフラそのものを大きく変えているのだ。」

と。


彼は、本当にそのビジョンを実現させていった。

始まったのはわずか6畳一間の小さな一室からであった。


また別の生徒が言った。

「僕も経営者として成功しているだろうけれども、君のようなものは求めない。

日本有数の大富豪にはなっている、しかし、大きなテナントや自社ビルは持たず、地方の商店街の小さな店を本社にして、地元の人を大切にしているだろうね。

旅先では、古びた旅館を楽しみ、850円の定食で満足しているだろう。」

彼も、そのような生き方を実現させてきた。


また、別の生徒が言った。

「私は、歌手、女優になっている。」


別の生徒は、

「ベストセラー、ロングセラー作家になっている」

と。


別の生徒は、

「漫画家になって、大ヒット作品を生み出している」と。


それは、すべて本当のことになった。


このほとんど有名でない、小さな小さな塾には、のちの成功者や世界を変えることになる小学生や中学生や高校生がこぞって集まっていた。

というよりも、広く知れ渡ることを避けるような「秘密結社」のようなものとして、

志を持った人が集まっていた。


いや、何ものでもない生徒たちが、心の中の無限の可能性に気がついて、それを日々種をまき水やりをしていった結果、そうなっていったというのが正しい。



どの成功が「正しい」というわけではない。


この塾では、誰かが夢を語っても決して否定されることはなかった。


「・・・僕の夢は?」

と、僕は考え始めた。


凄腕の経営者になれるイメージはない。

歌も歌える気がしない。


「このゴールを定めることには時間をたっぷりかけた方がいい。

それが、ほとんど、9割を占めるから。

そしてそのゴールは、借り物のものではなく、あなたが本当に望む自由なもの、自由な姿である必要があるの。」

と先生は静かに言った。


「人に見せなくてもいい。

野心的で、思わずにやけてしまうような、

・・・そうね、お金、地位、あなたの好きな女性のことでもいいのよ。

人から見て立派なこと、それは素晴らしい。

だけど、人間のはじめの原動力にあるものって結局、エゴイズムとか野心とかそういうことなの。

それを無視して立派なことを言っていてもだめなの。」


先生はクスリと笑って、伝えてくれた。

僕はまるで、心の壁が外れたようになった。








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