僕、稼ぐ
「求めよ、そうすれば与えられる」
とはよく言ったものだ。
僕たちは、脳内にアンテナを張り巡らし、どうしたらお金を手に入れられるかということを考えめぐらした。
・・・ぱっと浮かんだことは、どこかで数時間働かせてもらう、ということ。
あとは、人通りの多いところで、寄付を募る、ということなのだが、
それに対して、音楽や大道芸など何かしらのパフォーマンスができないといけない。
もう一つが、イベントを開催して集客をする、、、ということ。
どれも非現実的で、いますぐ、となると、胸が重くなる気がした。
スマホで検索すると、近くに日雇いのバイトが多くあることに気が付く。
そしてなんと、すぐそばの工場で、4時間の労働を募集しているということではないか。
僕は、すぐに勇気を出して、現地に行き、
「募集を見たんですけれど」
と伝えると、すぐに現場に入り、単純な作業を繰り返した。
それで、4000円少しを手渡しされた。
終わった時は、もう日は暮れていた。
他方、ヒロミは駅前の橋で、即興で引き語りをして、道行く人の投げ銭を集めていた。
僕は、そばで紙にイラストを描き、看板めいたものをつくると、若干多くの人が足を止めた。
それは決して、素晴らしいものとは言えなかったが、そこに少なくとも対価が発生したことは確かであった。
僕たちは、「その気になれば、道は開ける」ということを学んだのだが、
その苦労を通して、「事前計画や準備の重要さ」を学んだのであった。
行き当たりばったり、風に吹かれて、その場で即興に道を開くやり方は重要だ。
しかし、それをさらに成功させるためには、事前の準備がいかに重要だったかということを思うわけである。
とにもかくにも、僕たちはお金を手にして、遊園地に入ることができるようになった。
入口付近では、夜のとばりの中、高速のジェットコースターと絶叫が聞こえる。
どこか外国の都市をモチーフにした庭園と、音楽が僕たちを迎え入れて楽しませてくれるようだ。
僕たちは、数々のアトラクションを楽しみ、刺激を大いに受けた。
大きな食堂で、オムライスやらご当地のラーメンを味わった。
だけど、心ここにあらずという気がいつも抜けなかった。
こんなに、世界は僕たちを楽しませようとしてくれているのに。
幻想的なイルミネーション、そして花火が、園内を覆う。
素晴らしい場所にいて、素晴らしい経験をさせてもらっている。
でも、心は、いや、心だけでなく、心身ともに落ち着かず休まらない、という執拗な感じに僕は罪の意識すら抱く。
それは、つまるところ、僕という存在が、この社会の中の一員としての堂々としたメンバーシップを獲得することが困難で、いつも不安定な在り方に置かれているということなのだ。
そして、その意識は、どんなリゾート地やアトラクションに触れていても、脳裏から離れることがない。
先生は、ニコニコしながら、あちらこちらを回る。
楽しい。
楽しいことは、確かだ。
だけど、もう、すべてを忘れて、この楽しさだけに浸っていられたら・・・と思う。
絶えざる緊張から、どうしたら解き放たれるのか・・・わからない。
駐車場に戻り、車に乗り込み、夜の街をドライブする。
・・・僕はこの時間が、好きだ、と思う。
この、夜の落ち着いた、非日常の、どこかに行きながら、会話を楽しむ時間が。
ここに永遠がある、と思う。
可能性が、開けそうなところ、
そこに僕は、自分を投げ込みたい。




