表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
しあわせのための七つの条件  作者: あだちゆう
16/19

僕、稼ぐ

「求めよ、そうすれば与えられる」

とはよく言ったものだ。


僕たちは、脳内にアンテナを張り巡らし、どうしたらお金を手に入れられるかということを考えめぐらした。


・・・ぱっと浮かんだことは、どこかで数時間働かせてもらう、ということ。


あとは、人通りの多いところで、寄付を募る、ということなのだが、

それに対して、音楽や大道芸など何かしらのパフォーマンスができないといけない。


もう一つが、イベントを開催して集客をする、、、ということ。


どれも非現実的で、いますぐ、となると、胸が重くなる気がした。


スマホで検索すると、近くに日雇いのバイトが多くあることに気が付く。

そしてなんと、すぐそばの工場で、4時間の労働を募集しているということではないか。


僕は、すぐに勇気を出して、現地に行き、

「募集を見たんですけれど」

と伝えると、すぐに現場に入り、単純な作業を繰り返した。


それで、4000円少しを手渡しされた。


終わった時は、もう日は暮れていた。



他方、ヒロミは駅前の橋で、即興で引き語りをして、道行く人の投げ銭を集めていた。


僕は、そばで紙にイラストを描き、看板めいたものをつくると、若干多くの人が足を止めた。


それは決して、素晴らしいものとは言えなかったが、そこに少なくとも対価が発生したことは確かであった。


僕たちは、「その気になれば、道は開ける」ということを学んだのだが、

その苦労を通して、「事前計画や準備の重要さ」を学んだのであった。


行き当たりばったり、風に吹かれて、その場で即興に道を開くやり方は重要だ。

しかし、それをさらに成功させるためには、事前の準備がいかに重要だったかということを思うわけである。


とにもかくにも、僕たちはお金を手にして、遊園地に入ることができるようになった。


入口付近では、夜のとばりの中、高速のジェットコースターと絶叫が聞こえる。

どこか外国の都市をモチーフにした庭園と、音楽が僕たちを迎え入れて楽しませてくれるようだ。


僕たちは、数々のアトラクションを楽しみ、刺激を大いに受けた。

大きな食堂で、オムライスやらご当地のラーメンを味わった。


だけど、心ここにあらずという気がいつも抜けなかった。

こんなに、世界は僕たちを楽しませようとしてくれているのに。


幻想的なイルミネーション、そして花火が、園内を覆う。


素晴らしい場所にいて、素晴らしい経験をさせてもらっている。


でも、心は、いや、心だけでなく、心身ともに落ち着かず休まらない、という執拗な感じに僕は罪の意識すら抱く。


それは、つまるところ、僕という存在が、この社会の中の一員としての堂々としたメンバーシップを獲得することが困難で、いつも不安定な在り方に置かれているということなのだ。


そして、その意識は、どんなリゾート地やアトラクションに触れていても、脳裏から離れることがない。


先生は、ニコニコしながら、あちらこちらを回る。


楽しい。

楽しいことは、確かだ。


だけど、もう、すべてを忘れて、この楽しさだけに浸っていられたら・・・と思う。


絶えざる緊張から、どうしたら解き放たれるのか・・・わからない。


駐車場に戻り、車に乗り込み、夜の街をドライブする。


・・・僕はこの時間が、好きだ、と思う。

この、夜の落ち着いた、非日常の、どこかに行きながら、会話を楽しむ時間が。


ここに永遠がある、と思う。


可能性が、開けそうなところ、

そこに僕は、自分を投げ込みたい。









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ