交流会の招待状
早いものでもうじき6歳になる。
今日の勉強が終わり、晩御飯までのちょっとした時間。
今までの事を思い出す。
魔法理論の勉強はとてもしんどかった。
教本の内容は初級と言うわりには堅苦しい書き方で読んだだけでは全然分からなかったが、セナの教え方でなんとか理解出来た。
礼儀作法の勉強もちょっとしたテーブルマナーだったものが爵位に応じた対応の仕方など、馴染みのない事も増えてきて難しくなってきた。
……と色々思い出していると、扉がコンコンとノックされる。
「アルノーです。今、よろしいでしょうか?」
「うん。入っていいよ」
「失礼致します」
扉を開けて入ってきたアルノーから手渡されたのは、上質そうな質感をした手紙だった。
え?僕に?
そう声を漏らした僕にアルノーが説明してくれる。
「これは招待状です。我が国の王ガゼル陛下の娘、サレン王女もウィル様と同じでもうすぐ6歳になられます。その御披露目も兼ねての交流会を開催するようです」
「王様の娘? ……粗相しないか心配だなぁ」
「しっかりなさってください。ウィル様はエレイン家の立派なご子息なのですから」
うっ……やっぱり家の名前って重いなぁ……。
事あるごとに強調されるようになったエレイン家 と言う家名。
段々とその名前の重さが実感出来るようになってきた。
「当日はアルバン様もご出席なされますので、心配なら横で挨拶するだけでも良いでしょう」
「そうかー。それなら安心だ」
父上が一緒かぁ……それは頼もしい。
最近は中々話が出来ていないが、一緒に食事をするときには気に掛けてくれているし。
「……そうとなれば、御召し物なども準備しなくては……。それではウィル様、そろそろ……」
アルノーがそう言っている途中、時計に目を向けると時刻は8時と9時の真ん中あたりにまで来ていた。
……あ、たしか今日は父上と一緒に8時に食事を取ろうって……。
「……ウィル様。お早く食堂へ!」
「あ、待ってよ! アルノー!」
だいぶ焦ったのだろう、僕を抱えて小走りで食堂へ向かった。
結局、食堂で一人ポツンと座っていた父上にアルノーと一緒に平謝りする事となった。
──
「──ウィル。交流会の話は聞いたね? 当日は私も一緒に行くから少し退屈かもしれないが、辛抱してくれ」
「はい。父上」
少し遅れてしまった夕食。
ちょっとだけ気まずい空気が流れていたが、しばらくすると交流会の話題となった。
やはり、公爵家と言う大貴族はこういう社交の場では挨拶まわりをしないといけないらしい。
「セナから作法については順調とは聞いているけど、まだ完璧じゃないだろうし、私の後に続いて挨拶するだけでいいから、しっかり頼むよ」
「はい、父上」
「今回はサレン王女の顔見せと言うのが目的だから、そこまで気を張らなくても構わないはずだ。おいしい物が食べれられると思って楽しんでくれ」
ほっ……父上の後ろに居ればいいんだ……。
しかし、なんだか気を遣われている気がするな。
もしかして、アルノーから僕が緊張していると伝えられたのかな?
しばらく沈黙していると、父上が少し視線を逸らしながら理由を話してくれた。
「……実は私も初めて交流会に出席すると言われた時は同じ事を父上に言われてね。そのおかげでだいぶ気が楽になったから、その真似事をしただけなんだ」
なるほど、父上もそうだったんだ。
お祖父ちゃんは厳しい人だったとアルノーも言ってたけど、ちゃんと父上の事も見ていてくれたんだな。
そう考えていると、幾分か気が楽になった気がする。
「ありがとうございます父上。気が楽になりました」
「! そうか、それは良かった」
お礼を言うと父上は心なしかホッとした顔をしていた。
そのあとは父上の昔話を聞かせてもらいながら楽しい夕食を過ごした。
感想でのご指摘ありがとうございます!まだまだ文を書くのに慣れていないので、不馴れですがよろしくお願いします!
プロローグを書くのに少し手間取っています。6歳の交流会でヒロインとの出会いを書いたら殆ど終わりですので、もうしばらくお待ち下さい!