第一話 転生?
──僕が引きこもりを始めてそろそろ1年経つ。
僕の名前は八重咲 平次。22歳の無職。
大学まではサッカー選手を目指し、強豪チームがある大学に進学したが、チームメンバーと噛み合わず、2年で中退。
それから一般の会社に入社するも、わずか1年で退社。
そこからは親の仕送りでなんとか生活している状態だ。
「結局今日も何もせずに1日が過ぎてしまったな……」
なんとかしないといけない気持ちはあるが、どうすれば良いか分からず、悩んでいる内に1年も経ってしまった。
ベッドの上でため息を吐きながらゴロリと寝返りをうつと時計が見えた。
時刻は午後18時、窓の外を見ればちょうど日も沈み始めていた。
体を起こし立ち上がると時間を意識したからか急にお腹が鳴った。
「そういえば朝からなんにも食べてないな」
お腹も鳴るはずだと思いながら冷蔵庫を開けるが中は空っぽだった。
そうだ……昨日の夜に食材もなくなったから今日買いに行かないといけないのを忘れていた。
「はぁ、今日はコンビニ弁当かな」
気は進まないけど仕方がない。
着替えようか迷ったが歩いて5分ぐらいだしスウェットのままでいいか。
そう一瞬で決断すると財布や携帯をポケットに突っ込み、何を買おうか悩みながらコンビニへ向かった。
──
適当な弁当と明日の朝ごはんも買ってコンビニを出ると辺りは完全に日が沈んで暗くなっていた。
早く帰って食べようと早足に歩いていると公園でユニフォームを着た小学生ぐらいの子供がリフティングの練習をしているのが見えた。
5回、6回……気が付くと回数を数えだしていた。
ずっとサッカーを続けていたこともあり、サッカーボールを見るだけでも色々思い出してしまう。
──八重咲! お前のせいで負けたんだ!──
大学を中退する直前の試合。
ギリギリ3-2で負けてしまった後、控室でチームメンバーの岡崎が僕を責める声は今でも消えてくれない。
その日以降、考えがまとまらず結局グシャグシャな感情を抱えたまま逃げるように大学を辞めてしまった。
……あの時はどうすればよかったのだろうか……?
「あっ……」
昔を思い出し、へこんでいると不意に子供が声を上げた。
顔を上げるとボールが公園の外にある道路まで転がっていくのが見えた。
子供が走ってボールを拾った時、急に道路が眩しくなり、同時にクラクションのような物が聞こえた。
その方向に目を向けると同時に血の気が引くのを感じた。
大型のトラックが迫っているのが見えてしまったのだ。
「危ない!」
咄嗟に出た言葉と共に全力で走る。
その時は全てがスローモーションに見えた。
迫るトラック、固まっている子供。
久々に走ったせいか足がもつれそうになりながらも必死に手を前に伸ばし、何かに触れた感触がした瞬間、道路の脇に押し退けると同時に僕の意識は闇に包まれた。
──
うっすらと意識が戻ってきた目が少ししか開かない……。
さっきまで暗い場所にいたせいか目の前は真っ白にしか見えないし、体が全く言うことを聞かない。
その事が急に怖くなり、泣いてしまった。
なんだか体も感情も全然制御出来ない……。
誰かに抱き抱えられたかと思ったら、すぐに別の人に渡されたようだ。
えっ? どうして抱えられるほど小さくなっているんだ!?
そんな混乱も伴い、ますます泣き声が大きくなってしまった。
何故かそんな他人事のように思っていると、突然ふんわりとした柔らかい感触と暖かさを感じ、泣き声は収まり、自然と涙も引いていった。
うっすらと光になれてきた目に写ったのはきれいな赤色だった。
暫く見つめていると抗えない程の眠気に襲われ、ゆっくりと目を閉じると同時に意識が途切れた。
初投稿です。文章やくどい表現のども多いと思いますが、宜しければ見ていただけると嬉しいです。