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第一話 元・神の異世界転生

稚拙極まりない文章ですが、それでも良いという方はよろしくお願いいたします。

 




 <時間遡行(リ・ドゥ)
















 消去中・ ・ ・
















 <譎る俣驕。陦(繝ェ繝サ繝峨ぇ)
















 消去中・ ・ ・
















 <消去済み(存在しません)
















 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「なぁアルフ、お前異世界転生には興味ないか?」


「む?」


 ――神々の住まう場所、神界。

 神聖にして荘厳、絢爛にして壮麗なこの場所でリストにいきなりそんなことを言われた。

 今何かを思い出そうとしていたんだが……忘れてしまったな。何だったか、とても大事な、忘れてはいけない事だった気がするのだが――


 思い出そうとしていたものは、しかし霧のように消えてしまった。


「お前、大丈夫か? 顔色が悪いぞ?」


 俺の顔を覗き込みながら、リストが心配した様に眉を下げる。


「いや、大丈夫だ。それでどうしたんだ?」


 俺は頭を振ってリストに応える。


 リストは俺の友神(ゆうじん)で、サラサラの翠色の髪に金色の眼をした、端整な顔立ちのイケメンだ。基本的にハイスペックで何でもそつなくこなすが若干ナルシシストの気があるのが玉に瑕である。


「お前さ、アルファードが滅ぼされてからなんか若干元気ないだろ? だから、俺の世界に転生してもらって楽しませてやろうかと」


 アルファードとは、俺が神として管理していた世界のことだ。既に滅ぼされてしまっているため、今はもう無いのだが。

 そしてリストの世界というのは――ふむ、名前を忘れたな。


「お前の世界の名前は何だったか?」


「リストムだ。おいアルフ、お前友神の世界の名前くらい覚えておけよ?」


「む、悪いな」


 そう言うと、リストは恐る恐るといった感じでこちらを窺ってきた。


「おい、まさかお前――シルヴィの世界の名前は覚えてるよな? 覚えてなかったら悲しまれるぞ?」


 シルヴィとは俺の妹の名前だ。まだまだ新米の神で、体の大きさも人間でいう十二、三歳程度しか無い。まあ神であるため人間では有り得ない程頭が良く、得意属性である氷属性の魔法を使った戦闘には光るモノがあるが。

 銀色の髪に同色の瞳をしており、何故かいつも一部のデザインは違えど似たような白色のワンピースを着ている。周りがどのような気温であろうともだ。

 氷が得意属性だと寒くても平気になるのだろうか。


 リスト曰くシルヴィの身長百四十センチちょっとの小さく幼げな体が、とある趣味を持った(紳士達)の間でかなりの人気を博しているらしい。とある趣味とは一体……


 そして基本的に神は家族の関係が人間と比べてかなり希薄なのだが、俺とシルヴィは何故か人間の家族の様な距離感だ。

 普通、神が家族と会う頻度は余程仲が良い訳で無ければ数年に一回程度である。だが俺とシルヴィが会うのは五日に一回程度、時には毎日会うこともある。

 ――因みにリストは俺の家族では無いが二、三週間に一回程度は会う。腐れ縁だ。



「まあ、流石に自分の妹の世界の名前は覚えている。シルヴィアだ」


「なら良い。それでだ、リストム(俺の世界)アルファード(お前の世界)と世界のルールは殆ど同じだし、魔法も使える。お前にはほぼ違和感は無いはずだ。この機会に、世界を管理する側じゃなくて生きる側になってみたらどうだ?」


 世界のルールが同じであることや魔法が使えるというのは異世界を生きるにあたって重要な要素だ。


 物を上に投げてキャッチしようと思ったのにいつまでも上に飛んで行かれたり、喋ろうとした時に声が出なかったりしたら困る。

 そして火を熾す時に<着火>の魔法を使えなかったり、物を冷やす時に<冷蔵>や<冷凍>の魔法が使えなかったりするのも困るのだ。

 その点、リストムは問題ないと言うことだろう。だが――今までの経験則で行くと、これは何かを隠している可能性が高い。

 真正面から聞いてみる事としよう。


「で、本音のところはどうなんだ。俺に何をして欲しいんだ?」


 俺の言葉にリストはニヤリと笑みを浮かべる。


「バレたか」


「当然だ」


「いやな? 俺の世界にもちょっと前に魔王が現れた訳。んで、まあ聖剣なり聖具なり生み出して勇者にあげたからなんとかなるかな~って思ってたんだが、お前の世界が魔王に滅ぼされたことを知った訳。おおこりゃまずいと思ってどうにか出来る奴は居ないかと色々考えた結果、お前に白羽の矢が立った訳よ」


 リストの言うとおり、俺の世界は約五千年前に現れた魔王グニエル、及びグニエル配下の魔族と魔物達によって、二ヶ月前に滅ぼされた。その時から俺は神ではなくなっている。管理する世界を失った神は神ではなくなるのだ。

 俺は聖剣をはじめとする武器防具を生み出したり、神託を与えたりしたがそれでも魔王達の方が強かったようで、勇者達は敗北し世界は滅ぼされた。

 つい五百年ほど前までは魔王グニエルは大人しかったんだがな……


「だがなリスト。俺は元が付くとは言え神なんだぞ? リソースを使い果たしてお前の世界が滅びたら元も子も無いんだが、そこの所はどうなんだ」


 神は顕現するのに大量のリソースを消費する。リソースというのはその世界を維持、管理するために必要なエネルギーで、わかりやすく表現すると特濃の魔力である。

 リソースは神界から供給され、それぞれの世界の龍穴と呼ばれる場所から放出されて世界に充満しており、尽きるとその世界は滅びる。


 勇者が死に、且つ人間の数が一定以下になると供給が自動的に止まるため、魔王軍によって両方の条件を満たされたアルファードは滅んだ。


「フッフッフ。この俺に抜かりがあると思うか?」


「思う」


 かなり。


「はあ? まあそれは措いておこう。俺の作戦はこうだ。

 1.お前の肉体をそのままに、人間に転生させる。この時にお前にリソースを生み出せる能力を与える。

 2.お前のその強靱な体にリソースを詰め込めるだけ詰め込む。

 3.お前をリストムに転生させる。

 4.お前に詰め込んでおいたリソースを放出する。

 5.お前は人生を謳歌する。俺はいざというときに使えるリソースが増える。

 6.みんなハッピー。

 だ。完璧!」


「いやちょっとまて」


「お、どうした?」


「どこが完璧なのかは俺にはよく分からんのだが。まずリソースを詰め込む時と放出する時に俺は死なんのか? そしてリソースを生み出せる能力を与えるとは何だ?」


「――フッ、まだまだだなアルフ君? 良かろう、君の質問に答えて進ぜようではないか」


 リストがその翠色の髪を掻き上げてキメ顔でこちらを見てくる。イケメンなだけあって様になっているのが何とも……

 そして何より――


 ウザいなコイツ。


「ウザいなコイツ」


「黙らっしゃい」


 おっと声に出ていたようだ。

 リストと一緒に居ると何故か若干言動がおかしくなるな。気を付けるとしよう。


「んで、答えるならさっさと答えてくれ」


「え~まず一つ目の質問だが、普通の神や人間ならまあまず間違いなく体が吹き飛ぶな。恐らく塵も残らんだろう」


「おい? 駄目じゃないか?」


 俺がそう言うとリストはびしりと人差し指を俺に突きつける。


「しかぁし! 言っただろう? お前の体は強靱だと。お前のその体は何故か途轍もなく強い。普通の神や人間なら体が吹き飛ぶような力を加えられても耐えられる程度にはな。まあ普通に死ぬ程度の力に対しては他の奴と何ら変わり映えはしないが。何故なんだろうな」


「俺が知るか。ならばリソースを生み出せる能力というのはどうなんだ?」


「お前はやったことないのか? 異世界から呼んだ奴らを転生させる時に、色んな転生特典(ギフト)を付けられるだろう。それを使えば良い。普通は戦闘能力とかを付けるからやったことは俺も無いが恐らく出来るはずだぞ」


 確かに転生特典(ギフト)は付けられる。俺は忙しくてしばらく他の世界から人間を呼ぶなんて事はやっていなかったから忘れていた。そう言えばそんなものもあったな。


「ふーむ」


 俺が考え込んでいるとそれを好機と見たのかリストが更に売り込みをかけて来る。


「な? 悪い条件じゃあないだろ? 別にお前に魔王を倒してもらおうって訳じゃない。勿論倒してくれるのであれば有難いがまあ良い。お前は人生を楽しむだけだ。良いだろ?」


 確かに悪い条件では無い。むしろ好条件と言えるだろう。ならば――


「良いだろう、転生しよう」


 降って湧いた幸運を掴まなければ損というものだ。


「そうか! ありがとう! じゃあ早速準備するか。一瞬で終わらすからちょ~っと待っとけ」 


 そう言うとリストは慌ただしく転生その他諸々の準備を始めた。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 転生しようと言ってから僅か二日後、全ての準備が終わり後は転生するのみとなった。

 転生する俺の見送りにはリストとシルヴィが来ていた。



「兄さんはどの位の間、神界を留守にするのですか?」


 シルヴィがこてんと首を傾げる。腰まで伸びたサラサラの銀髪がはらりと揺れた。


「まあ百年弱か? なあリスト、人間の寿命はそれ位だったよな?」


「ああ。確かそれ位だった筈だ。随分短いもんだよな。その百倍くらいあっても良いと思うんだけどなあ」


 視線をシルヴィに向けると、目を少しだけ見開いて固まっていた。


「どうした、シルヴィ」


 シルヴィは俺に向けていた体を瞬時にリストへ向けた。ワンピースの裾と銀髪が振られる。


「リストさん、私もリストムに転生させて下さい。兄さんと一緒に行きます」


 いきなりどうした。


 リストは頭を掻くだけで大して驚いた様子も無い。何故だ、こうなることが分かっていたとでも言うのか。


「う~~~ん、悪いんだがそれは無理だ」


 研ぎ澄まされた剣の切っ先のような鋭い光がシルヴィの目に宿る。


「何故ですか」


「お前の兄貴はもう世界を管理しなくてもよくなったから転生してもさして問題は無いが、お前にはシルヴィアっていう世界があるだろ?お前が居なくなるのは問題だ」


 その話で納得するかと俺は思ったんだが、シルヴィは全く動じず反論した。


「シルヴィアには魔王は居ませんし、まだ別に神は必要ではありませんので、百年程度なら問題は無いです。そんなどうでも良い些事よりも私が兄さんと会えなくなる事の方が大問題です。百年も会えなかったら私がしんでしまいます」


 すると、困り顔を浮かべたリストがこちらを向く。


「アルフ、お前の妹だ。何とかしてくれ」


 説得能力ひっっっくいな、おい。


 ふむ――少々心苦しいが転生はリストの頼みでもあるし、自分の世界が滅びる時の無力感はよく知っているからな。ここは一つ、説得に挑んでみるとしようか。


「なあシルヴィ」


「何ですか?兄さん」


 説得するには確か――相手の目を見ながら話した方が良いんだったか。

 俺はシルヴィの澄んだ銀色の瞳をじっと見つめながら話しかける。


「頼む。何とか百年、我慢してくれ」


「――――――――むうぅ、仕方ないですね。兄さんの頼みならば聞かざるを得ません。ですが――帰って来たらたくさん構って下さいね?」


 俺とのにらめっこに根負けしたシルヴィは、渋々といった様子で了承した。


「ありがとな」



 説得(ミッション)成功(コンプリート)



 お礼にシルヴィの頭を撫でると、不満そうだった顔が一瞬で幸せそうなゆるゆるとしたものに変わった。そしてもっと撫でれとばかりに頭を手に押し付けてくる。


「………」


 リストが無言で何か物言いたげな目線を寄こしてくるが――まあ措いておいても構わんだろう。


「はぁ、まあ良いか。おいアルフ」


「何だ?」


 シルヴィの頭を撫でたままで俺は応える。


「お前――全力で戦うとき以外は力を抑えたその状態で居ろよ? いくらリソースを生み出せるといっても有限なんだからな。一段階封印を解くくらいなら大丈夫だと思うが――そこんとこ気をつけろよ」


 今の俺は力を二段階封印した状態であるため、もともと青色の髪と紅色の眼だったのだが、黒髪黒目になっている。


「大丈夫だ、問題ない」


「いいか、よく聞け。お前が封印を全て解除して全力で戦った場合、そのリソースは短時間ならばお前に付ける特典で恐らくは賄えるだろう。但し、長時間となると心許ない。その時は俺の世界(リストム)からリソースを吸収する事になる訳だ。俺はお前に世界を滅ぼしてもらいたくてお前を転生させるわけじゃ無いんだからな?」


 まあ要は極力全力を出すなということだろう。


「分かった」


「じゃあ始めるぞ。――はぁっ!<神門>!」


 リストが力を込めて魔法を発動すると、地面に複雑極まる巨大な魔法陣が描かれ、そこから豪奢な絵が彫られた、巨大で煌びやかな両開きの扉が現れた。

 久々に見たなこの<神門>。前々から思ってたんだが装飾過多じゃ無いかね? まあいいか。

 俺はシルヴィの頭から手を離して立ち上がる。




「知ってると思うが、この扉をくぐったら転生だ。一応向こうの金はお前の<収納>に入れておくし、色んな知識も付与するから後は頑張れ。何をするつもりかは知らんが応援してるぞ」


 <収納>は魔法の一種で、異空間に物を仕舞う事が出来る。そして仕舞ってある物は好きなときに出し入れ出来るからかなり便利だ。俺はあまり物を入れていないが。


「兄さん行ってらっしゃい。私は――何とかして生き延びます……」


「ああ、行ってくる。シルヴィも頑張れよ」


 二人に見送られ、俺は扉へと歩みを進める。


「――さて、と」


 <神門>というご大層な名前に全く恥じない重厚な扉をゆっくりと押し開けた瞬間、眩い光が視界を白く染め上げる。その時、俺はどこかこれからのことが楽しみな自分がいることに気付いた。


 ――『楽しみ』なんて感情は久し振りだな。確かにリストの言った通り俺は若干元気が無かったのかも知れない。そんなことを考えつつ、俺は一歩前に足を踏み出し扉の先に進む。


「さあ、始めようか」


 ――俺の"人生"を――







































































































 ――本当にそれは『楽しみ』なのか?――

ありがとうございました。

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