29.転性のノスタルジア
私を始まりにしてください。恥をかく覚悟はあります。
私が生まれるより前に死んだ人をもう一度殺してください。思い出が重いのです。
◎作品タイトル
転性のノスタルジア
◎作者
都森メメ 様
◎ジャンル
純文学〔文芸〕
◎あらすじ
男として生きた前世の記憶を持つ女の子が、現代日本で幸せになろうと頑張ったり、昔を懐かしんだりするお話。
◎タグ
日常 転生 恋愛 TS
◎個人的オススメ度
☆10
◎レビュー・感想
転生して転性した女の子が現代日本でごく普通に生活し、ごく普通の青春を過ごす物語。男性であった前世と女性である現世のギャップに悩み受け入れ納得したりする話です。魔法が出てきたりモンスターが出てくる話ではありませんが、女の子として生きていくということを非常に美しく描いてある文章だと思います。
一般的なTS作品は冒険譚的に読者を楽しませるためのものだと思っています。どちらかというと男性視点(TSだから女性主人公なのに)で物語が進み、ヒロインがいたり誰かの王子様的な存在になったりする作品が多いでしょう。一方この作品では主人公は一貫して女性として存在しています。かくあるべしと振る舞って女性であると頭では認識しています。しかし前世男性であることが根底にあるので、女性らしさというものがどうしても体感としてついて来ません。その本能と理性のギャップや郷愁が淡々としつつも趣がある文章で書かれています。
「女の子らしくなりたい」
男性との性差を実感し、そのことを今の今まで理解していなかっか自分を認識してついに彼女は前世の男の影響を消して女に寄せていくと決心します。その決心はきっと本人にしたら一大決心なのだと思います。しかし女の子らしくなりたいという言葉の意味が一般的な女の子と大いに異なり、男っぽい女→女らしい女ではなく男→女であることが読み取れます。つまりまだ本質的に女性になっていないのではと思う文章です。
先程から女らしさ男らしさと書いていますが、決して性差別をするつもりはありません。ただ今現在世間一般多数で認識されている性認識をあらわしているつもりです。主人公もそのような「らしさ」というものを理性で認識していて、それ故に乖離が発生しているのかと感じます。
この作品は純文学です。純文学とは何かと聞かれても私にはパッと答えるとこはできませんが、なろうに溢れている大衆文学とは確実に一線を画す作品であると言えます。純文学は読み手にも知識や能力を求めるものだと思いますので、この作品について私が大いに理解しているとは自信をもてません。逆にいえば読み手それぞれにとって変わった理解が得られる作品であるとも言えると思います。また、読み手の能力が変わればまた新しい発見が得られるのだと思います。
10万文字の美しい文章をぜひ読んでみてください。特に最終話から得られる余韻はとても気持ちいいものです。
◎作品傾向
シリアス☆5
戦闘傾向☆1
恋愛傾向☆7
チート性☆2
◎作品情報
完結済中編
文字数 109,761文字
ブックマーク 3,358件
総合評価 10,686pt
初掲載日 2017年 11月02日
作品URL
https://ncode.syosetu.com/n0217ej/