第99話 出航
カッカッカッ……
長い廊下に靴音だけが響く。
廊下は天井全体が光っており非常に明るい。
壁は鋼鉄に似た美しい素材でできており、どこまで行ってもつなぎ目一つ無い。
テティス、古代の遺跡の設備はこういった作りになったものが多い。
小型艇は海底でそのままテティス内へと取り込まれ、直接ブリッジへと行ける通路に直結する。
今オレたちはその通路を歩いている。
「急いでいるときはフロートボード、魔道具で高速移動が可能です
重い荷物も楽ちんですよ」
「たまんねーな……」
「やっぱりガウにはわかるー?
これからもっと興奮するよー」
「まじかよ……!」
男の子はこういうのに弱いから仕方ないね。
ブリッジへと到着する。
音もなく扉が開き、この船の頭脳がお披露目される。
周囲の様子を映し出すモニター、各席ではスライムたちがポチポチとなにかを操作している。
その様子は可愛く見えてしまう。
白を基調としたブリッジ、モニターと各種計器、それに操作用のメカメカしいコンソール。
何もかもが男の子の琴線を刺激しまくる。
「ぐふっ……イカスじゃねーか!!」
ガウが鼻血を垂らしながら熱心に周囲を調べて回っている。
マシューたちも楽しそうにガウについて回っている。
「ローザ、大丈夫?」
「全然平気よ」
「ローザ様はこちらに」
艦長席の隣に何やら仰々しい、むしろソッチのほうが立派な椅子が用意されている。
「あら、いいわねここ……このまま寝ちゃえそう……」
「いざという場合は医務室まで直行できます!
母体に負担をかけないように設計しております!」
「おお、コウメイよくやった!」
「マスターにお褒め頂き恐縮です」
艦長席も悪くない。
「ガウ様はこちらに、マシュー様ネイサン様の席はこちらです」
「おお、いいなこれ、なんだこれ、いじっていいのか?」
「戦闘の際はこちらでこのようにゴニョゴニョ……」
「まじかよ!? たまんねーな!!」
「マシュー様とネイサン様もこういう場合はこんな感じでゴニョゴニョ……」
「よーし任せといてよ!!」
「僕も頑張るー!!」
「さぁマスター、号令を」
「うん、それじゃあテティス……出航!」
ゴウン……ああ、機械の起動音ってどうしてこんなに胸が踊るんだろう。
細かな振動を感じながら、モニターに映る映像が動き始める。
「実際は海底の映像はこんなに明るくは見えませんが、魔法技術で鮮明に映し出せます」
「綺麗だね……」
「海上から当艦は視認できないように魔道具による認識阻害がかけられています。
船舶からは発見されることはまずありません。
魔力探知等にもよほどのことがなければ引っかかりませんから、快適な海の旅をお約束します。
海水より酸素と水素を取り出し空気を合成し、多くのエネルギーを産生します。
海中の生物を捕獲し食料へと加工したりもすべて自動で行うことも出来ます。
連続航行可能時間は4380万時間以上、艦首の主砲、副砲、魚雷、海上攻撃砲など豊富な武装も備えています。
サイズとしてはコンパクトですが、当時の古代文明の粋を集めた潜水艇がテティスです」
「おお……」
コウメイの説明に自然と全員が拍手してしまう。
少なくとも、ずっと海底で暮らすことも可能だということはわかった。
今の所人間は5人だが、コウメイによると大人数で内部で生活が出来るようになっているそうだから、いずれは自分たちのクルーで固めて世界を海から守ってみたり……
夢が広がる。
「さて、どこへ向かいますか?」
「そう言えば決めていなかったな……」
「なぁ、カゲテル。
宛がないなら東のチョウキンに行かないか?」
「チョウキン?」
「ああ、国の殆どが森に囲まれた森林国家と言われていて、最大の特徴は……
その森林にある無数のダンジョンだ。
未発見のものも多いし、冒険者に人気の国だ」
「いいね、グルメと酒は?」
「ダンジョンからの豊富な宝を求めて交易が盛んで、首都であるヴェデルザークの巨大港では世界中の食事と酒が取引されてるぜ」
「決まりだな。コウメイ、進路をヴェデルザークへ」
「かしこまりました。テティス、進路をヴェデルザークへと向けます」
「カゲテル、上に船出して普通の船旅っぽく出来るらしいからそれで行こうぜ、釣り勝負だ釣り!」
「釣りって停泊しないと出来ないよね?」
「急ぐ旅でなければそういう物も良いのではないでしょうか?」
「……そうだね、じゃあ、船舶モードに移行しよう」
テティスの一部を海上に出して、普通の船舶での航行のように見せる。
小型艇で海上を追従する方法も取れるので、港とかに入るなら小型艇のほうが良い。
さすがにテティスが停泊できるほどの巨大な港はめったに無い。
のんびりとした海の旅が、始まった。




