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第97話 神に挑みし者

 神像の一撃は大量の魔法障壁を力技でぶち破ってくる。

 天使像は神像への補助を行い、こちらに妨害を仕掛けてくる。

 普通のパーティなら、非常に厄介で苦戦する相手なのは間違いない。

 しかし、こちらには万の兵がいる。

 補助を打ち消し妨害し、相手の妨害はすぐに解除して支援をしてくれる。

 神像の一撃が大量の障壁を破壊しても、それを遥かに凌駕する量の障壁が即座に貼り直される。

 相手の障壁を次々と無効化していく。

 すべての魔術演算能力が、文字通り桁違いだ。

 俺とガウの身体的能力も、動く石像たちに劣らないのであれば、結果は明らかだ。


「でかいから時間がかかったな」


「いくら天使を倒しても復活されるのにもっと早く気がつけばよかった……」


「良質な鉱石と魔術回路、魔石も大量に使われてますね……クフフフィフフフ……」


 なんか変な笑い方を覚えたな……

 神像たちを倒し、最奥の扉を開けると、見たこともないような巨大なダンジョンコアが浮かんでいた。


「……マスター」


「だめだ約束したんだ。そこの宝だけで我慢してくれ」


「はー、これだけ巨大な物は初めて見たな……

 ユキムラんとこで見たのとは……色が違うような……?」


「ガウ、好きそうな剣があるよ」


「おっ!? どれどれ見してみろ、おお! いいなこれ!

 コウメイ、わかるかこの外連味! 

 外連味だけで中身が無いのは困るが、人間カッコつけねぇとな!」


「わかりました、この意匠を反映させます」


「頼んだぜ!」


 ガウの格好がどんどん傾奇者みたいになっていくわけだが、突っ込むだけ野暮だろ……

 俺は理解は出来るが、一見地味に見えるけど分かる人が見るとわかる、って作りが好きだ。

 あえてつや消しをしたり、機能美も最高だな。

 

「じゃあ、行こうぜ」


「まだまだ頑張ってくれよ、ダンジョンさん」


 俺は最深部に別れを告げてダンジョン入り口へ転送ジャンプする。


「コウメイ、あの転送は作り出せるのか?」


「決められた場所同士を繋げるのなら出来ますが、巨大な装置がないと消費するエネルギーと移動距離の天秤が合いませんね。使いづらいです。

 マスターなら走ったほうが遥かにマシです」


「なるほど……」


 確かに普通の人からしたら瞬間移動のような移動は可能だし……

 隔絶された2空間を移動できるのは凄いんだが、凄いだけに巨大な設備か馬鹿みたいなエネルギーを使うってことなんだろう。


「いやー! 久しぶりの娑婆の空気はウメェな!」


「なんだよそれ……」


「き、君たち、生きていたのか!?」


 山を降りようとダンジョンから出ると、衛兵に止められた。

 一月近くダンジョンから帰ってこないので、死亡者扱いになりかけていたのをギルドマスターであるカネッサが止めてくれていた。その代わり戻ってきたらすぐに連絡するように通達されていたらしい。

 結局ギルド職員と新聖教の兵士に連れられて冒険者ギルド内の応接室に呼び出しをされた。

 トウエンからローザ、マシュー、ネイサンも合流する。


「体調は大丈夫?」


「ちょっと気持ち悪いときもあるけど、スライムちゃんたちが色々と気を使ってくれているから大丈夫」


「ふたりともローザをありがとうな」


「何いってんだよにーちゃん、当たり前だろ」


「にーちゃん、修行も勉強もがんばったよ!」


「よし、ガキども後で俺が相手してやる!」


「よしネイサン! ガウをぼっこぼこにしようぜ!」


「うん!」


 みんなが元気そうで良かった。

 ローザは少しつわりが出ているようだが、スライムの適切な介助によって穏やかに過ごせているようだ。感謝しかない。


「おかえりなのだカゲテル、最奥まで行ったのかい?」


 なんだか複雑な表情の神官っぽい人と一緒に満面の笑顔のカネッサが部屋に入ってくる。


「約束通り、閉じませんでしたよ」


「なっ……ほ、本当に!?」


 神官の人が鳩が豆鉄砲を食ったような顔で俺とガウの顔を見比べている。


「だから言ったじゃないか……彼らを僕たちの尺度で測っちゃだめだよ。

 ユキムラたち最上の英雄たちと同等に見ないと」


「こ、この若さで……」


「カゲテル君。今混乱しているこの国のために、そして僕を助けると思って物資の一部をギルドにおろしてくれないかい?」


「構いませんよ」


「勝手を言うと、教会は寄付を求めている。

 僕が個人的に補填するから、めんどくさいだろうけどお願いできるかな?」


 俺は、こういう歯に衣着せないカネッサの物言いが嫌いじゃない。

 慈善事業も偽善行為の一種になる。


「補填はいりませんよ、というか、無理だと思いますよ」


 俺は適当な物資を応接間の一角に展開する。

 上層で得られるような物は、下層を終えた俺たちには価値はない。

 ほとんど全部あげちゃうことにする。

 豪華で広々とした応接間が、あっという間に手狭になるほどうず高く積まれた物資。

 

「アハハハハハ、たしかにコレは僕がどうこう出来る話じゃないや!

 いやー、すごいねカゲテル君、男子三日会わざれば刮目して見よ。

 まさに君が体現している!」


 神官のおっさんは目をパチクリさせてあわあわと声も出せずにいる。

 カネッサさんがすぐに職員を呼んで物資の仕分けと運搬を始めてくれた。


「せめてお礼に食事くらいは奢ろう。

 君たちのダンジョン制覇は発表するわけに行かないが、祝うぐらいはバチが当たらないだろ!」


「それじゃあ遠慮せずに」


「よっしゃ、喰うぜ!!」


 

 冒険者に大人気、安くて旨くて量が多い、そういうお店って、最高です!



タイトル詐欺

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