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第92話 突然の終了

「うわああああああっ!!! って、あれ?

 ついてる?」


「おかえり、さぁ次々!」


 ぞわっ……とにかく全力で防御だ!!

 目の前に切断された俺の腕が浮いた。


 ずんっ……


 胸が……熱い……

 

 胸から剣が……伸びている……


「ぐはぁっ!! って……またか!

 そう何度も!!」


 全力全開、気配を探り、対応する……

 来るっ、って瞬間だけは少しだけ感じた。

 そのまま、真っ二つになった……


「はーい……3回。今日はここまで」


「……っぶはーーーっ!!!!

 はぁはぁはぁ……」


 なんだコレ、何だこれ、なんだコレ……

 確実に、俺は、3回死んだ。


「なんで……ついてるの……」


 ローザも自分の頭を触りながら呆然としている。


「……ユキムラ! 呼吸するように殺しやがって!

 くそっ!! 何度やっても慣れねぇ……」


「ガウは少し抵抗できたじゃない、ちゃんと意味あるんだよ?」


「だ、だからって、なんの躊躇もなく、俺たちを殺すんですか?」


「うーん、修行だからね。手を抜いたら意味ないじゃん」


 瞳を見つめてゾッとした。

 一文一句、それ以上でもそれ以下でもないと考えている。

 修行だから、殺すことは、当然であり、なにか考えることではない。

 そう、心の底から思っている。

 ユキムラさん、いや、ユキムラという人間は、そういう人間なんだ。


「怖い人ですね……」


 ローザが怯えた目でユキムラを見つめている。


「最終的には、私に一矢を報いてもらうよ。

 それまでは、たくさん殺されるけど、それも鍛錬になってるから。

 上位の悪魔や☆▲*%&なんかを相手にするためには、絶対に必要だ」


「え?」


「でも、今日は終わり!!

 あとは基礎をさらってゆっくりおやすみなさい!

 明日からも頑張ろー!」


「いま、なんて?」


「じゃ、戻るよ。

 これからしばらくは3度の試練以外は指導しないから、個人で頑張って。

 そのかわり、あのダンジョンより強力な魔物が出る部屋を自由に使ってね。

 あの扉に入れば行けるから」


 当たり前のように、空間に扉が立っている。

 俺とスライムの世界なんだけどね……


「早いとこ一矢を報いて卒業しようね」


「……はい」


 頷くしか無い、俺は、ユキムラより、圧倒的に弱いことは事実だ。

 せめて、せめて簡単には殺されないようにする!


 俺は特訓用の大剣に交換して素振りを開始する。

 そんな俺の姿を見て、ガウもローザもそれぞれの鍛錬を開始するのであった。

 その姿を見て、満足そうにユキムラは外に出ていった。



 それから毎日……


 日に3度。


 俺たちは、殺され続けた。



「ぐっ……」


「はい、お疲れ様だ。また明日ね」


「お疲れさまでした」


 何度味わっても、死というものは、慣れるものではない。

 過去と今が凝縮するような……

 完全な無を前にした魂の根源からの恐怖のような……


「……ん? 完全な無とか……輪廻の輪とか聞いたことが……」


「マスター、ヴェルガーが話していた内容と符合します」


「……もう言わないけど、言わないけど……!」


「ほんと、もうあんな無茶すんなよ」


「はい、反省しています……」


 あの瞬間、一瞬一瞬がものすごく長く感じられて、ヴェルガーの動きにも対応できた……

 それがユキムラ相手にも出来たら……


「どうせ死ぬ世界なら……」


 ちょっとしたきっかけを見つけたような気がしたけど、しばらくは普通に殺され続けた。


 死の直前のイメージ……

 強力な魔物と戦い、必死になっているときの集中の、さらにその上……

 俺は、自然と座禅を組んだりする時間が長くなった。


「精が出るわねカゲテル」


「うーん、なんかつながってるような、掴めそうな、そんな感じがするんだよなぁ……」


「私はだめね、未だによくわからない……」


 ブルッと肩を震わせる。

 俺は優しく手をかけ抱き寄せる。


「あの瞬間、正確にはほんの少し前の刹那に、過去をすべて体験しているような、押し寄せる時間の波、あれと、その、命を燃やしていた時間が似ていたような気がするんだ。

 そして、あの永遠の時間の中を動ければ、ユキムラにも届く剣が振れる気がするんだ」


「ふふっ、やっぱりカゲテルも男の子なんだね、いつの間にかユキムラさんじゃなくてユキムラって……あの二人も、あんなに強い人を前に、臆するんじゃなくて、乗り越えようとするのね」


 ローザが少し悲しそうな顔をする。

 俺は本当に酷いことをしたんだなと改めて感じてしまう……


「どんなことがあっても、絶対に帰ってくるよ」


「うん、約束よ」


「そうだね、ローザさんはカゲテル君の帰る場所になってほしい」


「うわっ!?」「ひゃあ!!」


 いつのまにかユキムラが背後に立っていた。


「いやぁごめんごめん、声かけにくくて」 


「ほんとに気配が無いんだから……」


「えっと、その、ユキムラさん帰る場所っていうのは……?」


「ああ、まだ気がついてないと思うけど、ローザさんはもう訓練はなしです」


「な、なんでですか!? 私が役立たずだからですか!?」


「落ち着いて落ち着いて、もう君だけの身体じゃないんだから」


「え?」


「え?」


「君の体の変化は妊娠兆候の可能性が高い。

 だから訓練は中止、安静にする。オーケー?」


「え、え、え? なんで、分かるんですか?」


「ローザ……か、身体とかは異常は!?」


「気配と言うか、そういうのでわかっちゃうんだよ。

 ごめんね」


「は、はぁ……え、ほんとに?」


「本当に。しばらくは安静に過ごすんだよ。

 そして、子供と一緒にカゲテル君の帰る場所になってもらえれば、きっとカゲテル君は前よりも強くなるよ」


「ローザ……」


「カゲテル……」


「あ、カゲテル君はやるよー、早く準備してね」


「ユキムラって……本当になんというか……」


 その日の夜は盛大にお祝いになった。

 


 俺は3回サクッと死んだ。

 

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[一言] >>子供と一緒にカゲテル君の買える場所 闇が深ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!1w
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