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第91話 帰宅

「おかえりー」


「なっ……?」


 扉を開いたらユキムラさんが笑顔で出迎えていた。


「あれ?」


「半年はかからなかったね、まぁまぁかなぁ……」


「おかえりにーちゃん」


「おかえりーねーちゃん」


「た、ただいま……」


「これは俺も知らないパターンだ」


「とにかく、久しぶりにゆっくりお風呂入ってきたら?」


「そ、そうよ!! お風呂ー!!」


「……ガウ、行こうか」


「ああ……」


 とにかく、疲れ切った体を、ゆっくり休めたい。

 細かいことを考えるのが、めんどくさかった。


 久しぶりに、命の危機に気を張らずにゆったりと湯船に浸かると……


「おい、死ぬぞ!」


 ガウに起こされた。

 

「気持ちは死ぬほどわかるが、こんなとこで死んだら洒落にならねーぞ」


「あ、ありがとう……ございます……」


「だから寝るなって、もうあがれって……最初はガキだったが、男の体になったな」


「そういえばあのダンジョンで成人してしまった……」


「ああ、たぶんそれは大丈夫だ、この空間に入ったら外と時間がずれる。

 たぶん外ではまだ数日しかたってない」


「え、それじゃあ歳を人よりもとっちゃうじゃないですか!」


「んー、よくわからんが、成長するが、老化はしないとか……

 ユキムラに聞いてもごまかされんだよな……」


「はぁ……何者なんですかねユキムラさん……」


「わからん……よく考えれば、俺が子供の頃から、何も変わっていないような……?」


「まぁ、あの人に関しては真面目に考えてもわかんないですよね、教えてもくれないし」


「だな、さぁ、上がろうぜ」


「はーい」


 ああ、周囲に気を張らずにゆったりとお風呂に入れる幸せ……

 

「ああ……幸せだった……」


 ローザも同じこと言っている。

 風呂上がりにはごちそうが待っていた。

 ダンジョンでもそれなりのものを食べていたけど、匂いで魔物を呼ばないように魔法を張ったりそれでも気を抜けなかったり結局早く食べられるものが中心になった。

 ゆったりと食事を楽しむ時間は何物にも変えられない……


「にーちゃん、ねーちゃん……食べるの早くなったな」


「すごーい」


「……しまった、ついつい早食いしてしまった……美味しかったのに……」


「身についてしまったのね……」


 そう、せっかくゆったりと楽しめたはずの食事、ここ数ヶ月の日々の影響で、早食いをして終えてしまった……


「冒険者の性だなこれは」


「ユキムラさんそんなに早食いじゃないよー」


「あの人は特別。参考にしてはいけませんよマシュー、ネイサン」


「ひどいなぁ……普通だよ私は」


「さて、その普通のユキムラさん、なんなんですかあのダンジョンは、正確にはなんで俺ら戻ってきたんですか?」


「修行用のインスタントダンジョンだからだよ」


「まさかユキムラ様はダンジョンが作れるとでもおっしゃるのか!?」


 コウメイが食いついた。


「世界には、こんなダンジョンクリエイターなんて物もあるのさ」


 ダンジョンコアによく似た物がくるくると台座に乗って回転している。

 魔道具のようだ。


「おっと、コウメイ君、これの解析はお断わりしようか」


 一瞬でしまわれてしまった。


「だめだよ」

 

 パチンと指を鳴らすと、コウメイがプルンと震えた。


「殺生な……」


「自分で手に入れて確かめてね、頑張ればいけるいけるー!」


 あっ、これ絶対にいけないやつだ……


「まぁいいや、あのダンジョンクリアできればある程度この世界のダンジョンは問題ないよ。

 ちゃんと基礎も根付いてくれたみたいだし、あとは実戦経験だね」


「その、いまさらですけど、なんでそこまでしてくれるんですか?」


「うーん、質問には答えないけど、君の運命値がこの世界に全体に与える影響が大きすぎるから、すこし肩入れしているんだよ。はい、この話はおしまーい」


 ……何もわからない。

 でも、これ以上は一切答えてくれないことはわかった。


「後半は、まるで勝てない相手からどう生き残るか、から始めよう」


 ガチガチガチガチガチガチガチ


「ど、どうしたんだよガウ」


 ガウの歯が鳴り出して体が震えだした。

 俺の中の警鐘が高らかに鳴り響いている。


「う、受けたくないんですけど……」


「大丈夫、死んでも、死なないから」


 とぷん。

 突然足元に何かが広がり、飲み込まれた。

 なんの気配もなかった。

 常時気配には気を張っている。

 本当に、予兆もなく、落ちた。


「さて、食後の軽い運動と行こうか……」


 ふわり……


 見渡す限り広がる草原、空の色はなんとも禍々しい……


「はい、構えて。行くよ?」


「!?」


 明確な殺気、反射的に装備を身に着け、飛び退いた……


 と、思ったのにな……

 グラリと視界が歪み、血を吹き出す自分の身体を見上げることになった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 読み終わっちゃった・・・何これ面白い!!! 一番好きだったのは魔神(?)あいてにきちんと礼を取って対応した所、ああいうの大事だと思うんだけど意地張ってなかなかそう言う対応出来る主人公って居な…
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