表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/205

第87話 辛辣

 目が覚めると、聖都の宿だった。


 パアァン


 気持ちのいい乾いた音。

 それが俺の頬が叩かれた音だって気がつくのは頬が痛みだしてからだ。

 それから、ローザとマシュー、ネイサンが俺に抱きついて泣きじゃくった。

 馬鹿、酷い、馬鹿……良かった……本当に……

 悪口の語彙が少ないローザがとても可愛く見えた。


「どうだい? 体の違和感はあるかい?」


「いえ、以前より……調子が良いような……」


 そこには、ユキムラさんが立っていた。

 

「よ! 久しぶりだな!」


「ガウさん!!」


 そして、体つきは少し大きくなってるけど、ガウさんが居た。


「ど、どうしてお二人が……

 そ、それより、た、助けていただいてありがとうございます!!」


「いやー、君の成長は早いねぇ……

 あのレベルとはもう少し先だと思ったんだけど」


「あ、あのヴェルマーって悪魔は……」


「ああ、倒したよ。魔核は君のスライムに渡したよ」


「いただきました。マスター……お守りできず……申し訳ございません」


「いやいや、皆のおかげで少し時間が稼げてローザを逃せた」


「次やったら離婚するから」


「はい! 決して離れません」


「ははは、そうだね、男なら好きな子は最後まで守らないと」


「カゲテル、いつの間にあんなかわいい奥さんを……ぐぬぬ、おめでとう!!」


「ガウさんありがとうございます。

 急に居なくなったのでびっくりしましたよ」


「ああ、コイツを探してな、直ぐに旅に出たんだが……」


「色々あって今は一緒に旅をしています。

 さてと、色々と説明しないといけませんね」


 それから、俺とローザ、ユキムラさんにガウさんと食事を取りながら話すことになる。


「まずはSクラス昇進と結婚おめでとう」


「あ、ありがとうございます」


「この短い間に爵位持ちの悪魔2体、それに1柱と出会うとはねぇ……

 運命ってのは強いねぇ」


「そ、そのユキムラさん」


「なんだい?」


「ヴェルマーを倒したんですよね……どうやったんですか?」


「剣で刺して、えいっって」


「いやいやいや、その刺すのも命がけだったし、簡単に剣溶かされたし……」


「まぁ、一応長くSクラスやってるし。

 自分より強いものなんて、結構いるもんだよ」


「そうだぞカゲテル、コイツは糞みたいに強すぎて、ついていくのがどんだけ大変か……」


「確かに、そうですね……」


「マスター……弱くて……すみません……」


「いやあ、そのスライム君達はかなり強いよ。

 正直、使い方が駄目だよ。

 それにカゲテル君」


「はい」


「君が弱すぎる」


「ぐっ……」


「な、嫌なやつだろ、平気でズケズケと……!」


「力とか体力とかは有るみたいだけど、使い方が駄目だ。

 逆に言えばそこを鍛えればまだまだ強くなる。

 なにより、スライムとのつながりは、君が誰よりも早く強くなれる可能性の塊なんだよ。

 普通に人間は魔石を喰って強くなるなんて出来ないからね。

 今回も爵位持ち魔人の魔核を取り込んで飛躍的に強くなってる。

 これは私にだって真似ができない、カゲテル君だけの特技だ」


「そうだね、いつもありがとうコウメイ」


「マスター……」


「あと君は、うかつだね。

 明らかに勝てない相手に下調べもなく挑んで今回みたいになるのは調子に乗ってたね」


「返す言葉もありません……」


「正面から戦って相手の本気を引き出したのも下策だね。

 スライムっていうゲリラ戦にピッタリの魔物を従えて、ナイツ?

 正面からって……良さを消してどうするのさ。

 戦いは相手の実力を引き出させないで、こちらの土俵に乗せるのが大事なのに。

 それに魔法の使い方が雑。

 もっと丁寧に相手の嫌がること、こちらの意図するように誘導する形で、ここぞって時に使うんだよ。

 あと装備だってもっとなんとか出来たでしょ?

 スライム達がいればお金を出せばミスリルだってアダマンタイトだって手に入るし。

 なにより未発見の鉱脈とかもっとじっくり探したって良いわけだし。

 君の力はスライムが鍵なんだから、バラバラにして戦うより、今回はやりすぎだけど手元に置いて使うのが一番だよ。

 まぁ、でも、基本としての君の実力が力任せで甘すぎるから、まずはそこを鍛えようね。

 だって君、ローザ君にも勝てないでしょ?」


「ぐはっ!!」


「ユキムラ、言い過ぎだ……結構心に来るんだぞお前の物言いは……」


「ああ、ごめんごめん」


「い、いえ、全て事実ですから……」


「とにかく、私にとってもカゲテル君が弱いままだと困る「ユキムラ」強くなってほしいと思っているから、鍛えてあげるよ」


「……え?」


「コウメイ君だっけ? 異界を持ってるよね?」


「トウエンですか?」


「そうそう、これ、取り込んで、あそこの時間軸をいじってくれるかな?」


 ユキムラさんが何かをコウメイに渡し、コウメイがそれを取り込む。


「こ、これは……!?」


「さて、カゲテル君、ローザさん、コウメイ君とスライム達。

 このユキムラとガウが君たちを鍛え直してあげよう!」


 次の瞬間、トウエンへの扉が開く。


「え、なんでユキムラさんが操作を?」


「細かいことは良いじゃないか、マシュー君、ネイサン君、君たちはどうする?

 これからも蚊帳の外で生きていくか、力を手に入れるか?」


「俺も行く!」


「ぼ、僕も行きます!!」


「よし、いい子たちだ!」


 ユキムラさんは二人を肩に乗せて入り口を越えていく。

 俺たちもそれに従ってトウエンに入っていく。


 よく考えずに、ついていくから、俺はうかつだと言われる。


 その事に気がつくのに、長い時間は必要なかった……


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ