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第79話 帝国の謎

「まだ悩んでるの?」


「ああ、ローザか」


 そう、俺は悩んでいた。

 遺跡の視察を終えてから、古代の兵器であり、この世界において圧倒的な戦力となってしまうテティスをどうすればいいのか……


「スライムちゃん達だってすごい力じゃない」


「うーん、なんというか、スライム達はコウメイを始め血が通っているというか、仲間って感じで、うまくいえないけど、酷いこととか悪いことはさせたくないって感じなんだけど……

 兵器を持つってなると、なんだか心の置き場がわからなくなってしまって……」


「カゲテルが言ったじゃない。

 宗教が悪いんじゃない、扱う人間が悪くなれば悪いものになるんだって……

 魔物と戦う武器だって、人を守るための物になるか……

 山賊が持って人を襲うための物になるか……

 カゲテルが、人のために扱えば、兵器だって人を守るものになると思うよ?」


 ズガーンと頭を殴られた。


 何度も偉そうに他人には語っておきながら、いざ自分のことになると何の覚悟もしていなかった……


「ちょ、ちょっとどうしたの?」


「ローザと一緒にいられて、良かったよ」


「カゲテル……ちょ、なんか触り方がいやらしい……」


「いや、その、いい匂いだなぁって……」


「もう……ちょっとだけだよ……」


「ローザ……」






 ふぅ。


 悩んでいても仕方がない。

 人を守るために、自分の偽善のために、しっかりと運用してやんよ!

 とにかく安全第一に試験航海を終えてほしい。コウメイやスライム達にお任せだ。


「よし、やらなきゃいかんことはまだまだ有るぜ!」


 混乱した聖国の各地を巡って、スラム的な場所の改善、各地の交通網の整理などを勝手に行っていく。国に任せるにしても、まずは中枢をしっかりと治めてほしい。

 地方にその施政が行き届くには時間がかかるが、今現在眼の前に有る問題は確実に存在する。

 それを、ある程度解決しておいてあげよう。


「コウメイ、ローザさん、マシューにネイサン世直しに参りますよ!」


「へい、マスター!」


「なんなのその口調は……」


「がってんだ!」「てーへんだてーへんだ!」


 東の国の書物に世直し冒険譚があって、それに少しかぶれてしまった。


 聖国の地方都市を行脚し、生活環境の整備や教育基盤、自ら生きていく力の育成を各地で進めていく。

 やはり地方の目の届かないところにはまだ腐敗した仕組みも存在しており、そういう輩はチクチク中央へと情報提供する。

 手が回りきらないところはこちらで内々に処理しておく。

 そういう奴らには容赦せずに精神を操作して、本来の神に使える人間の無欲で模範的な行動を一生してもらうことにする。それでも、犠牲になった人間の心は晴れることはない……

 精神的なフォローもしつつできる限り皆が幸せに暮らせるように、手伝いをして回っている。


「ここがケイロンの東の端か!」


 目の前には、荒れた海が広がっている。

 ケイロンは北部から東部が海に囲まれているが、東の海は年中荒れており、航海するのは無謀な死の海と呼ばれている。調べてみると海底が非常に複雑な地形をしており、海流が渦巻くように荒れる仕組みになっていた。

 

「ここを抜けられれば東の諸国との海路ができるんだけど……

 流石に海流を変えるのは影響が計り知れない……」


 海底を均してしまえば、今よりは海は落ち着くだろうけど……

 想像以上の影響を世界中に起こしてしまっては困る。

 山を削るよりも慎重になる。


「あとは南部の帝国との壁か……」


 帝国は国境沿いに巨大な壁を作っている。

 半島の根本を抑えており、陸路での貿易によって大きな利益を得ている。

 その豊富な経済力で軍事大国の一面もあり、王国、聖国は暗黙の了解で帝国を抑えている。

 以前の聖国は隙あらば王国を飲み込みたがっていたが、現状王国も聖国も不安定な状況になっているので、帝国に一番目を凝らさなければいけないんだけど……


「この壁、魔法によって情報遮断されてるんだよねぇ……」


 スライムを帝国内に放っても、うまく情報伝達が出来ない。

 一応精鋭の忍びスライムは帝国内で情報収集をしているけど、うまく情報を拾えない。

 このシステムが存在しているので、俺自身もあまり派手にそこら中にスライムをばらまけばいいというわけではない。

 情報遮断されて各個撃破、俺のスライム達がやられる可能性はこれが一番高いと考えている。

 帝国では、今までのようにスライムをばらまいて国中の情報を把握しながらの安全な旅は期待できない……


「解析等をして、公になった時にリスクが大きすぎます。

 国家間の戦争の引き金になったり、マスターが帝国から追われることになってしまいます」


 謎が多い帝国を敵には回したくない。

 王国や聖国をめちゃくちゃにしておいて今更だけど……

 ローザやマシュー、ネイサンら家族を先の見えない危険の中に放り込むことだけは避けたい。

 

「できる限り日陰者でいながら、偽善活動に勤しむ所存です」


「なんだかなーな表明だね」


「とりあえず、西の国境の町まで行って、聖都へ向かって、聖山グロンデのダンジョンに正式な手続きで挑戦しよう」


 次は、最上級ダンジョン探検だ。



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