第72話 朝食会議
「でかーい!!」
スライムが各部位を解体して、魔石を見せてくれた。
見上げるほどの魔石なんて始めてみた。
「勝手に喰ったら怒られるよね……」
「問題は無いと思いますが、報告してからのほうが揉めることが無いと思います」
「そうだね。後始末が終わったらギルドへ報告しようか」
地形を大規模に変化させてしまったので、元の状態に戻す。
流石に戦いの影響で草原は復旧させられなかった。
でも以前よりも開けた真っ平らな土地に変わったので、使いやすくなったんじゃないかな?
土をほじくり返しているから農業をやるにも良さそうだ……
島喰いの血液成分も多少は含まれているから、ほんとに農地にしたくなってきた……
「ミタ様!! ご無事ですか!?」
「カゲテルー、大丈夫だった?」
しばらくするとギルドから冒険者達と街の衛兵の混成軍が駆けつけてきた。
解体作業はほとんど終えて、立派な甲羅が残っているけど、中身は空っぽだ。
「すみません早朝からお騒がせしました」
「いやいや、こ、これは島喰いですよね……倒せる……んですね……」
「街に向かって来ていたので、相談無くこちらで倒しました、申し訳ない」
「いやいやいや、多分我々は街の崩壊を助けて頂いたんでしょうが、あまりのことに、頭がついてきておりません……」
「凄い大きさですよね、我ながらよくやりました」
「Sクラスは……我々の常識では測れないことは知っているのですが……」
「素材とかはどうすればいいですか?」
「ミタ様がお一人で倒されたのですから……基本的に全てミタ様の物となります……
できれば一部ギルドや市場に出していただけると助かります。
もちろん適正な価格で買い取ります。
しかし、このサイズの甲羅は……加工できるんだろうか……」
「ああ、それなら注文してください、そのサイズ、形態で納品しますよ」
「本当ですか!?」
「ま、待ってください。街の方でも買わせていただきたい!」
「大丈夫でしょ、これだけありますから。
一旦しまっちゃいますね」
スライムが巨大な甲羅を包み込み、収納、する。
あの巨大な質量が跡形もなく消え去ることに、その場に居た全員が驚いていた。
「ま、帰りましょうか。運動しておなか空いたので、詳しい話は朝食でも食べながら」
「は、はい……そうしましょう」
朝早くからやっているギルドの人おすすめの食堂で街の運営に関わる話をしていいのか悩んだけど……
ふっかふかで香ばしいパンが出てきて全部どうでもよくなった。
「うわ! めっちゃ美味しい!!」
「どうやったらこんなに柔らかくなるんですか?」
「おいしー!」
「こ、これは……すごい」
店主が自慢げに語ってくれたので、コウメイがあのパンを出してくれる日も近いな。
「この店は安くて旨くて大変人気があるので、我々もよく使っています」
お偉いさんにも人気の店なのか、ちょっと安心した。
「とりあえず、事の顛末から伺ってもいいですか?」
「はい、早朝、日の出前ですが、島喰いが沖から街へ向かってきていることに気が付きまして、このままでは港が壊滅しかねないと判断し、私の従魔であるスライムの協力の下、島喰いを陸地に移動させ、退治しました」
「どうやって接近に気がついたんですか?」
「私の天職である魔獣使い、スライムを通して敵の気配を察知できます。
今周辺の海を調査していたのでそこで気がつけたんです」
「はぁ、やはり天職というのは凄いのですね」
困ったときの天職頼みである。
それから戦闘の中身の話や回収してある素材の話に移っていく。
比較的輸入路があるからましな方だけど、ここも穀物不足は深刻で、食料確保は大事らしい。
ただ、あまりに大量の肉が出回ると、物価のバランスが壊れかねない。
「それでしたら肉類もこちらで保存しておくので、必要な時に必要な分をお売りする形にしましょうか」
「ありがたい……のですが、カゲテル様はこちらに長期滞在を?」
「いざとなればスライムを置いておくので、言えば出せるようにしますよ」
「なんと……スライムに……失礼ですが知恵があったのですね」
「ははは、私のスライムは特別なので」
「やはりSクラス冒険者は我々の想像もつきませんな!」
「島喰いとの戦い、想像力が追いつきませんでしたよ!」
こんな感じで和やかに会談は終わり解散となった……
問題は店を出た時に起こった。
「ギルマス、町長様、教会から今回の件で話を聞きたいと……」
「ああ、わかっている」
「カゲテル様、もしよろしければご一緒していただけませんか?」
「ええ、構いませんよ」
「カゲテル様、どうか、その、お気を悪くなさらないでくださいね」
「はぁ……頼むから余計なことを言わないと良いんですが……」
なにやらお偉いさん達の顔色が良くない。
すこし、嫌な予感がする……




