第65話 地面暖房
「ふぅ……コウメイ、俺が悪かった、やってくれ」
『はい、マスター』
朝起きると昨日一生懸命やった雪かきの痕跡も綺麗に消えて降り注ぐ雪雪雪……
少し、いや、だいぶうんざりしてしまった。
少し距離は有るが、活火山が存在する。
地下には当然マグマが有る。
マグマは、熱エネルギーの塊だ。
それを利用しない手はない。
コウメイの研究によって、保温パイプはかなりの能力になった。
いまでは温泉もアツアツで届けられる。
それを利用して、さらに熱効率の良い地熱暖房システムを村に導入する覚悟ができた。
村の地下にパイプを配置し、それをマグマ近郊までつなぐ。
内部にはスライムの体液(以下オイル)で満たしておく。
マグマの側では熱伝導率の高い容器に満たされたオイルは熱せられ対流によって上方へと流れを作る。
そして村の地下で熱を発しながら冷やされていく。
冷やされたオイルは対流の力で再びマグマの近郊へと流れていく、そして再び熱せられる。
熱エネルギーを利用してパイプ内の循環、加熱全てを自然の力で行う。
もちろん、普通なら設置に凄まじい人数と労力を払わなければいけないが、そこはスライム。
地下での作業だろうが、超高熱環境の作業だろうが、パイプの精製、設置、全て考えられない速度で行うことが出来る。
「夏場は村の外を回るパイプへと切り替えられるようにすれば水車などの運動エネルギーに変換すればいい、こりゃ自分で領地を治めることになったら絶対火山のそばにしよっと」
工事はあっという間、それでも3日ほどかかったが、終わる。
結果はすぐに現れる。
「よし、成功だな」
朝目が覚めると、村の中に雪一つ残っていなかった。
地面がほのかに温かい、村に張り巡らされた排水路には雪解け水が勢いよく流れていっている。
流石に村全体が温かくまではなっていないが、極寒の寒さから寒いから涼しいの間くらいに落ち着いている。
農地と果樹園は季節が有ることで成り立つ可能性を考慮していじっていない。
「カゲテル様!! これは何が!?」
シェビエルさんが大慌てでやってきた。
パイプの管理の仕方などを説明して、今後の管理をお願いしておいた。
「こんな村、いや、街だって聖都だってどこにもありませんよ!!」
「これ上手くやれば冬場も農業できるよね」
『室内での水耕栽培も考えてみましょう』
温室による農業もこの村を支える一つの特色になる日も遠くなかった。
「毎日目まぐるしすぎて、私はおかしくなりそうです」
「まぁ、こっちは実験させてもらっているようなものなので、今後は自由に使ってください」
万能スライム汁は様々な用途に使用できるし、非常に耐久性に富んでいる。
防水から防温、耐衝撃、耐火、などなど様々な効能を付与できる。
砂地と混ぜれば乾けば非常に軽く強固な形態になったりと、可能性は無限大だ。
サラサラからネットリまで調整可能で、なんと、ほぼ無限に出せます。
「鉄の食器の表面にコーティングすれば焦げ付き知らず!
ああ、お鍋を火にかけっぱなしでまっ黒焦げ!
そんなときでもスライムコーティングは心配ご無用、さぁ、ローザさん、こちらのタオルで優しく真っ黒に焦げた鍋底を拭ってください」
「こういう焦げ付き、ついついやっちゃって鍋を駄目にしちゃうの。
こんな布で簡単に……取れたわ! 信じられない!
鍋には焦げ付き一つついていないわ!!」
周囲を囲む主婦から喝采が上がる。
「更にこちらのフライパンに卵を割って、ほーら回すように振ってみると……」
「卵がまるで氷の上を滑っているようだわ!!」
「これなら料理の下手な旦那さんでも一品ぐらいは手伝えるって話です!」
「うちの亭主に料理なんかさせたら、逆に仕事が増えるわ!」
ドッと笑いに包まれるのであった……
「便利すぎて逆にない時はどうしていたのか忘れてしまいそうだよ……」
『モルタルや漆喰などを利用していました』
「そうなんだけど、あまりにも差が……」
『速乾性タイプなら雨が降ってても丸一日も有れば』
現在はスライムの内部で作成したものを吐き出しながら溶接というか一体化させて建築物を作っている。スライムがぐるぐる回りながら上昇していくと建物ができたりしているんだから、もう、恐ろしいレベルだよ。
極寒の地で出来る限り快適に生きるために、様々な実験を兼ねて思考し、そして施行した。
「やっぱり実際にやってみないとわからないよね」
「おかげでお部屋ポカポカ……外に出たくなくなっちゃう……」
「ねーちゃん太ったんじゃない?」
「……マシュー……」
「ひっ……!」
一瞬でマシューの背後に回り込むローザの動きに一寸の衰えも見えなかった……
極寒の長い冬が過ぎ、気温がゆっくりと上がり始める。
「今年の冬は長かったけど、全く辛くなかった……全てカゲテル様のおかげです」
「いやいや、こっちもいろんなデータが取れました。
ところで村の皆さんには最後のじっけ、試練が待っています。
この村の防衛設備をきちっと使いこなす訓練はたくさんこなしてきましたね」
「はい」
「では、実践と行きましょう」
「シェビエル様大変です!! 魔物の群れが村に向かってきています!!」
「長い冬、飢えに耐えられなくなった魔物の襲来です。
みんなの力で撃退しますよ!
私は一般的な兵士くらいのお手伝いしかしません。
村の人達で撃退しましょう!」
すでに把握していたけど、俺が居なくなった後もきちんと村が存続していくためには……
村の人達によってこの地を守ってもらわなければいけない。
「さぁ、最後の仕上げです!」
村防衛ミッション。
開始です!




