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第61話 牧師

 現在、王国より聖国へと入り、街道をゆっくりと北上。

 聖都へと向かう最短ルートは取らずに、そのまま北上していく。

 目的地は北の港町。

 肌寒くなり、これからは魚が美味しい季節。

 そして、聖国の北部の港町では非常に酒精の強いお酒づくりが盛んだ。

 冬場の極寒の地ではそれを飲んで身体を暖めるという……

 そんな事を聞いてしまったら……行くしか無いでしょう!


「さて、監視の人も起きたみたいだし。そろそろ出発しようか」


「はーい」


 簡単に朝食を終えて馬車を走らせる。

 聖都へ向かう街道に比べると轍によって作られた荒い道になるが、俺達の馬車には関係ない。

 草原を走り、森を抜け、丘を越えて旅路は続いていく。

 森の果実を取り、獲物を狩り、魔物を倒す。

 

「ああ、冒険者の旅だな……」


「ちょっと楽すぎるけど」


「過酷で忙しすぎるのはちょっとしばらくは遠慮したい」


「私も、のんびり一緒に過ごせるから、今のほうが良いな」


「ローザ……」


「にーちゃんもねーちゃんもお盛んだな」「新婚だから仕方ないんだよ」


「ふたりともどこからそんな言葉を……」


「ほんとに……」


 まぁ、でも、こんな綺麗で可愛い……彼女を通り越して生涯の伴侶が出来てしまったら、若い身体は……ねぇ?

 ローザのきれいな手を握り、指の間に指を入れて引き寄せる。


「ちょ、ちょっとカゲテル、真っ昼間から何を考えてるの……?」


「なんだろうねー?」


「はいよ、あんちゃん変わるよ」


「いってらっしゃい~」


「マシュー、ネイサンなにをって……か、カゲテル……ばかっ……!」


 するっとトウエンへの扉を開けてローザを連れ込むのであった。


 若い身体、のどかな旅、愛し合う男女。

 こうなってしまうのは仕方がないことなんだ。

 思春期の男なんて、猿だよ猿。


「マスター、街道脇で賊徒に襲われている馬車が居ます」


「おいおい、聖国だろここ、王国でも見なかったぞ……助けるぞ」


「わかりました」


 俺たちも急ぐが、すでにスライム部隊が賊達を無力化させた。一瞬だ。


「大丈夫ですか?」


「あ、あの、スライムが……」


 護衛の中で一番身なりの良い人物に話しかけた。


「私が魔物使いなんで、私の従魔ですよ」


「あ、ありがとうございます……」


 すでに襲われていた人たちの治療も開始している。

 数名犠牲が出てしまったけど……


「賊はどうしますか?」


「……殺してやりたいですが……街へ連行するのが正しい行いなんでしょう」


「ご遺体はどうされますか? もし、運ぶのであればお手伝い出来ますよ」


「すみません……家族の元へ連れてってあげたいので、お願いできますか?」


「わかりました。形としてスライムが収納しますので驚かないでくださいね」


 それから遺体を布で包み、スライムが包み込み収納する。

 トウエンとは違う、遺体が傷まないように工夫した場所を作ってくれた。


「皆さんはどちらまで?」


「我々はここから北へ行った小さな村フォストへ向かうところでした」


 馬車から身なりの良い男性が降りてきた。

 どうやら護衛の雇い主といったところか?


「助けて頂きありがとうございました。

 私シェビエル=ナバーロと申します」


「私はカゲテル=ミタ……旅をしている冒険者です」


「これだけの賊を一瞬で倒す従魔を持つ冒険者、しかもスライム……王国のスライムマスター……」


「お恥ずかしい」


「な!? で、では、子爵様!!

 た、大変失礼いたしました!!

 わ、私はケイロンで牧師をやっております……!」


「いやいやいや、子爵なんて名前だけですから!

 普通でいいです普通で!」


 ううむ、これは今後考えないと……

 堅っ苦しい振る舞いなんてめんどくさい……


「お、お忍びの旅、そ、そう新婚旅行をのんびりと楽しみたいので、内密にお願いします!」


「そ、そうでしたか……

 わ、わかりました」


 盗賊たちは眠らせてトウエンに急遽作った牢屋にしまっておく。

 生きている物をしまえることに驚かれたけど、スライムの隠されたパワーと天職で乗り切った。

 こうしてシェビエルさんと一緒にフォストという村へ向かうことになった。

 シェビエさんは牧師であると同時に村長みたいな立場で、街との交易の品を運んでいる途中で襲われた。


「聖国って治安が悪いんですか……?」


「恥ずかしながら、地方まで神の教えが浸透しておりません……

 我らの力の無さを悔いるばかりです」


「聖国に出る魔物は、穀物を好むので、食糧事情が安定しないんです」


「他国に出す特産品もなく……」


 なんか、みんなポツポツとこの国の問題点を話し始めた。

 結構たまってるんだろうなぁ……


「あの、良いんですけど、他国の人間に教えて大丈夫なんですか?」


「……今の状態のケイロンをどうこうしても旨味が無いってことが知られるだけかなと」


「確かに話を聞いていると……、せめて魔物は倒せないんですか?

 その、教会的な組織が……」


「魔物は弱いんだが、数が……それと、地面に潜るんだよ」


 俺は、直ぐに考えついた。

 この問題を解決できる方法を、俺は持っている。

 しかし、俺の一存で……国を変えて良いのだろうか……

 でも、大量のエネルギー源、しかも人助けだ……


 勝手にやっちゃえばばれないかな?


 俺の頭には悪い考えが浮かんでいた。

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― 新着の感想 ―
[一言] ん?子爵じゃなかたっけ?どっかで昇爵してたっけ?
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