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第50話 ギルドの秘密

「Sクラスのもう一つの使命は、この世界の根幹を揺るがすような事象への対応だ」


 俺がSクラスになることが決まって、いろんな話を聞かされた。


「実際には悪魔は珍しくない。

 アイツラは強かで賢い、小さな事件と思われていた裏で悪魔が糸を引いていたなんてことは珍しくもない。

 雑兵の悪魔が力をつけるために人間を喰らう。

 強い悪魔が遊びとしてこちらに来る。

 理由は様々だが、放っておけば世界が大変なことになる。

 あるレベルを超えたSクラスの人間は、こういった事件に当たることになる。

 世界は広い。

 少しでも多くのSクラス冒険者を生み出すことこそが、冒険者ギルドの真の目的だ」


 悪魔と戦える人間の育成、それがギルドの裏の顔。

 そして、悪魔と戦える人外の力を手に入れたものはSクラスと呼ばれる……

 知らなかった……


「ま、とりあえず……Sクラスは言うこと全然聞かねーから、それぞれできることやって、王都の悪魔は早いもの勝ちってことで!」


 なんというか、適当だった。

 強力な悪魔退治は、苦労の割に得られるものが少ないから、結構面倒臭がられるみたいで、村とか街とか守って報酬を得るほうが楽でいい。

 悪魔の相手なんて面白くもないから、超難易度のダンジョン攻略のほうが燃える。

 修行中で手が離せない。

 別件の悪魔退治が終わらない。

 いろいろな理由でSクラス冒険者の足並みは全然揃わなかった。

 急がなくても、確実な戦力が来てからで良いんじゃないか?

 今は外にも強力な悪魔が出始めているし、街を守ることに集中する。

 そんな人も少なくなかった。

 そのとおりだと思う。

 だけど俺は、スライムに強い悪魔を食わせたい!


「と、言うことで、俺達は積極的に王都へ向かいます!」


「ナイトたちもこの間のSクラスの皆さんと戦った情報を元に、技を鍛えさせております。

 皆様の訓練と合わせて、頑張って強くなっていきます!」


「コウメイちゃん頑張って!」


「流石にマシューとネイサンはこの街で留守番していてくれ」


「しゃーねーな。足手まといにはなりたくないし」


「スライムちゃんもいるから、寂しくないよ!」


「ごめんね、マシュー、ネイサン」


「ねーちゃんも無事に帰ってこいよ」


「早く帰ってきてね」


「うん!」


 いい子たちだ。


「ジンゲン、ケイジさんは俺らと一緒にとにかくスライムナイトたちと戦いまくってSクラスを目指していきましょう!」


「……うっぷ……い、今その話を思い出させんでくれんか……食後なんで」


「は、吐く……」


「駄目ですよ、あの食事も特製なんですから!」


「わ、わかっとる……」


「あの癖にも慣れたが、その、量がもう少し少ないと、助かるんだけど……」


「頑張りましょう!」「頑張ろう!」「頑張ってくださいね皆!」「頑張れよ!」「がんばれ~」


「「はぁ~~」」


 俺もローザもだが、ジンゲンとケイジは毎日猛特訓だ。

 コウメイもナイツ達もこの間の戦いの経験を生かして実践に落とし込むために実戦形式の訓練を積み重ねている。

 中央大陸の山脈地帯にスライムを送り込み、鉱脈やらをむしゃむしゃしつつ地形改善も行っている。それらを元に装備の刷新も進めている。

 いずれは王国の東西が平地に作られた街道で結ばれる。

 山を飲み込むことでもエネルギーに変えられるスライムが凄い。

 クイーンスライム達魔法使い軍団はメラーノさんに指摘されたことが余程悔しかったのか、魔法のコントロールの練習に明け暮れている。

 数に頼った絨毯爆撃のような魔法攻撃から、ピンポイント狙撃のような攻撃まで可能にして、戦術の幅を持たせたいとコウメイも張り切っている。


「俺も、全員よりも強くなければかっこ悪いからな」


 全力の全スライム相手に圧倒できなければ、スライムマスターなんておこがましい!

 手も足も出なかったヴェルグさん相手のような戦いは、もうしない!


「身体の力の動きを徹底的に理解しましょう。

 そして全ての力の動きを理解すれば、あの人らのような芸当ができるようになります」


 ラーケンさんの絶対防御も同様だ。

 全ての力の方向と大きさに、全く同じ力と逆の方向性を一瞬加えて力を相殺する。

 ありとあらゆる方向からの同時に見える攻撃の一つ一つにそれをやりきった。 

 それがあのラーケンさんの防御の正体だった。

 盾を斬りつけた瞬間、張り付いたように動かなくなったあの感覚……

 連撃の合間に使われたら、大きな隙が出来ることは間違いない。

 スライムの攻撃は単純すぎた、もっと虚実を入り混じった、本物の技を身につける必要がある。

 世界中に広げた目から、数多くの技を収集し、コウメイが分析し、皆に共有する。

 そして、俺たちもその実験台として叩き込まれる。


 修業の日々は、その繰り返しだ。


「聖国、帝国の冒険者が入るのが明後日。

 つまり、自由にできるのは明日まで……

 準備はいいか?」


 キングとクイーンの体がぷるんと震える。


「やれるだけ、やるさ」


「今までの常識がひっくり返るほど努力はした!」


「私も!」


「俺も、この努力を全力でぶつけよう!」


 そして、とうとう王都への侵攻を開始する。

 人間4名、スライム25万の軍勢を作り上げた。

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