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第46話 リストランテ

 知らない食材がたくさんある。

 つまり、知らないもので作られた酒がたくさんあるということだ!


 流石は交易の中心地、そもそも街がでかい。

 コイタルの倍はあるだろう。

 この街の国籍はない。

 中立都市という位置づけだ。

 3国からの代表者によって構成される評議員と呼ばれる集団によって統治されている。

 この街での評議員は結構な権力を持つので、帝国では上級貴族、王国だと王族関係の人がつくことが多い。聖国は司教レベルの人が交代で務める。


「それとそれと、それもください」


「まいどあり! いっぱい買ってくれたからおまけしとくよ!」


「ありがとうございます」


「カゲテル、なかなかの掘り出し物があったぞ!」


 スライムシャツで皆の収納は共有される。

 各々が好きな買い物を行っている。

 俺とケイジは食材と酒、ジンゲンは武具や日常品、ローザは服飾関係を見て回っている。

 この市場の一角を見て回るだけで数日はかかるぐらい巨大だ。

 人の往来も非常に多い、はぐれたり迷子になっても、スライムに聞けば宿へ戻れるので安心だ。

 そんなこんなで、3日ほどは連日買い物に勤しんだ。


「ラシエル様、お連れの方々もどうぞ……」


「お、お邪魔します……」


「何だカゲテル、腰が引けてるぞ」


「いや、だってこんな高級そうなとこ……」


 旨い酒が飲みたいと話していたら、なぜか一緒にいるラシエルさんがお店に連れて行ってくれた。

 高級店街でも抜群のロケーションにあるバリバリの高級店だった。

 襟付きのシャツぐらいは着てくるように言われたので、少し想像していたけど。

 本物のお店に少し気後れする。

 マシューとネイサンには宿へ食事をはこんでくれるサービスまであった。

 先に二人にご飯を食べさせて寝かせてから、大人たちで(まだ成人まで2年あるが……)訪れた。


「だ、大丈夫かな……変じゃない?」


 ローザが耳打ちをしてくる。

 緊張するよね、わかります。

 ジンゲンやケイジは堂々としている。

 ま、ケイジは元領主様だからな……

 ローザは涼し気な水色のワンピースを身に着けており、変どころではない、なんというか、俺と同い年とは思えないほどのスタイルの良さ……それに輝く髪と肌、すれ違う男性も、何より女性たちがその美しさを羨んでいる。


「なんていうか、お姫様みたいだよ」


「なっ……///」


「天然ジゴロだな」


「ローザは苦労するな」


 お店の二階、一番奥の個室。

 入るとすぐに理解する。

 VIPルームだ。

 窓の外には街の夜景が広がり、心奪われるほどの美しさだ。

 室内の雰囲気も全て、計算され尽くした芸術品のような美しさがある。


「素敵……」


「すごいな……」


 緊張よりも感動が勝ってしまった。


「さ、かけてくれ」


 ラシエルさんも、真っ白なシャツにビシッと整えた髪。

 普段の冒険者として雄々しさもかっこいいが、出来る貴族のようなその姿もかっこいい。


「ラシエルさん、今日はありがとうございます」


「いや、俺も世話になってるからな、今日は楽しんでくれ」


 席について一息つくと、いつの間にか給仕がテーブルに前菜を並べていた。

 それと同時に食前酒が注がれる。


「まずはコースに合わせた酒を味わってもらって、その後ゆっくり好きなものを楽しんでくれ」


 乾杯をしてグラスに注がれた美しい液体を口に運ぶ……


「刺激のある発泡酒、爽やかな果実の香りと炭酸の刺激が小気味いい。

 乾いた喉を潤すさっぱりとした味わい、前菜は複数の海産物を煮出して海藻から出るぬめりで冷やして固めた、いわゆる煮こごり。海の味わいが詰まって非常に美味しい。

 食前酒と合わせることで、空腹に優しく収まり、これから始まるコースを受け入れる状態を作ってくれる……」


「いつも思うが、カゲテル君は食事と酒の時は饒舌だな。

 人が変わったようだ」


「ついつい口に出てしまうのです。

 いやいや、これは美味しい……」


「確かに素晴らしいな」


「こんなに美味しいもの初めて食べました」


「カゲテル君は料理の仕方もひと口でわかるのか?

 珍しい料理だと思うのだが」


「あー、なんとなくそういう方法を知っているんです。

 食事と酒は私の旅の目的ですから、勉強はかかしません」


「はは、そんなに真剣に言われると、冗談には聞こえないが、やっぱり変わっているな」


「ラシエルさんはどうして冒険者になったんですか?」


「俺は、もともと小さな村で生まれてな、天職で槍使いなんて物があるってわかって、兵士になるか冒険者になるか考えて、面白そうな冒険者になった。

 おかげで師匠にも会えたし、後悔は全く無い」


「師匠というと千本槍のヴァルスロット氏ですな」


「ああ」


「たった一人でエンシェントドラゴンを倒したSクラス冒険者」


「化けもんだよ、あの人は。 

 その修業もな……」


「ラシエルさんの毎日の鍛錬もかなり異常かと……」


「あの10倍、いや、100倍はきつかったんだぜ?」


「げ……」


 一回一緒に日々の日課に付き合ったけど、その100倍とか人間の限界を超えている。


「そして、師匠はそれを毎日やっている。

 俺はアレをやったらもう一日動けなくなる……

 Sクラスも上の方は人外だ」


「以前の私達からすればラシエル殿も人外に見えたが……」


「安心しな、もうあんたらは全員その人外の仲間だ。

 特にカゲテルとローザは上の方につきあえるかもな」


「私もですか?」


「……」


 全員が気がついていないのか……って目でローザを見る。

 コウメイが作った魔力を矢に変えて放つ弓を使いだしたローザは、移動する砲台みたいな感じになった。スライムを通して俺の魔力を使用できるので、実質無限みたいなものだ。

 面での乱射や点での大砲。

 機関銃でスナイパーが攻撃してきて、その精度で大砲を打ち込んでくる。

 簡単に説明すると、そんな存在になっている。



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― 新着の感想 ―
[一言] 弾切れのない砲台ですね。
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